無限の魔人 第八話 〜メドーサと龍美〜
「んん・・・・」
瞼を徐々に開けていくと朝の光が射し込んできた。
「起きたか、おはよう龍美」
段々と眩しさに慣れ、私を覗き込んでいる界人が目に入った。
「ああ」
私が返事をすると彼は苦笑した。何か間違えただろうか?
上半身を起こし界人をじっと見た。
「龍美、朝の挨拶は[おはよう]だ」
「解った、おはよう界人」
「ん」
満足したように微笑み私の頭を撫でて来た。
夢で感じたような温もりが私の中を駆け巡る。
界人が撫でるのを止めた時、少し物足りないような気がしたが出来たばかりの体を思い、両手を開閉してみた。
にぎ にぎ
「どんな感じだ? どこか違和感があったら言えよ」
違和感だらけだった。
初めて体を動かすのだからそれも当たり前なのだが。
「問題無いようだ」
慣れない内はそんなものだろうと納得している自分が居る。
それよりも早く体をもっと動かしたいと思う。
「なら良かった。それよりも、お前の服をどうしようか」
はっと気づく、私は簡易ベッドの上で白いシーツの中にいた。勿論裸で、見下ろすと私の胸が丸見えになっている。
「キャアアアアアアア」
叫びながらシーツを手繰り寄せ、胸元を必死に隠した。
顔が熱くなるのを感じる、体も火照ってくる。
「キャアーってお前・・・・いや、これも普通の反応と言えばそうだが」
「ううぅ」
体の火照りが収まらない。
これはきっと小竜姫様の影響だ。
そう思う事にした。
「何を騒いでいるんだい」
その時第三者の声がした。
「おはようメドーサ、良い朝だな」
倉庫の入り口にはメドーサが立っていた。
「何が良い朝だ、それよりあんた・・・女連れこんだのかい?」
「ち、違う!私は龍美だ!!」
何故か力一杯否定してしまった。
それが事実なのだが。
「へぇ・・・・元に戻った?・・いや、違うね。作ったが正しいのか・・何より気配が昨晩と・・」
メドーサはぶつぶつ呟きながら私をじっと見ている。
「それよりメドーサ、何か着る物は無いか? 龍美はまだ服を持ってないんだ」
私はシーツを体に巻きつけながらベッドから降り立ち上がった。
「それに腹も空いた。味覚も試してみたい」
まだ顔は熱かったが、意識せぬように淡々と語った。
視覚、聴覚、臭覚、そして触覚に痛覚は確認している。
「仕方ない、貸してやるよ。こっちへ来な」
私は倉庫の奥へ進むメドーサの後を、ベッドに腰掛けたままの界人を置いて付いて行った。
倉庫の奥にはロッカーが置いてあった。
メドーサはロッカーを開けて中から服を2〜3着取り出し、私に投げてきた。
「ほら、好きなのを着な。下着はそっちのタンスにあるから適当にね」
「すまない」
そう言ったらメドーサが驚いたように私を見つめてきた。
何か変だったろうか?
「あんた・・・元は小竜姫の竜気のくせに魔族に礼を言うなんてね」
「それは余り関係が無いな、私は私だ」
俺は俺。
界人の言葉が気に入っているようで、自分でも驚いた。
「ふん!私は先に行くからね」
メドーサを中々良い奴だと思った自分が、少し可笑しかった。
たった一日で色々な経験をしている・・・消えなくて良かったと今なら心から言える。
「あんた」
メドーサだけが奥から戻って来た。
どうやら龍美は1人で着替えているようだ。
「俺は界人、昨日そう名乗っただろう?」
「・・・界人、あの子は唯の竜気だったんじゃないのかい?」
やっぱり気になるか・・・メドーサも龍美も、気になることはとことん追求するタイプみたいだ、似たもの同士・・か。
「体は俺が作った。中々良いだろ?」
「ああ、女の私でも見惚れちまったからね・・・・・やっぱり作ったか」
それが一体なんなんだ?
