「美味たる主を喰わぬのは惜しいからの・・喰わしてもらうぞ。」
再び開かれる九尾の口。口内の奥に続く暗闇・・喉。
粘液で溢れていた肉壁は嫌らしくてかっていた。
口端からは未だに唾液が滴り、毛を濡らしていた。
唾液の量は凄まじかったようで、首辺りの毛は全て唾液でベタリと体に張り付いていた。
「主は儂の喉を楽しませてくれるかの?」
尾が緩み、体が重力に従い落下が始まる。
そのまま、九尾の中に頭から滑り落ちて・・
バクッ・・・ゴクリッ!
体が全て滑り込むと口が閉じて暗闇の中、止まることなく僕は丸呑みにされた。
「ん〜〜・・美味じゃのぅ・・癖になりそうじゃ。」

 * * * 

グジュッ・・ニジュッ・・グチュグチュッ・・
生々しい水音を奏で、僕は喉から食道を飲み下されていった。
ギュッっと時折、発生する蠕動。黒狼よりはキツくない。
むしろ、僕を労っているように感じられた。
喉、食道も比較的余裕があるように感じられる。
「・・は・・っ・・ふっ・・っ・・」
十分な程に唾液を浴びたのに、上からはまだ唾液が流れ、
僕を汚す。
ニプッ・・グジュルッ・・ジュルゥ・・
グギュッ・・ニュプッ・・
ヌチャァッ・・・・ドチュッ・・・
恐らく、十分程たった頃だろうか食道を下りきって噴門をこじ開け、胃袋に落ち込んだ。
胃袋は窮屈ではなかった。身動きは楽に出来る。
黒狼ほど、狭く無かったのだ。
ところが、体が胃壁に沈むのだ。
九尾の胃壁は伸縮性に富んでおり、手で触れただけで肘まで胃壁に飲み込まれた。
「っ・・は・・・あっ・・く・・ぅ・・」
そろそろ呼吸がキツくなっていた。酸欠だ。
胃袋の中に身を投げ、力を抜いた。
「相当お疲れのようじゃ。少し眠るが良いぞ。」
くぐもった九尾の声。しかし、体内にいる僕にはよく響く
「・・・うん・・」
僕は疲れた幼い声を上げて目を閉じた。
グニュッ・・キュッ・・
胃壁が僕の体を優しく包み込んだ。
生暖かくはない。ちょうどいいぐらいの温度だ。
高級布団のように気持ちいい。
黒狼さんより・・・いいかもしれない・・

 

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