「止まってよ! ねえ、止まって!」
「…………」

あれからもマリルの必死な努力は続いていた。
彼がどれだけ頑張っているのかは、様子を見ていればよく分かる。

制止を求める声は叫びすぎで枯れ果て、何を言ってるのか分からないほど掠れている。
体に浮かぶ大量の汗が、どれだけの距離を追いかけて来たかを物語った。
今も真っ直ぐに歩き続ける友達を追って、共に藪の中に突っ込み、
出てきたときには擦り傷だらけ……

それは友達も同じだが、マリルの方が意識がまともな分より応えている筈だ。

現に少しでも歩みを遅らせようと、必死に抱きついているが、
小さな腕が今にも力尽きそうに震えている。


けれどもマリルの友達は止まらない。


ひたすら前を向いているだけの目は虚ろで、ときおり何かを呟いたりしながら、
その歩みを決して止めようとはしないのだ。

「うぅ……止まらないよ。どうして何も言ってくれないの?」
「…………」
「だめっ……行っちゃいやだ!!」

何の反応すら示さない友達がマリルは怖かった。
友達がいなくなってしまうかも知れないと思うとそれはより強くなる。
いっそう強く抱きつきながら、マリルは思う……

自分たちが消えた部屋を見た親は、今頃どう思っているのだろうか。
マリルは今の自分の気持ちを重ね合わせて、どれだけ自分が馬鹿だったのかが理解できた。

「ねぇ……一緒に帰ろうよ! みんな、心配しているはずだよ!」
「…………」
「ダメなの、僕の声は届かないの!?」

悲痛なマリルの叫び、それにすら友達は答えない。


もはやこれ以上……マリルには為す術がなかった。



そして、物語の舞台が姿を見せ始めた。

苔生した崖の岩肌にポッカリと口を開けた洞窟。
直ぐ近くには河原があり、洞窟の中へと水が流れ込んでいっているのが見える。
その御陰で中はジメジメしているようで、
近づいただけで周囲が湿っぽく感じるそんな場所であった。

「これが……歌姫の洞窟? この洞窟が……そうなの?」

マリルが恐怖の入り交じった目を、洞窟の中へと向けていた。
此処まで近寄っても、彼には歌姫の歌声は聞こえない。

「あれ? おいらはどうして此処に?」
「えっ?」

もうすぐ洞窟の中へと入っていこうとしていた友達が突然立ち止まり、
何も覚えてないかのように周囲を見渡し始めた。

それを見てマリルの表情に歓喜の笑みが溢れる。

「良かった……戻ったんだね」」
「あれ……どうしたの、それに此処はどこ?」
「え……ええと、そんなことより早く逃げないと!」

キョトンとした顔をしているマリルの友達は、状況がまるで把握できていないようだ。
歌姫の物語の続きを思い出し、マリルは友達の手を強く引っ張る。

……が、

「……声? 声が聞こえる」
「ああ……何も聞こえない! 何も聞こえないよ!!」

再び虚ろな目をし始めた友達に対して、彼の耳に届いているであろう歌姫の歌声を、
マリルは大声で打ち消そうと声を荒げた。

「行かなくちゃ……僕を呼んでる」
「だめ〜! 止まってよ……あっ!」

マリルの手が滑り倒れ込む。
そんな彼に目もくれず、友達はマリルの横を通り過ぎていった。

そして、真っ暗な洞窟が彼を呑み込んでいく。

「うぅ……」

ようやくマリルが痛みを堪え立ち上がったときには、
彼の前から友達は姿を消していた。

「…………んくっ」

マリルは洞窟の闇を見つめると無意識に喉を鳴らす。
友達を助けるためには、マリル自身もこの中に入らないと行けない。

誰も帰ってこなかったと言われる洞窟の中に……

「……行かなくちゃ」

丸いボールがついている尻尾が震える。
短い足が震える。
小さな体全体が歌姫を恐れて震えている。

それでもマリルは洞窟の中へと足を踏み入れていった。
自分の友達を救い出すために。


          ※   ※   ※


洞窟の中はとても暗かった。

マリルなら余裕だが、通路の天井は思ったよりも低く、幅も狭い。
巨大なポケモンでは中に入ることすらままならないだろう。


”ピチャン”


天井から滴り落ちる水滴の音が響く。
近くに川があるせいか、やはり洞窟内にもかなり湿気が籠もっており、
さらには地面がかなりぬかるんでいて、歩きにくくなっていた。

「あっ……あっちから光が」

壁づたいに手をつきながら、マリルが真っ直ぐな通路を暫く歩いていると、
薄暗い通路の先に光を見つけた。
暗闇に怯えていた彼は駆け足でその場所へと急ぐ。

闇の通路を抜け出た先は大きな広場になっていた。

此処が外を流れていた川の終着点なのか、大きな湖が広がっており、
通路よりは湿気が少なく、少しヒンヤリとした冷たい空気が中を漂っている。

天井は吹き抜けになっているせいで、月明かりが直接洞窟の中へと差し込んでいた。
光の入る入り口は小さく、光が届くのは湖の中心にある小島だけ。
それでも輝く光が降り注いでいる様は、とても神秘的であった。

