―――出会ってから数日後

「ライラさんっ!あそこにおっきなお魚っ……!」

「はいはい……私が取りますよ……」

河原でアルが泳いでいる魚を見つけると、ライラがザブンと水の中に飛び込む……。

「……ふぅ…、もっと大きな魚がいたわよ……?」

ライラさんはアルくらいの魚を一匹抱えて水から上がってくる。

「さすがに目の良い僕でも、こんなにキラキラ輝く水の中の魚まで分からないよぉ……」

アルは反論するかのように、プイッと顔を逸らして頬を膨らませる。
出会ってから、森の木の実を探したり、川を泳いでみたり…このように魚を捕まえたりと、二人は次第に心を開いていった……。

「アル、拗ねてないで火を炊くから薪を集めてきてっ!早くしないと昼食が遅くなるわよ?」

「はぁい……」

アルは面倒くさそうに素早い足であっという間に森の中へと消えていく。

「アルは私のことどう思っているのかしら……」

ライラはふと、物思いに耽る……。
アルはまだ子供だが、いつかは大人になるだろうし、獣人に比べ長寿な自分は全然歳を取らず不思議に思うことだろう……。
それに、アルがもし自分が『水龍』だと知ってしまった時、どんな反応をするのだろうか……?

「ライラさん、枝集めてきたよ?ぼーっとしてどうしたの?」

「え?あ……うん、何でもないわ。アルは火を起こして?」

突然足元から話しかけられ、悩みから覚醒する。今考えてもしょうがない。
見つかってしまった場合、『龍族の掟』に従わなければならないのだから……。

「うわっ…!あつっ!」

「あらあら……、火傷して…バカねぇ……」

「えへへ……」

アルは火を起こそうとして火傷をした指を舐めながら苦笑いする。ライラもつられてクスッと笑ってしまう。
このまま……この幸せな日々が続けばいいと思っていたのに、すぐに崩されてしまうとは二人には思いもよらないことだった……。

「ガサッ……」

「……だれっ!?」

逃げるためにいつでも研ぎ澄まされたアルの耳は、すぐ近くで少し揺れた茂みの音をも捉える。

「アル、どうしたの……?」

「……誰かが僕達を見てる……」

「あらら……見つかったよ兄貴?」

「お前が茂みを揺らすのが悪いんだろ、このバカっ!」

そこから現れたのは、二人の黒い狼の獣人。ライラよりは小さいものの当然、アルなど一呑みにできるような成人だ。
しかも、刃物を持っているところからすると、アルを狙っていることが分かる。

「アルっ!早く遠くに隠れてっ!!」

「え、でも……」

「早くっ!!」

アルは二人もいる相手にライラが大丈夫なのか、心配だがライラは行けと叫ぶ。
アルは涙を目にためて走り出した……!

 

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