「紀元前に建てられたとされる遺跡群の調査…?」

街から少し離れた森の一本道を進む中、ゴルダックはウインディから
今回の仕事の詳しい内容を聞いていた。

「ああ、資料に載らず、不思議な力で入り口さえも強固に封じられていて
研究もままならないと科学者が泣きついてきたんだ」
「おいおい…、つまり多少の手荒い行為も目を瞑るから
どうにか遺跡の入り口や内部の通路を開通してくれってことか…」
「それだけじゃない、それなら力自慢のハンターに任せればいい話だが
強固に封じられているということは中にもトラップや、力では太刀打ちできない
仕掛けがある可能性がある」
「そこで経験の豊富なウインディさんが抜擢されたのよ!
今までにも数々のトラップを回避して負傷者を出さずに依頼を成功させたしね!」

会話になかなか加われなかったサンダースが割り入るように言葉を発する。
うんざりしたような顔でその言葉にゴルダックは反応する。

「確かにオイラはエスパータイプのスキルも持っているからその手の仕掛けにも
対応できるが…、他のハンターでもできるんじゃないか…?」
「まったくね、斡旋所もなんでアンタを選んだのかしらね?」
(こ…このガキ女…気にいらねえ…)

ピクピクと血管が浮き出るほどの怒りを覚え黙り込むゴルダック、
話の腰を折られた上にカラカラと笑い話にするサンダースに心の中で敵意を
剥き出しにし、そして…

「はっ! まぁ、入り口の突貫はお前で決まりだな、サンダース!
あれ程鮮やかなタックルができるんだから封印も問題ないだろうからな」
「な、何てこと言うのよ! それじゃ私がただのあばずれみたいじゃない!!」
「…よさないか、二人とも―――――」

仲裁に入ろうとしたウインディが言葉を止める、何かを察知したのか
険しい表情に固まる。

「…えっ? ど、どうしたの…? ウインディさん」

変化したウインディの表情に怪訝そうな顔をするサンダース、
経験が殆んどない彼女は何が起きたのさえ気付かないようだ。

「何を呆けてるんだ…? 敵さんのお出ましだって言うのに…」

ズイっと前に出るゴルダック、彼も気配を読み取ったのか臨戦体勢を整えながら
サンダースに状況を伝える。

「て、敵?! な、何でそんなのが出てくるのよ?! ただ遺跡の調査に行くだけなのに…!」
「……ふぅ、アンタも苦労してるんだな、ウインディさん、
こいつは何も知らないってことがよ〜く分かったよ…」
「気にするな…こういうのがいるからこそ放っておけないって気分にもなるだろう?」
「……大人だな、アンタ…そんじゃ行くぜ!!」

掛け声を合図にウインディとゴルダックは二手に分かれて突進する、
敵が気配の変化に気付き慌てて出て行くころには、状況が飲み込めずに
ただ立ち尽くすだけのサンダースの姿しかなかった。

「くそぅっ!! どうなってんだ?! 確かに獲物は三人いた筈だろ?!」
「ちっ!! 内の二人は熟練ハンターってことか…!!」

出てきたのは指名手配中のフシギバナとドンファンだった、彼らは二人組みの盗賊で
金品や金目の物を冒険中の人から奪い、時には捕食をして命まで奪ってしまう危険な
奴だった。

「おい、見えなくなった今がチャンスだ!! あのガキだけでもさらって食っちまおうぜ!」
「何?! 一匹だけじゃ取り合いになるだろうが!!」
「な、何を言っているの…?! ガキって私の…?」

そう言ってサンダースに迫っていく盗賊二人、サンダースは言葉の意味がよく掴めず
凶悪な目に足がすくんで動けないでいる。

「げははぁ!! いただき…!!」
「そういう訳にはいかねぇんだよなぁ!」

シュバッ! ザシュウゥゥゥ!! ズズゥン…!!

「ぎっ?! ぐおおぉぉぉぉ?!」
「あぎゃっ?! あ、足がぁぁぁぁぁっ!!」

姿の見えなかったゴルダックが盗賊達の足元に入り込み、彼らの片足を鋭利な爪で切り裂き、
転倒させてしまう。

「ひいぃっ!! あ、あぁ…あぁぁ…」

自分の両隣を倒れこんでいく盗賊達にサンダースは悲鳴を上げてぶるぶると震えだした。

「ウインディ!! 準備ができた! そっちはどうだ?!」
「いつでも大丈夫だ、行くぞ!!」

ゴルダックとウインディはいつの間にか盗賊とサンダースを区切るように地面に線を引いていて、
合図と共にウインディは火炎放射を線に放つ、ゴルダックはサンダースの周りにだけ引いた線に
水の波動を噴出させる。

ゴバァァッ!! バシャアァァ!!