それに思わずマリルは見とれ、通路の影で暫くボーッと立ち尽くすことになる。

「……こんなところが……あっ!」

洞窟の風景に見とれたマリルだが、直ぐに我に返る。
思わず声をあげかけて、手で口を封じた。

彼の目の前に大勢のポケモン達が佇んでいて、それら全てが小さな子供のポケモン達。
子供と言うことを覗けば、タイプや種族は様々で、ポケモン達に共通性はない。


そして、その子供のポケモン達に囲まれているのは……『ラプラス』


その姿は首長竜を想像して貰えば、かなり近い姿をしており、
背中には多くの突起物のある甲羅を背負っている。
体高は本来のラプラスなら2.5mほどが成体の筈だが、このラプラスは明らかに3mを超えていた。
周囲の子供達を見比べたのなら、その大きさがよく分かる。

そして、特徴的なのが肌の色であった。

普通の肌の色は水色の筈なのに、このラプラスは雪のように純白な肌をしている。
その白さは月明かりの中で良く映えていた。

「綺麗……っ! もしかして、あの人が歌姫?」

警戒を深め通路の影に身を隠しながら、マリルはラプラスの様子を伺う。
ラプラスは歌を歌っているように見えるのだが、マリルの耳には未だに歌声は聞こえない。
まるで声のない歌を歌っているかのようだ。

そのラプラスが……マリルに気が付き、彼に目を向ける。

「そこに隠れているのは誰なの?」
「ひっ……見つかった!」
「怯えないで、さぁ……安心してこっちに来て」

とても心に染みいる声……それがラプラスの声だった。
傍へと招く声にマリルは抗う気すら起きず、知らず知らずの内に彼女の元へと歩いていってしまう。
近くに来ると二人の体格差がよく分かる。

ラプラスにとって、マリルなど子供と言うにも値しない。

「ふふ、久しぶりの招かれざる観客は小さなネズミさんね、お名前は?」
「はい。マリルと言います」

不思議な事にマリルは、ラプラスの問いかけに従順に従い答える。
あれほど歌姫を恐れていたはずなのに、今のマリルにはそれが見受けられない。

ラプラスの頭部が間近に迫っても、身動ぎすら……

この美しい声に宿る不思議な力がそうさせてしまうのか、常にかけられる彼女の声が、
マリルの心に警戒心を抱かせないのだ。
うっとりとした顔でラプラスを見つめるマリルの目は、あの時の友達のように虚ろになっている。

「そうね、貴方は……」

何かを探るようにラプラスはマリルの体を舐めるように見つめ、
最後に目をジッと見通す。

そして、徐に……

「いいわ、貴方が今宵の最後の観客……十二番目にしてあげる」
「あ……うぅん…………ぅ……ぁぁ…………」

呟いた瞬間、マリルの体が崩れ落ちた。
その体が地面に打ち付ける前に、ラプラスのヒレが受け止める。

これが歌姫の力の正体。

物語では歌姫の歌には不思議な力があると語られているが、厳密にいえばそれは間違っている。
彼女の歌に力が宿っているのではない。

遠くから選ばれた者を呼び集めるための歌姫の声なき声。
通路の影に隠れたマリルを呼び寄せた優しげな声。
先ほどマリルの意識を奪い去ったささやく声。

そう、ラプラスの真の力は口から紡ぎ出される声に宿っているのだ。

確かにポケモンとして使うワザに『歌う』と言うモノが存在している。
だが、そのワザには一言で相手の意識を奪う力があるだろうか?
恐らく有りはしない。

この純白のラプラスだけが持つ不思議な力。
たった一言、声を口にするだけで……

「いい子ね、さぁ、みんなと一緒に私の歌を聴いて」
「…………」

紡がれた声を聞いた者は、こうなるのだ。

立ち上がったマリルはラプラスの言葉に無言で頷くと、
おぼつかない足取りで、周囲にいる子供達の元へと歩いていき輪に参加する。
それを見届けたラプラスは満足そうに笑うと湖に飛び込んだ。
水の中を泳ぎ湖の中央の岩場に這い上がっていく。

すでに十ニ匹の小さな子供のポケモン達が集まっている。
今宵の観客はこれだけで十分だった。

「ふふふ、みんな静かに聞いてね、私の歌を何時までも」


歌姫の講演……ラプラスの歓迎が始まる。
洞窟の中で彼女の歌声のが木霊する……岩の壁に反響し音楽を奏でた。
とても神秘的な歌に魅了された観客は陶酔を深め、歌声にあわせてユラユラと体を揺らし始める。


