「はふぅ…くぅ…」

 体中を舌に包まれて暖かく、幸せだった。
やがて、充分と思ったのか竜は俺を口の中に引き込もうとする。やっぱり怖いので抵抗はしたが、柔らかい舌の前には無力だった。

ハグッムグ…アグ…バクン!
 そのまま口が閉じられ舌が俺を上顎に押し付ける。
ベチャッ!ヌチャア…ドチャ!

「うわぶっ!………ゲホゲホッ!」

 と、いきなり舌が押し付けるのをやめて僕を落とした。
落ちた先には大量の唾液がたまっていて、俺は完全に沈み込んでしまった。慌てて粘性の高い液体をかき分けて浮かび上がり口に入った唾液を吐き出す。
その直後だった。また舌が僕を持ち上げたかと思うとだんだん傾斜を始めた。

………ズルッ!ズズズズ〜ニチャァ!

 最初は耐えていたが段々喉に向かってずり落ち、とうとう足を捉えられてしまった。
ング……ズリュ……ヌチャァ……ゴクン!

そして、そのまま飲み込まれる。体中を柔らかい肉に包まれて抵抗する気も起きない。むしろ気持ち良い。

「くぅ……はふっ、ふわぁ…」

ムニュ……ズズ…ドチャ!

三十秒ほどだろうか?噴門とおぼしき部分を通り、落下した。
そこは、今までよりも柔らかい肉に覆われた空間だった。飲み込んだ獲物を消化するための空間、すなわち胃袋である。俺が入り込んだ事により当然の反応を始めた。消化するために胃液を出し、蠕動(ぜんどう)を始めたのである。
流石にそれには恐怖を覚え、もがく。だが、まるで掴み所のない胃壁はムニュムニュと形を変えるだけでどうにもならない。そうこうしている内に胃液が足先まで上がって来た。胃壁も拘束を強くして来る。下半身が動かせなくなるのも時間の問題だろう。
足が胃液に沈み始めた。激痛を覚悟していたが痛みは無かった。むしろ、喉や舌とは比べ物にならないほど柔らかく、暖かい胃壁に包まれて気持ち良かった。

ムニュムニュ……グニグニ……あたたかい…ヌチャァ……

 全身を揉みしだかれながら意識が遠のいて行くのを感じた。

「そ……ゃ……き…す…〜♪」

 竜が何か言っていた。何を言っていたかは判らないがそれを聞いた直後に俺の意識は暗闇に包まれた。

 

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