明りが消された薄暗い部屋の中に誰かの気配がした。

部屋の外からは先程から大勢の人が出入りする様な音が聞こえていたが、
数分前から次第に静かになり、今は誰の気配もしなくなっていた。

その人物は掌に淡い光を纏わせ、その指を自分の額に翳して意識を集中する。



ーーーーーどうした?



突如頭の中に誰かの声が響き、
その人影は壁に凭れながら誰かと話す様に口を微かに動かしていく。


ーーーそうか。やはり……お前の方はどうだ…?ーーー


人影が口を動かすと、それに反応する様に頭の中に返事が返ってくる。


ーーー分かった、調べておく。それも一緒に…あぁ、そうだ…ーーー


ズボンのポケットに入れていた片手を抜くと、
その手には小さなメモリーユニットが握られていた。


ーーーその記録は、奴等には見られていないな?ーーー


影が軽く頷き、額に手を当てたままドアの方へと歩いていく。


ーーー……そうか、なら良い。今見られてしまうのは拙いからな…気をつけろ。ーーー


人影がドアノブに手を掛け、そっと開けた。


ーーー…あぁ、解析をしたらそれは私が破棄する。お前は二人の監視を続けてくれ…ーーー


ドアを開けると目の前に広い空間が広がり、
その部屋の中にある大きな柱の至る所が砕け散っていた。

だがその状況に驚く様子も無く、
人影は広い空間ーーー駐車場の隅に向かってゆっくりと歩き出していく。


ーーー…それは大丈夫だ。今の段階では、まだ奴は覚醒していない…ーーー


駐車場の隅に留めてあった一台の車に近づき、ドアを開けて乗り込んだ。
その動きに、人影の短いプラチナの髪が一瞬靡く。


ーーー…分かった。お前も悟られない様、気をつけろ……アヤ。ーーー



頭の中に聞こえたその言葉を最後に人影……アヤは掌の光を消し、
事件の騒ぎで集まった報道の車に紛れて街の中へと走っていった………



To Be Continued

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