時間が経つと共に、ラプラスと子供達の周囲に少しずつ変化が起き始めた。
子供達の体から光の靄が湧き上がり、それがラプラスの周囲に集まって光の音符になっていく。

そして、彼女の歌に聴き入っていたポケモンの一匹が、いきなり立ち上がると水の中へと入っていった。

そのあとに続き、また一匹……更にもう一匹。
水が嫌いなポケモン達ですら、水の中へと入るのを躊躇しない。

歌姫の歌声に誘われて、次々と子供のポケモン達は水に入り彼女の元を目指す。

最後に輪に加わったマリルは最後尾で水の中へと飛び込んだ。
その数匹前にマリルの友達もラプラスの元へと向かっている。


その間に……先頭を行っていたポケモンが最初にラプラスのいる岩場へと這い上がった。
丁度それと同じくして、歌い終わったラプラスがそのポケモンへと目を向ける。

「ふふふ、今宵の講演は如何でした」
「…………」

ラプラスの問いかけにその子供は、口を動かし何かを答えていた。
ただ、声は発せられず、口がパクパクしているだけ……

これでは会話が成り立たないように思えるが、ラプラスには通じているようだ。

「……そう、有難う」

満面な笑みがラプラスの優雅さも伴って、より綺麗な彼女を見せてくれる。
それからも二人の間で幾つかの会話が交わされた。


”ピィンッ!”


不意に彼女の周囲に漂う光の音符の一つが砕け散る。
砕けた音符は細かな光の粒子になって、ラプラスの胸元の方へと引き寄せられるように漂い……
少しずつ彼女の体に吸い込まれていった。

「……ッ!」

砕けた音符が全てラプラスに吸収された途端、子供のポケモンが体を痙攣させ始めた。
肺から全ての空気を吐き出そうとしているかのように、口を大きく開き……目を一杯に見開く。

そんな状態が十秒にも満たないぐらい続き……眠ったように動かなくなった。
体からは力が抜けすり寄っていたラプラスの胸元から崩れ落ちる。
静かに呼吸をしているところを見ると、普通に眠っているように見えるが……

その前の発作を起こしたような様子を見る限り、ただの眠りではあるまい。
ラプラスは顔を近づけると、子供の耳元で囁きかけ、

「さぁ、もう……夜も遅いわよ。ぐっすりとお眠りなさい……永遠に」


”ハムッ……ジュルッ”


いきなりラプラスは子供を喰った。

彼女にとって小さな子供など一口で事足りる。
大きな口は易々とその体を口に収め、楽に飲み下した。


”ゴクリッ!”


喉が動いた瞬間に生々しい音が洞窟の中で響く。
子供とはいえ、さすがに喉の中へと送られるとラプラスのそれを大きく膨らませた。

蠕動を繰り返す食道の内壁が子供を奥へと押しやっていく。
食道の内壁と、子供の体が擦れ音を立てて、ラプラスの中へと引きずり込まれていった。
暫くするとラプラスが僅かに身を震わせる。

「んっ」

眠ったままの子供は自分に何が起こったか、悟ることなく彼女の胃に収まってしまった。
ラプラスのお腹が僅かに膨れる。
そのお腹に二人目の子供がすり寄っていた。

「君も楽しんでくれたかしら……そう、良かったわ」

ラプラスが子供と話している間に、再び音符が砕け……光の粒子をラプラスが吸収した。
やはり先頭の子供と同じように体を痙攣させ……眠る。


”ガブッ……ズッ………ゴクリッ”


ラプラスは同じようにその子も喰らった。
また、次の子供も、その次の子供も同じようにして喰われていく。

それらの手順は一切変わらず、ラプラスの食事はとても優雅に行われた。
子供に囁きかけた後、その子の音符を砕き吸収してから、
殆ど音もたてず、頭から丸呑みにしていく。

口に含んだ後はゆっくりと舌の上を滑らし、喉の中へと誘うとラプラスはその時だけ音をたてる。
頬張った子供を飲み下す嚥下音だけは消そうとはしない。


最初の子供をラプラスが丸呑みにしてから、
ほんの数分で、彼女のお腹が二回り以上にまで大きく膨らみんでいた。

「んっ……美味しい」

これだけの大量捕食、すでに半数を超えるポケモンを呑み込んだラプラスの息が少し荒くなる。
子供とはいえ立て続けにこれだけ喰らえば、お腹も随分と張っているだろう。
そろそろ満腹感も襲ってきているはずだが……
すでに次の子供が、ラプラスの体にすり寄り彼女の声を待っていた。

