その頃…… 

とある洞窟の、最深部での話。 


「……よく来たな、フーディン。」 

「ミュウツー殿…… 探しておりましたぞ。」 

……そう。 

ついに、フーディンがミュウツーの所へ辿り付いたのだ。 


「成る程、な。 地上はそんな面白い事になっていたのか……」 
ミュウツーは腕を組み、フーディンに背を向けたまま答える。 

「あまりの強さに……あなたを追放して置いて、 
 今更こんな事を頼みに来るのも、どうかとは思ったのだが……」 
フーディンは申し訳無さそうに言う。 

「……気にするな。 私は元々他者との関わりを好まん。」 

「では……!」 

「ただし……私は誰の指図も受けん。 勝手に暴れさせて貰うぞ!」 
ミュウツーはそれだけ言うと、どこかへ消えてしまった。 

「テレポート、か……」 
フーディンはその場に座り込む。 

「……仲間達よ…… お前等の犠牲、無駄にはしなかったぞ……」 
そして、ゆっくりと目を瞑り…… 

「わしには…… もう、何も残っていない…… 
 ……仲間も、気力も、体力も…… すべて……」 
それだけ呟くと、そのまま瞑想をはじめた。 
自分が来るまで、ミュウツーがそうしていたように…… 


――洞窟前。 

「久々の地上だな……」 
ミュウツーはそう呟くと、深呼吸をする。 

「……感じる…… 感じるぞ、戦いの匂いを……! 
 私がこの10年で蓄えた力、存分に発揮してくれる!」 
ミュウツーは嬉しそうに言うと、額に手をあてる。 

「先ずは…… 格闘軍だ。 
 手始めにあの目障りな格闘軍を叩き潰してくれる!」 
そして…… 洞窟から出た時のように、その場から消えてしまった。 


「やれやれ…… 相変わらず血気盛んですね。」 
「全くだ…… 取り返しのつかん事にならなければいいが。」 
……それを遠くから見守る、ポケモンが二匹…… 



同時刻、例の森。 

……ボクらは、ラグラージさんの知り合いである 
ジュカインさんの家に厄介になっていた。 

「おいおい…… いくらラグラージの知り合いだっつっても、この数はちょっと……」 

……ボク、ロゼリア、エーフィさん、ハッサムさん、クチート、ロズレイドさん…… 
それと、ジュカインさん。 確かにこの人数が一気に入ると狭い。 

「む…… なら私は外に居るよ。 見張りも兼ねてな。」 
「それじゃぁオレも行くぜ。 外の方が好きってのもあるが……」 
ロズレイドさんとハッサムさんが、家から出て行く。 

「それでは、私も…… 大人ですしね。」 
それに続いて、エーフィさんも出て行った。 

「まだ狭いな。 足の踏み場も無い感じだ。」 
ジュカインさんはそう言うと、ボクらの方を見る。 
……正直あんたの尻尾が一番場所取ってんですけど。 

「えーっと…… うち鋼タイプやし、外はキツい。」 
「私も草タイプなんで寒さには弱いです……」 
……え? なに? 二人して…… 

ちょっとまって、ボクの方見ないでよ、ねぇ。 


……結局、ボクも大人たちと一緒に外で寝る事になりました。 


「はぁ……」 
「……さっきからため息ばっかりですね?」 
寒さを和らげるためにボクを抱いてくれてるエーフィさんが、心配そうに言う。 

「あ…… はい、まぁ……」 
……そりゃぁ、二匹がかりであんな事されたら落ち込みもするがな…… 
今頃、あの二匹が家の中でぬくぬくしてると思うと腹が立ちます。 

まぁ、雰囲気に負けて外に出るって言ったボクも悪いんだけど…… 
……せめてじゃんけんを言い出せばよかったな。 反省。 

それにしてもエーフィさんの毛って肌触りいいなぁ。 
こう言う布団って言うか、抱き枕とか欲しいなぁ…… 

あぁ、家が懐かしい。 母さん、会いたいよ…… 


……あれこれ考えてるうちに、眠くなってきて…… 
ボクは、そのまま寝てしまった。 


ボクが、寝てる間の話…… 

「さて…… 交代で見張りということだが……」 
ロズレイドは眠たそうな顔で他の3匹を見る。 

「ハッサムはともかく…… 二匹とも、可愛い寝顔だな……」 
微笑ましい光景に、思わず顔が緩む。 

……その時だった。 近くの茂みから物音がした。 

「むっ……」 
ロズレイドは咄嗟に構え、音がした方に注目する。 

「……誰だ、隠れてないで出て来い。」 
他の三匹を起こすまいと思ったのか、声を抑えて威嚇する。 

……しかし、茂みに潜む者は出てくるどころか…… 二匹、三匹とどんどん数が増えていく。 

そして…… 十匹に増えたところで、一斉に茂みから飛び出して来た! 


「んぅ……」 
騒がしい音で、目が覚める。 

……暗くてよくわからないけど…… 
誰かが、戦ってる……? 

「くっ…… 何だこいつら、次々と……!」 
「数だけだな…… ただの雑魚集団だ!」 
「ですが…… これだけ居ると、流石に……!」 

ハッサムさんと、ロズレイドさんと、エーフィさんが何かと戦ってるみたいだ。 
……どうしよう。 足手まといになっちゃマズいよね…… 

ボクは、ハシゴを登り…… そそくさと、木の上の家の中に逃げ込んだ。 


「ふぅ……」 

ボクはとりあえず、家の電気をつける。 
外で三匹が必死で戦ってるのに、お前等だけ眠らせとくのもアレだしね。 

……しかし、ボクの思惑に反して、中の三匹は一向に起きなかった。 


ボクの心の中の悪魔が、動き出した瞬間だった…… 

……いや、ホントはこんな事してる場合じゃないんだけどね。 
一刻も早くジュカインさん起こして、外の人達に加勢してもらわなきゃならないんだけど…… 

ボクはそんな事を思いつつも、油性ペンを手に取り……キャップを外していた。 


くふふ……w 

……あぁ、ダメだ…… ボク、完全にバカだ。 

先ずはロゼリアの額に“肉”。 定番だ。 
それにしても…… 何でこの二匹、いきなり仲良くなってるんだろう。 
抱き合って寝やがって。 腹立つ…… 

……次に、クチートのほっぺにうずまきを書く。 ニンニン。 

そして、ジュカインさんの…… 

「……何やってるんだ?」 

……やば。 


……これは相当マズい状況だ。 
こう言うときは素数を…… 

「ったく、これだからガキは嫌いなんだ……」 
ジュカインさんはそう言うと、ボクを押しのけて入り口まで行く。 

「……そこで寝てていいぞ。」 

……口は悪いけど、優しい人なのかもしれない。 

ボクは…… 外の事も気になったが、 
あの三匹の強さを信用してるというのと、足手まといになりたくないと言う事で、 
大人しく家の中で寝る事にした。 

……さっきまでジュカインさんが寝てたってのもあるけど、 
布団は本当にあたたかい…… ボクは、横になって僅か数秒で眠りについてしまった。 


……久し振りに、ちゃんとした所で眠れる幸せをかみしめながら…… 

−第七話 完−


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