「やっと山を出たね!」
『なにがやっと だよ… 吐き出されてからしばらく担がれて来たくせに!』
[良いんですよ… ニタ公さん…]
「ってか仕方ないでしょ! 気絶してたら歩けないでしょ!」
『気絶するのが悪いってんだよ!』
[ですからニタ公さん…]
「僕は中で軽く死にかけたんだからね! 気絶で済んだ分いい方だよ!」
『しらねぇよ!自分から喰われたくせに!』
[お二人共…]
「猫が喰われるの止めるためだったんだぞ! おれが喰われなきゃ今頃ニタが腹の中だね!」
『知らねえな!大体喰われるほど俺はとろくねんだよ!』
[…]

山の道入り口にて言い争う一人と一匹。そして見守る一人…
三毛猫のニタ公。人の祥吉。竜人のレオン。

「じゃあ喰われる前に呪術でもやりましょうか〜?」
『あんたに呪術かけられるなんて俺も落ちぶれたもんですな。』
[…お二人ともっ!]
ふたりともレオンの方を向いた。
[私は陛下がいれば満足です♪]
「はぁ〜?」
こっちは迷惑ですが… ニタは横で笑っている。
「猫は食べないんじゃないの?ってかそうしてよ。」
[陛下はいいんですよ♪消化もしませんし。]
「…また今度にしてくれ。」
全く迷惑な御世話係だよ。
『どこまでぼうっとしてんだ。おいレオンさんよう。人間に見られんようにしろ。』
[はい。そうしますね。]
ニタは、人間に見えないようになっていても、人間以外からはなんの変わりなく見える。
でもレオンは、姿を消すとやや半透明になってしまっていた。
「透けてるね…」
[…仕方ないじゃないですか。]
『さあ。行くぞ。』
どこに…?

そう思ってしまった。

そんな事を考えている内に二人は歩き始めていた。

ついていこうとしたら、目の前の絵が、あの時のワンシーンと重なった。

そう。予知夢を見た瞬間と。


そう。僕は、

猫股なんだ。

 

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