「ふふ、次は貴方ね……私の歌はどうだった?」
「…………」

問いかけるラプラスに子供達は皆、最初の子供と同じようにパクパクと口を動かしているが、
やはり口から声が発せられることはなかった。

「嬉しいわ、貴方も優しい子ね……」
「……っ……ぁ…………」

やはり同じように音符が砕かれ、ラプラスにすり寄っていた子供が眠りについた。
最初からそうだ……音符を砕かれ吸収されると子供達に異変が起こる。

ラプラスの周囲を漂う音符の正体、それは歌に喰われていた子供達の意識。

……つまり、心なのだ。

あるいは魂と言っても構わないだろう。
心を喰われた子供の体は、ただの抜け殻で、ものも言わず見た目は寝ているように見える。
しかし、それは二度と目覚めることのない眠りだった。

最後には抜け殻の体もラプラスに喰われ、
彼女に身も心も捧げた子供は、永遠に彼女の体の中で眠り続ける運命。

すでに多くの子供を収めた彼女のお腹は醜く膨れあがっており、それはなおも大きく膨れていく。


”ゴクッ!” 


”ンクッ!”


続けざまにラプラスの喉が二度鳴り、二人の子供が新たに呑み込まれた。
さすがにきつくなってきたのか、食べ方にやや乱れが見える。

口の端から涎が僅かに零れ、喉の中へと滑り落とした子供の喉越しに酔いしれるかのように、
ラプラスは潤んだ目で上を見上げ、太い首を弧を描くように逸らす。
それによって喉の中を通っている子供が締め付けられ、膨らみがいっそう大きく現れた。

「んっ……あぁ……」

半開きになったラプラスの口からは、気持ちよさげな吐息が漏れでた。

先に呑まれた子供が喉の内壁を押し広げているせいで、
後から呑まれた子供の膨らみが、ゆっくりと前の膨らみに追いつこうとしている。

大体喉の真ん中辺りで、二つあった膨らみは一つになり、大きな膨らみとなった。
子供達は二人で絡み合い……胃の中に滑り落ちる。

「んんっ……ぁは、すごく美味しい」

少し無理をした分だけ体に走る衝撃は大きいようで、ラプラスが大きく身悶えた。
口から零れていた唾液が更に溢れて、彼女の首を伝う。

新たに入り込んだ子供達は、先に呑まれていた子供を押しのけ、
二人の時よりいっそう複雑に絡み合った。
その動きがラプラスの胃袋の働きをより活発にして、大量の粘液を湧き上がらせる。
それらの体液が子供達の全身に絡みつき、体の表面に膜を形成していった。

粘つく液体が泡立つような音も……もう暫くすれば、いっそう聞くに堪えない音になるだろう。

「ん……さぁ、次は君ね」

そして、ラプラスは次の子供に取りかかる。
その子にも同じ手順を繰り返すラプラスからは、何処か普通の生き物とは異質を感じさせる。

それをもっとも強く感じ取っているのは彼だった。



          ※   ※   ※



「ひぃっ ひぃっ……嫌だ。もう、聞きたくない……なんだアイツは」

ラプラスのいる場所からは死角になる、岩場の影。

その場所に隠れているのは『リザード』

耳に手を当てがい、聞こえてくる音を封鎖しようとしている。
恐怖に彩られた表情は限りなく青く染まり、冷や汗を全身に滲ませていた。

「あの声……あの声だよ。あの時僕らを呼んだのは……」

目には本物の涙が浮かんでおり、彼の脳裏に思い起こされた記憶は彼を苛む。
忘れようとして、忘れることが出来なかった声を、もう一度聞かされたのだから。

そして、自分の弟の最後の末路を知ってしまったのだから……

「ああ、ヒトカゲ……お前もああやって……」

ラプラスに喰われていく子供達に、リザードは自分の弟の姿をダブらせる。
洞窟に入っていく弟の後を彼は追いかけられなかった。

今のように怯えて縮こまって逃げ出した。

『大丈夫……大丈夫なんだ。ヒトカゲは帰ってくる』と、必死に己を誤魔化して、
巣穴で夜が明けるまで過ごしたあの日……
ついにヒトカゲは帰えらず、リザードは弟を捜そうともしなかった。

その理由は今のリザードを見ればよく分かる。
彼は本来『臆病者』なのだ。

それでも彼がここに来たのは、ルリリと交わした約束の為。
泣き叫び、マリルの後を追おうとするルリリを説得するにはそれしかなかった。

その結果がこの体たらく。

「うぅ……ごめん、俺には助けられそうにない」

リザードの言うとおり、この様子ではたとえ動けたとしても、
マリルを助けることなど出来やしないだろう。

その間にもラプラスは新たな子供を飲み下していた。


”ゴクッ”


