「それが…オイラの親父と兄さんの親父の最期…」
「先程の君の話を聞いて悲しくなった、まさかあの時の…、
母親を亡くしたサンドパンがその後の粛清で犠牲になっていたなんて…」
「…奇妙な縁があるんだな、オイラ達…」

ウインディが一通り話し終えると、ゴルダックは体を少し起こして前を見つめる。

「悲しくはならないのか…? 君や兄さんの親の最期だ、それに、助けることも出来なかった
私を憎く感じるだろう…?」
「別に…、オイラが物心つく前のことだから悲しいなんて思えない、それよりも、
12年間もそのことを憶えてて、尚今もそのことを気に掛けてくれているアンタに感謝しているんだ」
「ゴルダック…」

一世代を超える間柄ではあるが、二人は互いを信頼しあえる関係になっていった。

「さて、オイラからも気になる質問をアンタにするぞ」
「ふふ…、私に答えられることならなんなりと聞いてくれ…」

難しい内容だとしても、自分達の仲を崩すようなことは言わないだろうと
ウインディは笑顔で応対する。

「サンダースのことなんだが…、訳ありなんだろ? ずっと不思議に思っていたんだ、
何故あんなハンターに向いていない娘がアンタと一緒にいるのか…」
「……彼女は、私が兵士をしていた王国の王女なんだ…」
「……やっぱりか、大方、物心がつく前に大戦の渦中に巻き込まれ、アンタが
保護をしたってところだろう…」
「あぁ、私が保護する前に預かっていた人物がいたんだが、その人の都合で離れざるを
得なくなってしまってな、私はあの娘を守り、いつの日にか王国へ返そうと思っているんだ」

決意めいた表情で風に吹かれるウインディ、ゴルダックは色々詮索すべきではないと
それ以降の質問は口を閉ざした。

「あの娘が独りを厭うのは、潜在的な感覚が王国の姉妹を求めているのかもしれない、
だから君の境遇を親身に思ったのだと思う…」
「…姉妹か…、…なぁ、サンダースはオイラのことを手伝いたいって言ってたよな?」
「? あ、あぁ…」
「その話を聞いて決めた、オイラはあの娘の力を借りる、だけどオイラはあの娘の
行く先を照らす光となりたい、協力…していいか?」
「あぁ…、もちろんだ!!」
「それじゃぁ、そろそろ寝ようか…、あー…、見張りはオイラがするからアンタは先に寝てくれ」
「…いいのか? それじゃぁお言葉に甘えさせてもらうが…」

そう言ってテントに入ってサンダースを見守るように眠るウインディ、
ゴルダックはそれを一視した後、何故か少し頬を赤らめて夜風に当たる。

(外で寝て風邪を引くのは避けたいけど、女の子のいる場所じゃ寝れる訳ねえよ…、
クソ、アンタは親代わりみたいなもんだから平気だろうな…ウインディ…)

理性という葛藤と戦うゴルダック、サンダースが寝返りや寝言を発する度に
ビクッと反応しては振り切るように頭をボカボカと叩く、
結局深夜まで眠れず、葉っぱを集めて寝袋代わりにしての野宿となってしまった…。

チチチ…クエェックエェッ…

「ん…もう朝か…」

オニスズメのさえずりに目を覚ますゴルダック、少し寝が足りないように目を擦っていると、
テントからサンダースとウインディが起き出して来る。

「お早う…、早いな、ゴルダック……ん?」
「……ぷっ、く、くくっ…あははははは! 何その顔?!」
「…? 顔…? …うわぁっ?! なんだこりゃ?!」

双剣を鏡代わりに自分の顔を見てみると、目の周りに黒々とした隈が出来上がっていた。

「こ、こら…サンダース…、笑うのはし、失礼だぞ? …くくっ…」
「きゃはははっ…! う、ウインディさんだってぇ、くく…うくくくくっ…!」

大笑いするサンダースと口を押さえて笑いを堪え切れないでいるウインディの態度に
顔を真っ赤にしながら俯いて手を震わせているゴルダック。

「……お前等なぁぁぁぁぁ!!」


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