パチパチ…パキン!

「ねぇ、昼間のことだけど…、良かったら話してくれる?」

夜、火を囲んで食事をした後、沈黙が辛かったサンダースはゴルダックに
疑問にしていたことをぶつける。

「…話してもいいが、面白い話なんかじゃないからな」
「面白い話が聞きたいんじゃないの…! 分かって言ってるでしょ?!」
(分かってて聞いてるだろ)
「?! くっ?!」

近い言葉を聞いたのか、ゴルダックは一瞬だけだがサンドパンの顔を
思い出してしまう、しかし、すぐに平静を保ち…

「どこから話せばいいか…、オイラは8年前は戦争孤児で、血は繋がっていないけど
二人の兄弟がいたんだ…」
「戦争…あの巨大な二国の大戦か…」
「そう…、貧しいながらもオイラは…、サンドパン兄さんとニューラ姉さんとで
幸せな毎日を送っていた、しかし…」
「何が…あったの…?」
「ある日、盗賊と手を組んだ兵士姿のポケモンが、オイラの住むスラムや集落を
燃やしていったんだ、一人も生き残らないような非道なやりかたで…」

淡々と語るゴルダック、サンダースは涙を滲ませて聞いていて、
ウインディは眉を細めて聞いていた。

「目の前で次々と傷つけられ、食物連鎖から逸脱したやり方で人々は食われていった、
その時にオイラの兄さんも…」
「そんな…」
「力が欲しかった、逃げ出すことしか出来なかった自分と、こんなことをした盗賊と兵士のことを
呪って、そして行方知れずの姉さんを探し出すためにオイラはハンターとなった」

ゴルダックが自分の過去を話し終え二人を見ると、ひくっひくっとすすり泣くサンダースと
一筋の雫が瞳から落ちるウインディの姿が映った。

「ゴルダック…、貴方は復讐のためにハンターになったんでしょ…?
でも、それを成し遂げてお姉さんを見つけた後、貴方はどうするの…?」
「…決めてない、他の事に気をとられていると、先の目標自体がいつまで経っても
成し遂げられないからな…」
「……他の事の中に私…私達も含まれているの…?」
「…えっ?」
「この仕事が終わったら私達ともバイバイ、貴方はまた独りでその目標を興じていくの…?!
折角繋がった関係を断ち切ってまで…!!」
「サン…ダース…?」

彼女が何故ここまで剣幕になって身の振り方を指摘してくるのかが分からなかった、
ゴルダックが抱えている目標は、他人がどうこうして変わる問題じゃない、
なのに、サンダースはぼろぼろと涙を流しながら答えてくる。

「お願い…、私にもその手伝いをさせて…! 貴方を独りのままにしたくない…!」
「…オイラは…」

その先の言葉が出なかった、結局のところ是とも非とも言えずのまま泣き疲れてサンダースは
眠ってしまい、テントの中へ運ぶようになった。

ザザアァァァァ…ヒュウウゥゥゥ…

「………」

さざ波のように木霊する森に吹く夜風、ゴルダックは地面に横になりながら今日あったことを
考えていた。

(オイラが目指している道は茨の道、他人を巻き込めばその人もただでは済まない事になる、
けど、あんなにまで真剣に話を聴いて、涙を流してくれる人を無下に断れるのか?)

「…眠れないのか? 明日は今日のような出来事よりきついかもしれないから
少しは休んだほうがいいと思うが…」

不意に声が発せられる、寝転んだまま視線を向けると、ウインディが一歩、また一歩と
歩み寄ってくる。

「それはアンタも同じだろ? それに、用があるからオイラに話しかけたんじゃないのか?」
「まぁ、その通りだ…、…君の親父さんのことで話しておきたいことがある」
「親父…? アンタ、オイラの親父と会ったことあるのか?」
「あぁ…私はあの大戦に参加していた兵士だったからな」

ウインディが隣に座り、前を見つめたまま淡々と話してくる、ゴルダックは少し興味を示したような顔で
ウインディの横顔を眺める。

「君の持っているその双剣、『鷹匠と鵜飼人』は大戦を始めた大きい国二つの間にある
リバーブルグという小国の遊撃隊『リップル・エッジ』が所有する業物だった」
「…リバーブルグ、リップル・エッジ…? それが、親父のいた…」
「…私はあの大戦の中、手負いを打破しようと近くにあった彼らのアジトへ、
薬剤を奪おうと力を振り絞って乗り込んだ、しかし…」
「………」
「私は牙を剥き出しにし、脅すように薬剤を要求したが、彼らは…」

ウインディは少し遠い目で空を見上げる、その時のことを思い出しているのだろう……。


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