その生々しい音にリザードは逐一反応して、体を震わせる。
それから必ず、呑まれた子供がマリルでは内容にと祈りながら、岩陰からラプラスの様子を伺う。

すでに子供の数は二つにまで減っていた。

残っているのはマリルとその友達。
非情なようだが、リザードはまだマリルが食べられていないことに安堵した。

どうやら先にマリルの友達の方が、ラプラスの餌食になりそうだが……
マリルも直ぐに後を追うことになるだろう。

それを助けるのが、ルリリと交わしたリザードの約束なのに……

「はぁ、はぁ……あの子は確か、マリルの友達?」

躊躇無く友達を救うため、マリルはそのあとを追った。
その後ろ姿を眺め、リザードは自分の弟であるヒトカゲとダブらせつつ……
マリルの勇気を羨ましいとも思っていた。

年の差はさほど変わらないが、あの小さな体のどこにあんな勇気が隠れていたのか不思議だった。
最初に自分と出会ったときはあんなに震えていたのに、
ここぞと言うときは勇気を出せる。

それがとても羨ましかった。

ずっとリザードは後悔していたのだ。
あの時逃げ出した自分が許せなくて、でもどうしようも出来なくて……

一度でいいから、リザードはあんな勇気が欲しかった。

「僕は……臆病者……」

未だ表情は青ざめている。
汗をかいている手を開き鋭い自分の爪を見つめ……リザードは……


          ※   ※   ※


「ん……そろそろ、きつくなってきたわね?」

リザードがまごついている間、ラプラスは次の子供の体を舐めるように見つめていた。
マリルの友達は少し平均より大きめで、食べ応えもあるだろう。
さぞかし彼女の膨れたお腹には堪える筈だ。
ラプラスは自分のお腹を見つめ、軽く揺らしながらため息をついている。

その仕草はお腹の容量に、まだ余裕があるか確かめているかのようだ。
そうまでして食べなくてはいけない理由は、一体何なのだろうか?

すでに消化も始まっているようで、蠢く胃壁に中の子供達がかき回され、
お腹の膨らみが蠢いている様は、慣れぬモノには身も毛もよだつ光景となっている。

「ふぅ……何とかなりそうね」

大きな口から漏れるため息は、満腹のせいか、醜悪に膨れあがったお腹のせいか……
ラプラスはマリルの友達に舌を這わせ……

「ふふ……それじゃ、貴方も私の歌……」


”ガギィッ!”


途中でラプラスの声が途切れ、何かがぶつかり合う音が響く。

「そんなっ……何で、気づかれ……」
「あらあら、二人目の招かれざる観客ね」

余裕のある笑みがラプラスの顔に浮かんでいる。
今までの疲れたような様子が、演技だったのかは分からないが、
膨れあがったお腹をしているにもかかわらず、彼女は驚くほど俊敏に動いた。

背中の甲羅に易々と必殺の『切り裂く』を防がれ、リザードの顔が驚愕と恐怖に歪む。
そんな彼に向かってラプラスは『水鉄砲』を撃ち出した。

口から吐き出された水流が、まともにリザードの腹部に直撃する。

「ゴフッ」

体がくの字に曲がり、リザードはそのまま数メートルはじき飛ばされた。
見た目の外傷は無いが、受けたダメージは大きい。
炎タイプのリザードに取って水の攻撃は、易々と致命傷に繋がってしまう。

更に地面を転がり、のたうち回るリザードの元へラプラスはゆっくりと這い寄っていく。

「ふふ、私の攻撃はさほど威力はないわ、そんなに苦しまなくても大丈夫よ」
「ああ……来るな……来ないで……」

ラプラスの言うとおり、リザードの体はまだ動かすことが出来た。
しかし、初撃を防がれては彼に勝ち目は無い……

「本当なら湖へと打ち落とすことも出来たのよ、感謝するのね」
「ひぃっ!」

目の前まで来たラプラスの頭部を見て、リザードは目を閉じた。
体も丸め無防備な姿を晒している。

「ふ〜ん……貴方はダメね」
「……え?」
「貴方は要らない、運が良かったわね……」

何を言われているのか、リザードには訳が分からなかった。
ただ、自分の命が助かったそれだけは分かる。

もはやラプラスはリザードに興味も無いのか、見向きもせずに元の場所へと戻っていった。

「さぁ、要らない邪魔が入ったけど、次はあなたの番よ」
「…………」

この騒ぎの中、律儀に微動だにもしなかったマリルの友達に、
ラプラスの口が開かれ……迫る!

食らいつく寸前、怯えるリザードに軽く目を向け、
自身の食事の風景を見せつけるかのように、ゆっくりと口を閉ざした。
閉じた口からは、マリルの友達の尻尾がはみ出て見え……


”ゴクリッ!”


