「う……うーん………あ、あれ?」

 跳ねられてからどれぐらいたったろうか…
 不思議な事に数十トンいや、列車全体なら数百トンもの列車に八十キロ程でぶつかられたにも関わらず僕は生きていた。
いや、生きていた事自体奇跡なのに大怪我どころか擦り傷一つ無い…
これは一体どういう事だろうか?
 さらに、周りを見渡してみれば、そこは線路の上でも、病院の手術室や集中治療室でもない。むしろ何も無い。床も、壁も、屋根も無い。第一、地面が無い。

「うわああぁぁぁぁ!」

 その意味に気付いた瞬間「落ちる!」と思い、悲鳴と共に今度こそ死を覚悟した。

「……………?」

 しかし、覚悟した瞬間は何時までも来なかった。

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。」

 声がした。

「…………!?誰だ!」

 口ではそう言うが心は安心していた。

 声がする、それは人がいる証拠。少なくとも僕の周りには喋る犬や猫は居なかった。だから…

「誰か居るんだろ?姿を見せてくれ!こんな訳の判らない空間から出してくれ!」

と、懇願していた。

「ま、待ってよ!話を聞いて!」
 声の主は直ぐには助けてくれないらしい。その事に若干不満を抱えつつも素直に話を聞くことにした。

「ああ、わかった。」

「君は、電車に跳ねられたんだね?」

 何だ?何で知っているんだ?もしかしてこれは幻覚で目の前に医者がいるのか?

「そうだよ…」

「やっぱり…」

 何がやっぱりなんだ?
そう聞こうとすると…

「よく聞いて。君は電車に跳ねられたけどまだ死んではいない。ただ、魂と体の繋がりが切れているだけだ。」

 は………?つまり………生き返れるのか?

「それは…生き返れるチャンスをくれると言うことか?てか、あんた誰?」

「…………あ、まだ言ってなかったね。
僕は輪廻の守り、君みたいに死んでいないのに輪廻の輪に入ろうとしている人や死んでいるのに生者の世界に戻ろうとしている人を正しい道へ戻すのが役割だ。
さっき君が言った生き返り、だけど…結論から言うと出来る。」

「なら早くしてくれ!」

「今はまだ無理だ。」

「何故?死んじゃいないんだろう?」

「確かにね。でも君の魂は輪廻に触れた事で死者の烙印を押され、死にも値する衝撃を受けて傷ついている。まずはその傷を直さなきゃならない。だから今は休んでいて。傷が癒えたら起こしてあげるから。」

「ああ、わかった。けど、今直ぐ生き返ろうとしたらどうなるんだ?」

「魂が傷に耐えきれずバラバラになって、死者の烙印を押されているから輪廻から外れてしまう。そうなると異形の物としてしか生きれなくなる。」

「それは嫌だな。素直に寝るよ。お休み。」

「お休み。」

 そう言うと゛何かは゛僕を包み込んだらしい…

温かい………

僕は何かに包まれながら眠りに落ちていった。

 

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