「何か気になるのか?」
「あんたの事よ。超加速は避けるは、体を作っちまうは、おまけに時を止められた魔人と来た。怪しいったらありゃしない、疑問に思わない奴なんて居ないだろうさ。」
そりゃそうだろうな
「なるほど・・・かなり的確な表現だと思ったけど、解り難かったか」
「いいや、寧ろ簡単に推測出来る、例えば・・・あんたと横島の坊やの事から、あんたは未来からの時間移動者。さらに言えば、私や小竜姫なんかじゃ相手にならないほどの実力者だ。それに見た目以上に老齢だ」
やはりメドーサは面白い。
「老齢は酷いな、まだ800と18年だぞ」
「人間にすれば妖怪爺さ、まぁ、神魔族にすれば若輩者も良い所だけどね」
へぇ、神魔族じゃ800歳は若いのか。
そういえばピートも700歳で高校生やってたしな・・・。
俺もまだまだ大丈夫だな・・・うん。
「年なんか俺は気にしないけどな、老けないし」
ちょっとだけ強がってみた。
本当は周りが死んでいくのはかなり・・・。
「ほぅ、界人はそれほど生きていたのか」
龍美の声が倉庫の奥から聞こえてきた。
「ああ、別に隠す事でもないしな」
龍美の姿が目に入った。青いジーパンに白い薄手の肩と胸元が大きく開いているトレーナーを着ている。
メドーサのだから胸元が少し緩いみたいだな。
屈めばかなり胸が見える事になる。
俺が周りに注意を払っとけば平気だろう。
「どうだ? これが一番楽な格好だったのだが・・・」
竜美は不安そうな目でこっちを見てくる。
凄い勢いで精神が成長してるみたいだ。
バンダナの知識だけの時とは既に別人になりつつある。
「ああ、よく似合ってるよ。」
龍美の顔が段々と笑顔になっていく。
メドーサに礼を言わないといけないな、寝床に服に。
借りが二つも出来た。
「メドーサありがとな、この借りは必ず返すよ」
「っ!べ、別に良いよ!」
また顔が赤くなってる・・・やっぱり風邪をひいてるんだろうか。
近づいて額に手を当てる。
「どれどれ・・・「な!界人何をしているのだ!」ん?」
振り返ると龍美が少し怖い顔をしている・・・何か不味い事でもしたのか?
「いや、メドーサの顔が赤いから熱が無いかどうか調べようと」
「い、いつまで触ってるんだいっ!」
バシッ
手を払われてしまったが、別に風邪ではない様で安心した。
「風邪じゃないみたいだな」
「「当たり前だ!」」
息がピッタリ合っている。
いつのまに仲良くなったのか・・・。
「まぁ、着替えも終わった事だし朝飯でも喰いに行こう。勿論メドーサもな」
龍美とメドーサの腕を引っ張って倉庫の外へ歩き出す。
「な、誰が一緒にな「まぁ良いから良いから、お礼だよ、お・れ・い」
隣を見ると龍美が楽しそうに微笑んでいた。
俺も嬉しくなって笑い返した。
無限の魔人 第八話 〜メドーサと龍美〜
end
<存在力について>
[存在力]は万物が持つ[在る]だけで使われる力、似た様なのに[気]があるが、あれとは性質が違う。
[気]は鍛えれば誰にでも扱え、誰もが大きく出来る。
だが[存在力]は違う。生まれた時に、存在が[始まった]時にその総量は決まる。それは一生変わる事が無く、[気]以上に気づき難い。誰もが死ぬまで意識せずに使っている、それが[存在力]
存在力は常に一定量が消費されている。
存在力は完全に空になると存在が世界から「消える」それは誰の記憶にも残らず、記録にも残らない。
存在が「消えた」者の空白には修正力が働き、何事も無かったかのように何時の間にか空白が埋まる。
普通は死んでも存在力の残滓は残るので「消える」事など無い。
あとがき
あとがきとレス返し書かずに送信してしまいました。
初修正中。
体の出来た龍美とメドーサの相手をする界人君、2人の視点でお送りしました。
今回はあまり言う事は無いんですが、唯1つだけ。
「メドーサはまだ落ちちゃ居ない!?」
レス返し 今回も感想ありがとーです
>紫竜さん
龍美の活躍は楽しみですねー。私も書きがいがありますよ。
ラプラスの能力はそういう意味で最強だったんですね。このまま行っても大丈夫そうです。
>siriusさん
存在力・・・説明せねばなりますまい。あ・・・↑に書いときます。
>法師陰陽師さん
>存在力ですか・・・『灼眼のシャナ』という小説にも似たようなのがありましたね。
なっ!?・・・すでに特許持ってる方が居ましたか(言い得て妙?w
残念・・は!するとこの作品はGS+灼眼のシャナの話になるのですか!?(どっちでもいいですが
灼眼のシャナ・・・今度読んでみます。
>藍さん
自力で考えたものではありますが、既出の考えとは・・・ぁ・・。
まぁ、気にしては駄目です(既に常套句
>九尾さん(レス神さまー)
>界人の女おとしの旅〜。
そんな事を狙ってる訳じゃないんですが、結果そうなるんですかね!?
そのうち月神族も?(まだ香港すら終わってないのにー