音をたててラプラスが飲み下すと、はみ出ていた尻尾が引きずられるように
彼女の口の中へと吸い込まれていった。

ついにマリルの友達まで、ラプラスの餌食に……

リザードはその一部始終を、情け容赦なく見せつけられた。
子供を頬張ったラプラスの頬が膨れ具合を、その膨らみが徐々に太い首の方へと移り変わり、
彼女が喉を鳴らし、丸呑みにしていくのを……

「……うぁ……ああ」

無様に地べたに這い蹲り、今もラプラスの喉を下る子供の膨らみから目がはなせない。
近くで見ていると膨らみの凹凸から、呑まれた子供の姿が想像出来てしまう。

思わず目を閉じたリザードにラプラスの声が飛ぶ。

「貴方って臆病なのね。でも、見なくちゃダメよ?」
「いやぁ……もう、見たくない……」

その声の力により、ラプラスの喉を下る子供の膨らみを嫌でも目で追わなくてはいけなくなった。
心の中でどれだけ嫌だと叫ぼうが、体が意志に反応しない。

胃袋を目指し移りゆく膨らみを、リザードは最後まで見つめ事となる。

「ぐぅっ……うぇぇ……ひっ……ひっ!」

ついにリザードは発狂寸前にまで追い込まれた。

今のリザードの目には、先ほどまでの光景が目に焼き付いており、
それが脳裏でフラッシュバックを起こしていた。
心のダメージが体にまで影響を及ぼし、まるで発作を起こしているかのように体の痙攣が止まらない。
断続的に続く、浅く短い呼吸音から察するに、呼吸も満足に出来ていないようだ。

……何度も、何度も繰り返されるそれに、のたうち回る。


”ベチャ”


そんなリザードを一瞬にして現実へと引き戻したのは、彼の顔に這ったラプラスの舌。


「……うぁ……?」
「ふふふ、壊れたらダメよ? 貴方には最後まで見届けて貰わないと……」
「……嫌だ……もう見たくない!」

声の大きさに反して、体の動きは凄まじく鈍い。
リザードの尻尾の先に灯る炎の大きさ、とても小さくなったそれが彼の心を物語る。

歌姫の物語が本当なら、犠牲になるのはあと一匹……
彼女の胃袋の中にはすでに子供のポケモンが十一匹も収まっており、
リザードはラプラスによって拒否され、餌食になることは免れている。

必然的に残っているのは……

「叫んでも駄目よ……貴方が私の前に現れたのはこの子のため、そうでしょう?」
「な、何で……それが分かる……?」

残された子供、マリルの背後にラプラスの頭部が隠れる。
殆ど丸見えに近いが、その表情は見えない。

「教えてあげる……でも、何で貴方を食べないか分かる?」
「そんなの……分かるわけ無い……考えたくない」
「答えは簡単よ、貴方のこと覚えてたから」

マリルの背後からラプラスの顔が持ち上がり、口には何かを咥えていた。
形からしてマリルの尻尾……
ラプラスの頭が高く持ち上がるにつれ、マリルの体も引っ張られ持ち上がっていく。

「貴方、去年……コノ近くにまで来てたわよね?
 覚えてるわよ、私のあの声が届く子は私と波長が良く合うから」
「波長……?」

オウム返しにリザードが問い返す。
その問いかけに、ラプラスは尻尾を咥えたマリルを揺らして弄びながら、
まったく口を動かさずに答えを返す。

「そう、波長……子供達を呼び寄せるあの歌はね。
 誰でも歌を聴くことが出来る訳じゃないの……その意味が分かる?」

口を閉ざしたまま喋るなどと、かなり器用な芸当だがラプラスはそれを容易くやってのける。
声はハッキリとリザードにも理解できたが……

分からないと沈黙で返すリザードに、ラプラスは続きを語る。

「波長が合うと言うことは、声が通じやすいと言うこと……
 私の声に同調しやすいと言うことは、心の中まで私に身透かれやすい言うこと……」
「うぁぁ……じゃあ、俺のこと……?」
「ええ、全部分かってるわよ。
 貴方がどうして来たのかも、この子との出会いも全部……」

その声にリザードは耳を塞ぐ。

「止めて……もう聞かせないでくれ! 覗かないでくれ!」

ラプラスが並べた言葉はそれだけでは止まらない。
様々なリザードの心の中身が、さらけ出されていった。

そして、極めつけが……

「ふふふ、貴方に伝えておかないことがあるの……
 貴方の弟のヒトカゲは、とっても『美味しかった』わよ」
「ああ! ああああああ!!」

一番聞かされたくなかった言葉、リザードは絶叫をあげ這い蹲った状態から跳び上がり、
ラプラスに向けて突進した。
お互いの距離は元々数メートルもない、瞬く間に間合いは詰まる。

再び振り上げられたリザードの爪が振り下ろされ!


”ガシュッ!”


