涼しい夜風が気持ちいい。 少し強いが、昼とは違い、ひんやりした風が吉祥の黒い毛を撫でる。 辺り一面の草原。 僕はそこで香箱を組んで座っていた。 あ、香箱って言うのは手を折り畳んで下にしまうやつ。結構落ち着くんだよ。 そして、気づくと隣に僕のような真っ黒な猫が寄り添っていた。 『こんばんは。』 僕の方から声をかけた。 敵意は全く感じられなかった。 むしろ安心する香りがした。 懐かしい… 『随分と大きくなったのね。』 黒猫は答えた。 『…お母さんなの?』 『ええ。』 今、僕の横には、産んですぐ死んでしまった母。黒福が座っている。 『…これは夢なの?』 『そう。あなたのね。私はあなたに伝えなきゃいけないことがあったの。』 2匹は、話しながら寄り添った。 しばらくしてから黒福が話し始めた。 『あなたはこれから、何度も’戦争’に巻き込まれるわ。でも、戦争を良い方向へ導き、さらに兄弟たちに違和感無く猫であることを伝えられる。』 『戦争?』 『ええ。 あなたはまず森へ行ってらっしゃい。 そこでは兄弟は関わらないけど、大事な事を学べるわ。』 『どこの森?』 『そんなに教えられないわ。自分で答えを探しなさい。』 『…わかったよ。』 『あなたならできるわ。私はしばらくあなたの事を見守ってるわ…』 『ありがとう。僕は全力を尽くすよ…』 そう言ったのは、だんだん母のにおいが遠ざかり始めたから。 …草原に一匹。 黒い猫は座っていた。 |
10 / オマケ