「陣形戦術!! 炎絶からの開放=I!」

「うがぁぁぁぁぁぁっ?!!」
「あぐあぁぁぁぁ…!!」
「きゃあぁっ?! ……あ、あれ…? 燃えてない…?」

線に沿って火柱が上がり、線の中にいた盗賊達を燃していき、
サンダースだけが無傷になるように水の波動でカバーする連携戦法が見事に決まる。

「うぐぐ…ちきしょう…!」
「こ、こんなところで捕まる訳には…!」

バサァッ! ビシュビシュウゥッ!!

少しの間身悶えしていた盗賊達だったが、まさに死にもの狂いといった感じで
フシギバナが葉っぱカッターをゴルダックに飛ばしてきた。

「あ…危ない!! ゴルダック…、逃げてぇっ!」
「むっ?!」

進路が変わることなく向かってくる葉っぱカッター、ゴルダックは少し身構えて
腰に付けているホルダーから双剣を取り出す。

(?! あの双剣…?!)

「水の波動よ…その身を刃に宿し全てを拒む盾となれ…!!」

シュブブブ…! ビシュウッ!!

湧き上がる水が双剣に纏わりつき、薄い膜のように広がって小さな手甲のようになる。

「はあぁぁぁぁぁっ!!」

ジャンプをしながら回転し、次々に迫り来る葉っぱカッターを水の盾で防ぎ落としていく、
全て落とし終えて、地面に着地するとすかさずフシギバナに指を向ける。

「凍結封印!! 凍みる閃光=I!」

ビシュビシュッ! ピキ…ビキビキ!!

「あ、あぁ…?! あぁぁぁぁぁぁぁ…?!」

指から放たれたのは、冷凍ビームを圧縮した部分凍結用の冷凍レーザーだった、
フシギバナの葉の部分にピンポイントで当て、その攻撃を封印してしまう。

「さてと、攻撃を封じた今、お前達が待つのは斡旋所への引渡しだが…、
あいにく急いでる身だから、どこかに縛っておくか…」
「く、くそう…お前らさえいなけりゃそこの美味そうなサンダースにありつけたのに…!」

悔しそうに悪態をつくフシギバナとドンファン、しかし、その悪態が逆効果だということには
気付かなかった。

ガシィッ!! ググググ…!!

「うごっ?! ぐ、ぐるじ…い…」
「お前等は欲望を満たせて嬉しいかもしれないがな…、食うなんて言葉を…、
行動を二度とするんじゃねぇ…!! 胸クソ悪い…!!!」
「ひ、ひいぃっ…!! わ、分かった…!! 分かったから助けてくれ…!!」

全てを破壊しつくしそうな形相でゴルダックはフシギバナの顔を掴みあげる、
盗賊二人は畏怖により涙を流して許しを乞う。

「…やめるんだ、ゴルダック…」
「そ、そうよ…!! わ、私は無事だったんだからもういい…! もういいから…!!」
「…二人とも…」

気付けばウインディが肩に手をかけ、止せと首を振っている、
サンダースはすっかり脅え、涙混じりに哀願している。

「……ちっ…、もういい…これ以上お前等の顔を見ていたら殺しかねない…、
見逃してやるからとっとと失せろ…!」
「う、うぅ…分かった…」

そう言って手を放すゴルダック、すごすごと去っていく盗賊達を見やった後、
三人に少し重苦しい雰囲気が流れる。

「…悪かった、いくらDEAD OR ALIVEのライセンスを持っている身でも、
むやみにそういうことをすべきじゃないよな…」
「も、もういいから…! だから、そんな悲しい顔をしないで…!!」
「悲しい…顔…?」
「気付いてないのか…? ゴルダック、君…今すごく辛そうな顔をしているぞ…」

言われて気付いたが、頬に手を当てるとうっすらと涙が流れている、
まるで、あの時の記憶が蘇ったように…。

「…もう少し歩いたらテントをを張ろう、疲れは明日に響くからな…」
「ウインディ…、あぁ、そうするか」
「…ぐすっ、そ、そうと決まったら急いで行こ!」

三人は互いを気遣うように話し、再び足を進めだした…。


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