舞い散ったのは光の粒。
月明かりで綺麗に輝くそれらは氷の欠片だった。

「まだそれだけ動けるのなら、壊れてないわね安心したわ」
「くうぅ……何で、何で届かない!」

更に二度三度、リザードは爪を振るう。
それらはラプラスに触れる直前で止まり、氷の粒を巻き上げた。

二人の間には一枚の氷の壁が築かれている。

リザードの爪が幾らそれを破壊しようとも、その度に壁が再生し攻撃は届かない。
それにラプラスの目が常にリザードへ注がれている。
彼女にはリザードの爪も炎も驚異では無いというのに僅かな隙もない。

「ふふ、これで今日は食べ収め……
 貴方はそれを最後まで見届けるの、そして、その罪で苦しむといいわ」

ラプラスの口が開かれ、マリルに舌が巻き付くと肩口から咥え込む
そして、ラプラスはマリルの小さな体をひと思いに呑み込もうと、更に大口を開け……


「お兄ちゃん!」


洞窟の中に響き渡る勇ましい声。
今まさにマリルを喰らおうとしていたラプラスがそれを止める。

「……ふぅ、今宵は招かれざるお客が多いわね」
「お、お兄ちゃんを返してっ!」
「あら……今度は小さなお客さんね、もしかしてこの子の弟かしら?」

態とらしい声を出すラプラスだが、明らかに彼女の興味が乱入者に移った。

ズルリと口からマリルが滑り落ち、彼女は涎で汚れた自分の口回りを舌で拭う。
彼女の余裕から来るのだろうが、優雅に振る舞ってはいるものの、
醜悪に膨らみきったお腹がそれを台無しにしている。

そのお腹が相手に与える威圧感はかなりのもののはずだ。
だが、乱入は精一杯小さな体を大きく見せ……『ルリリ』は声を張り上げる。

「返してっ! ねぇ、返してよ!」
「ふふ、勇ましい子ね。今はまだ眠っているだけよ」

ラプラスに言われてルリリが兄のマリルへと目を落とす。
言われたとおり、マリルは眠っているだけのようだ。

「ホントだ……お兄ちゃん!」
「ダメよ、まだ返さない」
「あっ!」

思わずマリルの元へ駆け寄ろうとしたルリリの足下に、ラプラスの『水鉄砲』が打ち込まれる。
力が弱められたそれだが、その水しぶきだけでルリリは後ろにはじき飛ばされた。

「あぅ……いたぁ〜い」

擦り傷だらけになった体を横たえ、ルリリは目に涙を浮かべる。

「うふ……貴方も美味しそうね」
「やだぁ、お兄ちゃん……返してぇ……」

ルリリは近寄ってきたラプラスの鼻先を叩く。
少しだけ赤くなった鼻先を舐め……ラプラスはルリリの願いに条件を突きつける。

「いいわ貴方のお兄ちゃん返してあげる。だけど、変わりに貴方を頂かせて貰うわ」
「ぼ、僕を……?」
「そうよ、構わないわよね。大好きなお兄ちゃんの為だもの」
「う……うぅ……」

幼子に突きつけたラプラスの条件……

その気になれば皆を喰らってしまえる立場である彼女の提案だと考えると、
ある意味それは破格の条件なのかも知れない。
ただ、この交換条件はラプラスが気まぐれで言い出したものではなかった。

十二の子供を喰らう歌姫……その言葉の通り十二の子供をラプラスは喰らう。
だが、それ以上喰らう事は許されない。


ラプラスはある理由で行動を縛られている……それを破ることは許されない。


「何を迷うことがあるの? 早くしないとお兄ちゃんは私が……」
「あっ……ま、待って!」

勿論、そんなことはルリリ達は知る由もない。
ラプラスも、それを教えはしないが……

それさえ満たされるのなら、彼女は誰を喰らってもかまいはしなかった。

「ふふふ、もう我慢できないわ……」
「やっ! だめー!!」

今にもマリルを呑み込もうと開かれたラプラスの口の前に、ルリリが立ちふさがる。
考える時間を削り取られ、幼子なりにも必死に考えて出した答えは……

「……うん。お兄ちゃんを助けて」
「いいのね?」
「いいの……ぼく、お兄ちゃんが大好きだから」

それがルリリの思い。

ずっと一緒にいたから……遊ぶときも、喧嘩するときも、無茶をするときも。
ルリリにとって、誰よりも近い存在がマリルだった。
その兄が助かるのなら、苦しい思いをしても耐えられる。

