………はっ!此処は?………そうだった、電車に跳ねられて……
 自分の身に起こった事を思い出していると声がした。

「起きた?」

「え?うわっ!」

 昨日に比べ、遥かに近い所から発せられた声に振り返ると其処には、

  竜が居た

 自分など一飲みに出来そうな巨大な竜が此方を見下ろしていた。

「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。僕はまだ何もしないから。」

「う、うん…」

 思わず頷いていた。危険さよりも嬉しさを感じる視線があったからかも知れない。

「うーんと…まだ治り切ってないなぁ…」

「流石にもう一度は寝れないぞ…」

「うん、判ってる。少し、僕について話そうか。」

 そう言うなり身の上話を始めた竜。自分の持つ「悪の象徴」といったイメージからあまりにもかけ離れた姿に興味を感じ、思わず聞き入ってしまった。
 どうやら彼は昔、呪いを受けてこんな役目をやらされることになったらしい。
何でも大勢の人間を殺したらしい。
そして、倒された後もこうして輪廻から外れかかった者を導く役目をさせられる事になっていたという。自分が殺した人間と同じ数の魂を導いたら解放されるらしく、その最後の魂が俺らしい。それでさっきから喜びを隠し切れていないのか。
 
「これで僕の話はお終い。丁度傷も直ったみたいだね。」
 
「ん?ああ、本当だ。そういえばあんたは解放されたら何処へ行くんだ?」
 
「うーん…何処へ行こう♪」
 
「…………」
 
 なんか、罰を受けるほど人を殺した様には見えないな…
 
「ま、ともかく君の死の烙印を消さないとね。」
 
「ああ、そうだな。どうやるんだ?」
 
 返ってきた答に思わず固まってしまった。
 
「ねぇー?大丈夫?おーい!」
 
「だ、大丈夫だ。悪いけどもう一度言ってくれないか?」
 
「良いよ〜。今度はちゃんと聞いてね〜。僕のお腹に入ってもらうの。分かり易く言うと僕が君を食べるって事♪」
 
………竜が楽しそうに見えるのは気のせいでは無いだろう。

「で、判ったんだが…他の方法は無いのか?」
 
 流石に食われるのは嫌だ。生き返るどころか逆に死にそうだし……もう死んでいるから大丈夫か?
 
「無いよ♪」
 
 嘘だろ!それ!めちゃくちゃニコニコしてるから判るぞ!
 
「本当に無いんだな?」
 
「うん♪無い訳じゃ無いけど、生まれ変わりになるよ。それも全く違う世界の。違う世界なら輪廻が違うから死の烙印があっても問題ないしね。」

「世界が違うのか…それは嫌だな。」

「なら、僕に食べられるしか無いね〜♪」

 ニコニコしながら言うな!

「あと、聞いて置きたいのが苦痛は無いのか?それ。」

 そう言うと竜は思案顔になり、

「うーん…無かったと思う。中には吐き出したら、目がトロンとしてた人もいたなぁ。」

苦痛は無いのか…

「じゃ、準備は良〜い?」

「いや、ま…」

「な〜に?聞こえないよ〜。」

ガシッ!

「うわ!?」

いきなり掴まれ、口の前に持って行かれる。すると竜は俺を舐めまわし始めた。

ペロォ…ヌチャ…ニチャァ…ズリュリュ…

「うぶ…な、何を………!……!?……」

舐められている内に服を脱がされてしまった。

「ふふっ。美味しい。」

そう言う竜の顔はさっきまでの可愛い竜ではなく、獲物を捕まえ、ご満悦の捕食者の顔だった。

グパァッ………ドロォ……ヌチャァ……ピチャピャ……ペロォ……

「うぐぐ………はふっ!?くはぁっ!」

頭の上でその巨口が開かれ、人一人ならば楽々丸呑み出来そうな口内から唾液が垂れて来る。その直後には舌が伸びてきて体中を舐め回す。
そして、体がその行為に意識とは違う反応を示す。裸の体に舌が擦り付けられる度に快楽にのけぞる俺。そんな俺を見下ろす竜。ただ単に舐められたり、舌でぐるぐる巻きにされたりしていた。
そうして、一体どれくらい舐め回されていたのだろう……
時間の感覚が無くなるほど長く舐め回されていたのかも知れないし、心地良さに時間を忘れていたのかも知れない。突然、竜が舐め回すのを止めた。暖かくて気持ち良い舌を没収されて抗議の目線を向けると嬉しそうに見た後に口を開けた。唾液が落ちてくる。ふと不安になり、竜に問いかけた。

「なあ、本当に苦痛は無いんだな?」

「グルル…?うん、無いよ。じゃあ、もう食べるよ?」

そう言うと舌が俺を巻き取り始めた。

 

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