吾輩は言われる様にしていた。
そして目をつぶって数えた


ひとつ

少し足が温かくなった気がする


ふたつ
みっつ

少しではなく足が確実にぬるい…

よっつ
いつつ

熱さは腰までやってきた

むっつ
ななつ

吾輩の体が全て包まれた。あの温もりに…

やっつ
ここのつ…

吾輩はあの温もりに包まれながら落ちるような感覚に見舞われた

と…う・・・・

…意識が遠い
少し広い所に座っている
恐る恐る目を開いた


なんであろうか…
この場所は…
ピンクの壁…下には何らかの液体がある
とてもネバネバしている

感覚から言うと…

ここは…まさか…


龍の胃袋だ。

下にあるこの液は胃液…


[大丈夫か?]
龍の声が鳴り響いた
「大丈夫もなにも…」
[まあもう少しくたばっててくれ]
「そんな…」
[安心しろ。溶かしはしない。]
「あと記憶がなんとかって…」
[んん?ほっとけよそんなこと]
少々癪に触れたが、くたばっていることにした。


それにしても不思議な空間だ。
とても暑苦しく呼吸もろくにできないはずなのにとても落ち着けた。いや、落ち着く場所だった。

「すごい…とても落ち着く…」
[そうか…]


そうしてついに吾輩は眠ってしまった。





あれからどのくらい経ったであろう。
吾輩はやっと起きた。

「…!!?」
[おう、やっと起きたか?]
「吾輩は…えーっと」
[ま、いま出すからな]
「…???」
いまだに状況がつかめない吾輩に遠慮なく胃壁が迫ってくる。
そのときにやっと思い出してきた。




すると経験したことのない事まで頭に入ってきた…

ついには龍の口に到達するころには本当の全ての記憶を取り戻した。

[…ありがとうレオン……]
[記憶も言葉も全部戻ったみたいだな]
[ああ]
そうして吾輩は龍の掌に戻された。
すると周りの竜人達は片膝をつき敬意を示した
[無事に地球からお帰りいただき嬉しゅうございます。]
とシェルビーが挨拶をしてくれた
[ああ]と言って吾輩は笑顔を見せた。
[わがロッソ国の王はここに戻った!長い間すまなかった!]と声を張り上げる。
そして竜人たちは雄叫びを上げる。[王様万歳!]といった声まで…
そうだ。吾輩は昔なんらかの事故でここの世界へ来てしまい、いろいろな成り行きで王になってしまった。
そして吾輩はレオンに[王様はまだ幼いのでここの世界の存在をうっかり外に漏らしてしまうかも知れない。]と言い、
この世界から出たらその記憶を封じるように魔法をかけてくれた。
当時は[平気だもん]などと意地を張っていたがレオンがこの魔法をかけてくれなければどうなっていたことか…
レオンはいわば王のお世話係といった所。
シェルビーは左大臣だ。あと右大臣のゲングログもいる。
三人ともとてつもなく強い。

そしてレオンは竜人姿に戻り吾輩を奥のテントへ導いた。
昔と変わらなかった。そして濡れたジャージを乾かしてもらい、まずはなぜか雑談だ。この村…ロッド村の竜人は見た目によらずやたらと喋る。

[まさかとは思ったけどホントに陛下だとはねぇ]
[それでもあんな態度なくね?]
もはやタメ語である。
そうして話が続く
そうして政治の話などをしていたら…
[で、陛下、 お見合いの件は?]
吾輩の背中に冷たいものが走る…
「いや…それは……もう断ったはずだけど…」
いきなりかしこまってしまう
[王様〜あの後いい人が来たんですよ〜]
[だからいいってば!!]
[だから遠慮しな…]
[してません!]
ついには言葉をさえぎる。
[なら会うだけでも…相手に失礼ですよ?]
[失礼で結構でございま〜す!]
[あ〜そうだ。王様がやたらとことわるのはあっちがわに…彼女がいるからでしょ?]
ちょうどお茶を飲んでいた吾輩はお茶を吹いてしまう。
[なぜそれを…]
吾輩は吹いてしまったお茶を拭くのも忘れ唖然としながら言った。
[理由は簡単!例の記憶を直した時に陛下があまりにも長く寝ちゃってたもんだからついでにやらしてもらったよ♪]
[…言わば吾輩の記憶を覗き込んだわけ?]
[そーゆーこと〜]
[……]
もはや吾輩の出ようは無くなった。
[ふふふ…彼女可愛かったな〜]
[や、やめて…ねえお願い……あっそうだ!  ねえ元の世界に戻るにはどーしたらいいわけ?]
[…え?それは私に戻してもらうしかないなぁ]
切り替えが早い
[どーやって?]
[記憶なおすときと同じ。]
[え、俺また食われるの?]
[私じゃなくてもできますがほかの方はちょっと…]
[…魔力とかそーゆーのに比例するわけ?]
[言わばそうですね]
[ふーん]
そして不意にポケットに手を入れると…
あの時の石があった。
[あの時の…]
[お、今更気づいた]
[これ何の効果持ってんの?]
[どれどれ…おっ‘全知全能‘だな〜いいものをみつけたな〜]
[だからどういった効果なの?]
[いわば世の中の大半の事をやることができるわけ。]
[ふーん…ってめちゃくちゃすごくない?そんなこと普通に言わないでよ!]
[もちろん大量の精神力と体力使うけど]
[吾輩に使いこなせるわけ?]
[まあ思うだけで使えますよ。]
[じゃあこの世界にこれで行けるの?]
[まあ可能ですね。]
[ふーん]
そんなこんなで吾輩は話に話し、結局どこかのタイミングで寝てしまった。
起きてから知ったことだが吾輩のことをベットには(もどきだがここではベットとしましょう)ゲングログが運んだようだった。
彼は無口だったので来てから会話をしていなかったのでなんだか悪い気がした。

 

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