美神令子 怒りの爆発炎上!
横島は夜の除霊から事務所へ帰ってパソコンで業務書類を作っていた。
最近は
「書類仕事も覚えないと一人前にはなれないわよ横島クン。」
もっともに聞こえる理由でこんな事までやらされている。
今晩いやもう朝か眠いはずの横島が気合いの入った様子で仕事をやっている。
唐巣神父あたりがみれば
「彼もついに改心したんだね。うんうん時の流れは偉大だよ。」
などとコメントを漏らすだろう。
もちろんそんな事は無い。
ネットでエッチなサイトを見ているのか?
美神はそんなに甘く無い。事務所のパソコンからアダルトサイトへ繋ぐのは不可能だ。
どうやっているのか分からないが横島がどうがんばってもダメだった。
では一体何をしているのか。
横島は自分の「美神盗撮コレクション」を”美神の”事務所のパソコンで編集していたのだ。
(トンデモネー奴だ)
今まで撮った美神盗撮写真のネガを”美神の”事務所のフィルムスキャナーで取り込み。
最近入手した新兵器デジカメ(暗がりにも強く現像に出さなくていい分安くなる)で撮った美神盗撮画像を”美神の”事務所のパソコンで編集し”美神の”プリンターを使って
「横島の横島による邪な写真集」
を作っていたのだ。(本当にトンデモネー奴!)
過去に撮った全ての写真と全ての画像データを使った豪華邪写真集が完成しようとした頃。
美神が悪寒を感じて眼を覚ました。
宿敵である日本国税局が査察に来るのか?
これまで美神のカンが外れた事は無い。
独り身の女がコツコツ(?)と矯めた
(巨額の)資産をしっかり(がっちり?)守ってきた。
彼女は自らのカンに従い寝室から事務所への階段を駆け降りる。
パソコンに入った最新の帳簿データを改ざんする為に。
今回も美神のカンは外れなかった。
ちょっとズレていたが。
おかげで横島は大きな犠牲を被った。
編集の為に全ての美神盗撮コレクションを持って来たのが災いした。
当分の間は単なる覗きしか出来ない。(普通のカメラは売ってデジカメの足しにした)
横島は自分の流した血涙で血まみれになって床に倒れていた。
美神は彼を殺すどころか指一本触れなかった。
もっと効果的な方法を取ったのだ。
性少年が己の欲望を果たす為に膨大な時間と貴重な予算をかけて造り上げた盗撮コレクションと新兵器をその残虐な手によって葬りさったのである。
数日後
いまだ心のキズが癒えない横島は自分の部屋でため息をついていた。
部屋の中には遮光製のビニールに入ったプリント用紙の束がある。写真画質用のプリンター用紙らしい。
さすがに事務所のモノを使うのは気が引けたか、それとも備品のチェックに引っ掛かるのを恐れたか。
事務所で大量に使ったのに、まだ結構ある。
2班制になり勤務時間が増えたり食費が余り掛からなくなった分、結構な金額を使って新兵器デジカメと事務所で使っているプリンターに合わせた高価な専用用紙を入手したのだ。
横島班の書類仕事はタマモが担当になった。(シロには無理と美神が判断)
印刷用紙だけあってもしょうがない。
横島はそう思ってため息をついたのだ。高い金払って買ったのに。
だがそうだろうか?
念写
横島の脳裏にそんな言葉が浮かぶ。
さすが横島である。学校では使わない脳ミソをこんな時には働かせる。
普通の念写はカメラに入れた状態のフィルムに行う。
これをプリンターの写真画質用紙で行おうというのだ。
ヒントは用紙を入れているビニール。これは遮光になっており注意書きにも
「日当たり良い場所や高温の場所には保管しないで下さい。」
と書いてある。
一枚取り出してジッと睨む。
凄まじい集中力と霊力で美神の裸身を思い描く。
なかなかうまくいかない。
あたりまえだ。
これでうまくいくならフィルムでなく印画紙に念写できる事になる。
ましてプリンター用紙はプリンターの方が印刷する。用紙が何かするワケではない。(たぶん)
写真用と書いてあってもその方がきれいに印刷できるだけだ。
化学反応のフィルムとはワケが違う出来るワケがない。
そんな事は彼は知らない。知った事ではないのだ。
そしてオカルトの世界では思い込みというのは不可能を可能にする。
並の霊能者では不可能だろうが彼は妄想の達人だ。煩悩の巨人でもある。そして煩悩は彼の霊力の源。
横島の念写は煩悩を満たす為に記憶を元に妄想を使っている。
幾日かするとコツを掴んでしまった。
普通に妄想を思い浮かべると美神にポーズをとらせて動かしたり喋らせたりするがそれが失敗の原因だった。
写真の様に固定された映像だけを思い浮かべるのだ。
理屈になってない理屈を屁理屈というがそれが通ってしまえば理屈になる。
オカルト業界の常識である。
不可能が可能に。(凄いぞ煩悩超人)
この「人間妄想念写機」の力を使えば現在のパソコン使ったアイコラなど敵では無い。
妄想力しだいでいかなる表情、ポーズ、服装も思いのまま。
彼は自らの煩悩に導かれるまま念写を行う。
横島は念写を終えるとナゼか下半身ハダカになって傍らにテッシュの箱を積み上げる。
その頃。
美神は悪寒というか、おぞましさに襲われてかつてない危機感に震えていた。
誰かが自分を呪っているのか?