マリルがリザードにルリリを託した理由も同じ。
それは二人とも同じ事を考え……同じ結論に至ったから。

どちらもお互いに生き残って欲しいと思っている。
だから二人が出した答えは愚かだった。
どちらがかけても、残された方は悲しむ事は変わらないのに……

そして、それを二人に強要させた元凶が、悪魔が……笑みを溢し口を開く。

「ふふふ……なら、返してあげる」

青白くラプラスの体が光り輝くと、マリルの体も光輝き体が浮かび上がる。
そのまま運ばれたマリルはリザードの元へ……

その頃には疲れ果てて、その場に座り込んでいたリザードが戸惑いを浮かべる。

「はぁ……はぁ……なんで……俺のところ…………に?」

激昂するままに、全てを出し尽くしたリザードの声は荒れており聞き取りづらい。
そんな彼にラプラスが言い放った言葉は……

「見届け人は貴方、全てが終わったら貴方がその子を連れ帰るといいわ」
「お兄ちゃん!」
「だめ、貴方はあっちには行かせない」

ラプラスの巨体がルリリの道を遮り、マリルの元へは行かせない。
最後の別れすらさせないつもりなのだろう……マリルを返した代償を即座に要求した。

「さぁ、今度はあなたの番よ。代償を差し出しなさい」
「……うん」

拒否することはもう許されない、ルリリは自らラプラスの元へ……
その時……一度だけマリルとリザードの方へ顔を向けると、

「お願い……リザードさん、お兄ちゃんを守ってね」
「あ……俺は……くそぅ……」

ルリリの言葉にリザードの腰が僅かに浮く。
直ぐにラプラスの視線が彼を貫き、それ以上動くことを許るさない。

そもそも、すでに彼に力が残されては……


その間にもルリリはラプラスの目の前で立ち尽くし、覚悟を決めたように目を閉じていた。
とても小さな体にどれだけの勇気が詰まっているのか、
もうすぐ食べられてしまうというのに、ルリリの体に震えは無い。

「じゃあ……頂きます」
「……お兄ちゃん、ごめんね」

随分と手間取ったが、ラプラスは最後の食事にありつこうと必要以上に口を開く。

僅かな月明かりの中では、口の中は真っ暗にしか見えない。
だが……真っ暗な洞窟に潜むのは、細かく鋭い牙、唾液に塗れた舌。
それらがルリリを喰らおうと近づいていく。

傍観者となったリザードは、為す術もなくそれを見つめ……



(ああ……俺は……俺は)

無様な自分が悲しくて、リザードの頬を伝い涙が溢れんばかりにこぼれ落ちる。
結局何も出来ない、目の前で進む残酷な光景を止められない。


『本当に?』
『本当に出来ないのか?』
『無力な自分が嫌で、進化して強くなったんじゃないのか?』


心の奥……リザードに幾つかの言葉を投げかける、もう一人の自分。
涎を僅かに滴らせ、ルリリに迫るラプラスを凝視しながら、リザードはもう一人の自分に反論する。


(だって……出来ない。出来なかったじゃないか)


『覚悟が足りないんだ。
 もっと早く、もっと力を込めた一撃を勇気を込めて』
『そして、今度こそ助けるんだ……弟を!』


何かがリザードの中で弾ける。
だが、すでにラプラスの口はルリリを覆い、今にも閉じられそうになって……
もはや一瞥する意味もないとラプラスはリザードから視線を外す。

「ああ……ああああああ!!」

体を縛っていた拘束が解け、リザードは走る。
半ば発狂したかのように叫び走る彼の目から、こぼれ落ちた涙が綺麗に月明かりで輝いていた。

限界を遙かに超えた力で振るわれた、リザードの爪は炎を纏って振り下ろす!
しかし、それを遮るように不可侵な氷の壁が築かれた。
すでにラプラスはリザードの突進に気が付き、余裕のある笑みを浮かべている。

構わずリザードはそれに爪を打ち付けた!
今まで全ての攻撃をはじき返していた壁が砕かれ、炎の爪が……届く!


”ザシュッ!”


洞窟の中で響く何かを切り裂いた音。
直ぐに身も毛もよだつような悲鳴が木霊した。

「いやぁぁぁっ! 痛い……痛いっ!」

鋭い爪に顔を抉られ、激痛と灼熱するような感覚がラプラスを襲う。
叫ぶと同時にルリリを吐き出し、苦痛に身悶えしながら湖の中へ飛び込んでいった。

歌姫は洞窟から去った。

しかし、顔を薄く抉っただけでは深手とはいえない。
ラプラスは直ぐに戻ってくるだろう。

「はぁ! はぁ! い、今のうちに……」

捨て身の一撃を放ったリザードは息も絶え絶えになっていた。
もはや何も考えず残された力を使って体を動かす。
吐き出されたルリリを受け止め、直ぐにマリルを抱えると一目散に洞窟の外を目指した。

両脇に抱えるマリルとルリリは共に意識が無い。
だが、リザードはそれを確かめる間も惜しみひたすら走り続け……


”ガッ! ドサァッ!”


木の根に足を引っかけ転んだときには、森の出口近くまでたどり着いていた。







 

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