ゴマゾウが湖の水を飲み始めたその時…! (また、来たのね、無知な獲物が…) おぞましい声を発しながら、水面に向かって猛スピードで泳いでくる者がいた! ドッパーン!! 「うわあぁっ!」 ドッシーン! いきなり湖から上がった水柱に驚き、悲鳴を上げながら尻餅をつくゴマゾウ。 「?! 何なの、あれは…?! ゴマゾウ、大丈夫?!」 追いついたニューラも湖の異変に驚きを隠せないようだ…。 「…貴方達なのね…?」 口調は優しいが、相手に恐怖を与えるような言い方でつぶやく者…。 最初、何処から声がするのか分からなかった、しかし、 その言葉を聞いただけで全身の毛が逆立つような感覚が生まれた…。 「な、なに、この声…? …うえぇっ! なんなんだよ、あの湖にいるの…!」 その姿に気づいたゴマゾウが奇声を上げる、その反応につられたニューラは、 「なっ?! こ、こいつ…ミロカロス…?!」 長い胴を持ち、尻尾に青などの模様、そして頭に二本の触角のようなものを持つ蛇のようなポケモン、 ミロカロスが湖から二人を見下ろしていた…。 対格差に二人は唖然とするばかりだったが、何よりその瞳に強い恐怖を感じていた…。 「昨日からこの森に侵入して、荒らそうとするのは貴方達なのね…」 静かだが、怒りを含んだ言い方で二人に問いかける。 あまりの恐怖に言葉を上げない二人を無視して続ける。 「そのような事をする連中にはきついお仕置きが必要ね…さっきのヤツみたく…」 「さ、さっきの…? …貴女、そのお腹?! まさか、まさか二人を…!」 ミロカロスの長い胴に目をやるニューラ、そこには不自然な程に膨らんだ胴が確認できる。 最悪の結果が頭をよぎり、目の前が暗くなっていく…。 「おいしかったわよぉ、少し物足りなかったけどね」 さもニューラを小馬鹿にしたような口調で話す、そして軽く舌なめずりする。 「このぉ…! 許さない!!」 怒りで我を忘れたニューラはミロカロスに襲い掛かる。 冷静な判断を欠いてただ突進していく…。 「だ、駄目だよニューラさん! か、かないっこないよぉ!!」 一人取り残されたゴマゾウ、助けにいこうにも足がすくみ、動けないでいる…。 そんな彼の近くに歩み寄る影が…。 「ゴマゾウ…さん?」 「ぶ、ブイゼルくん?! ど、どうして…?!」 信じられない光景だった、喰われたと思っていたブイゼルがここにいるのだから…。 「そんな事はいいからっ! 逃げて! しっかり助けも呼んだから!」 「で、でもぉ、ニューラさんが…」 「彼女のことなら僕に任せて、君はもう少しこの湖から離れてて!」 ニューラのことを心配していたゴマゾウも、ブイゼルの必死の説得にほだされ、 「…うん、分かった! 必ずまた会おうね! 約束だよ!」 と言って走り出した。 「うん、約束だよ、…絶対みんなで帰るんだ!」 ニューラのもとへ走り出すブイゼル、彼には何か決意めいた表情を浮かべていた…。 ニューラの猛攻を触角でいなしていたミロカロス、しかし、ブイゼルの姿を見ると腹立たしげに、 「あらぁ、一人はお仲間と再会できたようねぇ、ニューラちゃん…」 「な、何ですって…?! …! ブイゼル?!」 ミロカロスの意外な発言に戸惑うが、無事なブイゼルの姿を見つけ、一瞬気が緩んだ…その次の瞬間、 ビシュゥッ! バシィィィッ! 「きゃあぁぁっ!」 不意をついたミロカロスの触角がニューラの体に強い衝撃を与える、 攻撃を食らったニューラはそのまま湖に落ちた。 「うふふ…、戦いの最中に目を離すなんて、とんだお笑い種ね…あのゴルダックみたい…」 含み笑いをしながら、先ほど喰ったもののことを思い出すミロカロス、 その目はどこか恍惚としていた…。 なんとか水面まで上がるニューラ、しかし、 深々と攻撃されたせいで殆ど動けない状態になってしまった…。 「くぅっ! 返しなさい…、…彼を返しなさいよっ!!」 弱りながらも、敵対心を露にするニューラ、そんな彼女に、 ミロカロスは無情にもその胴で巻き付き、強く締め上げる。 ググギュッ! グギュワァァッ! 「いぎっ?! いぎゃああぁぁぁっ!」 悲痛な声で叫ぶニューラ、それに比例するように体力も大幅に削られていく…。 「ふふ、そんなに彼のことが心配なら貴女も彼の元へいけばいいじゃない…?」 そう言って、ミロカロスはニューラに顔を近づける。 「ふふふ…貴女もとてもおいしそうよ…先ずは味見をさせてもらうわね…」 ペロペロ…チュルゥッ… 「ひぃっ! うぶぅっ! うああぁっ!」 顔や手足、全身に舌を這わせてくるミロカロス、ニューラは舐められる度、 気色の悪さと電気に痺れるような感覚に襲われていた…。 クチュルゥッ…ピチャピチャ… 「あうぅぅぅっ…、ひっ、うああぁぁぁ…」 更に舐められ続け、言葉を発することさえ出来なくなるほど弱っていく…。 瞳からは光が失われていき、意識もいつ飛んでしまうか分からない状態に 陥ってしまっていた…。 「もうお終いなのかしら…? ふふ、それじゃあ食べる前にちょっとお話をしましょうか」 「ぐ…うぅ…お…はな…し…?」 朦朧とした顔でミロカロスを見つめるニューラ、突然の言葉にただ、 耳を傾けるだけだった…。 |