この感覚は通常の呪いとはナニかが違う。
エミの呪法攻撃にもこんな危機感は感じた事が無い。
事務所は人工幽霊1号の結界があり自分の仕掛けたお札もある。
ここは美神の城だ。
誰がどうやって?
考えている間もおぞましさと危機感はどんどん強くなる。
彼女は自らのカンに頼る事にした。
彼女のカンは外れた事が無い。
間違い無いここだ!
横島の部屋の前で彼女のカンが叫ぶ。
カンに従ってドアを蹴り破る。
そこで美神が見たモノは・・・。
下半身丸出しで股間を屹立させて寝っ転がる彼女の丁稚。
扇情的な表情を浮かべ男を挑発する様なポーズをしている、ハダカや下着姿の自分の姿!
それらが無数の紙に。
印刷された紙からは邪な霊波が漂ってくる。
間違い無くこれは悪霊の仕業だ。
そうだ。
そうに違い無い。
そうに決まってる。
アタシがそう決めた!
凍りついた横島を気絶させそのまま部屋を出る。
すぐさまオカルトGメンに電話すると、
「横島クンが上級魔族なみの強力な悪霊に捕り憑かれたの。アパートと周辺の住人を助ける為に協力してね。」
と西条をアゴで使い。
続けて石油会社に電話して
「タンクローリーの出前一丁!ガソリン満タンで!代金は1億!」
と札束で顔を張り倒す様な注文をした。
しばらくすると西条が警官隊を引き連れてやって来た。
美神は血走った眼で西条に”お願い”してアパートと周辺の住人を避難させた。
やがて到着したタンクローリーからホースをのばして消火作業の様にアパートにありったけのガソリンをかけると、
「悪霊退散!くたばれ外道!」
と叫んで大出力の霊波を放射した。横島の部屋に向かって。
アパートは爆発炎上した。
周辺の被害も甚大。
アパートと周辺の土地建物、住人の家財道具等の被害を合計すると100億円を超える金額だったが美神はニコニコ笑いながら即金で賠償金を支払った。
呆然として事態を見ていた西条や関係者には
「悪霊の除霊に必要とはいえ大変ご迷惑をかけました。」
とニッコリ笑いかけて関係者一同を引きつった顔で頷かせた。
何も知らなかった事務所のメンバーがあわてて現場に到着すると
「ただの悪霊退治よ。」
と嬉しそうに微笑む美神が恐くて何も聞けなかった。
横島は消防庁の現場検証中に発見された。
せっかく身につけた人間妄想念写機だが美神の”除霊”によって失ってしまった。
現場検証に立ち会っていた西条に頭から背広をかけられパトカーへ付き添われて歩く”フルチンの”横島は変態行為で逮捕された犯罪者以外の何者でもなかった。
小鳩一家は美神の支払った賠償金で「焼け太り」になり当分の間、金の心配が無くなった。
焼け出されたアパートの替わりに不動産屋に紹介されたのは「幸福荘」という名のアパートだった。
実は小鳩家の一員である「貧乏神」の名前が原因で他に入れてくれる所が無かったから。
貧乏神というのは名前で今の属性は「幸運の神」幸福荘にいくのはむしろ当然か。
横島は学校に置いたままの教科書等勉強道具を除けば何もかも失ってしまった。
カードや通帳の再発行には急いでも10日は必要で 親からの仕送りを引き出す事ができず。
とうとう美神に泣きついてしばらくの間タウンボックスで生活した。(条件はイカ臭くしない事)
不動産業界では横島の名前が美神と同じくブラックリストに載った。
美神の事務所でバイトして悪霊に取り憑かれたいうウソ説明が致命的だった。
(原作コミック7巻カモナ・マイ・ヘルハウス!!参照)
切羽詰まってあちこちの不動産屋を廻り。
「じゃあここの大家さんに相談してみて。」
と幸福荘を紹介され横島もそこの住人となった。
考えた末に壊れで再掲載する事にしました。
私なりに原作のテイストを守っているつもりなので。
この話気にいってるんです。