『すごーい 物凄く体が軽い!』
猫の体になって歩くと物凄く軽い。さっきまでの気分も落っことして身軽に歩いてる感じ?
玉吉は、路地裏の途中で手拭いを拾っていた。
『人間てあんな大きな足をくっつけて、良く歩けますよね。 あっ ここですよ。』
ついたのは誰も住んでいないようなボロ屋敷だった。
『ここなに?』
『我ら同類たちの集会所です。』
『え?ここで?』
確かここって通学路の途中の家、だれが住んでんのか気になってたところだった。
猫はぼくの疑問も聞かずさっさと中に入ってしまった。
中に入ると猫がなんと30匹位集まっているのだった。猫の目が暗い中光っていた。
僕はとりあえずあの猫についていった。
『お集まりかな?』
あの猫が聞いた。
するとそこらから「全員います」と声が上がった。
『では集会を始めます。まずご紹介から。我々の兄弟、吉祥と言います』
『え?』
そこでこっそり耳打ちした。
(なんでよ?俺の名前忘れた?)
(それがあなたの名前です。自己紹介して!)
え〜〜?そんなことってあるかよ!!
実は名前が前後ろ逆… じゃなくて別の名前だったとは…
『えっと…どうも、吉祥です…』
その時にそこらから「ゴロゴロ」と喉を鳴らす音が聞こえた。ヘマはしなかったみたい…
『では本題に移ります。こちらの兄弟と共に今から天草下島に向かおうと思います。力を貸してくれる者はいるか?』
なんじゃそりゃ。
『・・・』
何故かシラケムード…そこで僕が口を挟んだ。
『あの…行こうと思えば自力で行けるけど…』
空気が一瞬固まった。事実なんですけど…
この堅い空気はブチ猫の咳払いで明けた。
『そうなのか?そうならそうと早く言ってくれないと。』
『まあ…そうなんだけど…電車とかで行くと思ってたから…んじゃ、行く?』
『えっ…ええ。その通りに…』
かなり戸惑っている。
『では集会を終わります。』
はやいな!なんか話すこと無いのかよ。俺がなくしちゃったのか。
そこに集まった猫たちはそそくさと皆立ち去ってしまった。
微妙に悪い気もするが…
『で…どうやっていくのです?』
『この首輪。ただの首輪じゃないから。分かんなかった?』
『…ええ』
『じゃあ行くよ。場所とか細かく教えて。』
『肥後、天草下島…猫股岳』
『OK。行くよ。』
そう言って目をつむった。目をつむる必要はないけど何となくやってしまうのである。
(肥後、天草下島、猫股岳へ)
そうして目をあけると…

目の前に大きな山があった。山道が見えている。
『『わぁ…』』
2人…2匹は同時に言った。
『えーっとその首輪は何ですか?』
『えっと…これも話すと長い。』
『そうですか。では今日の内に行きましょう。』
『今日!?』
上を見ると月がやや上に来ていた。
『無茶だろ?』
『走っていきますよ?』
そう言うと、よったよったと歩いて(走って?)行った。
遅い。
『待った!いい考えがある。』
『その首輪で頂上まで行くのはだめですよ。術がかかってますから。』
『いや、そうじゃない。』
そう言ってまた目を閉じる。意味無いのに…
(術の解ける前の人間の姿。)
そうして人の姿に戻った。(しつこいけど中身は猫。)
そしてさらに
(背負いかごを…)
そうして足元に出てきた籠にブチ猫を問答無用に入れた。
『あわわっ 何をするのです?』
「まあまあ。おとなしくしててくれ。」
そう言って籠を背負った。少しバランスを崩して揺れてしまった。
『わぁっ おとなしくって言ってもこんなに揺れるのなら嫌ですよ!』
「悪い悪い。猫の時と感覚が違うもんだよ。」
ちょっとバランスが取りにくい。それより体が重い。けどもすぐに馴れた。

とりあえず月夜の山道を早歩きで登っていった。

歩いてる時に話を聞いたのだが、ブチ猫の名前を《玉吉》といった。

 

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