そして、当日の夜…… キツネの店主はやっとの思いでお店の前まで、 運び終わった器の数々を冷や汗を浮かべて眺めていた。 「コン…ちょっと大きすぎる気がするコン。 でも、あの人はそろそろ……これぐらいじゃないと、 大変なことになるって言ってたコン。何で分かるコン?」 もし頭から被ってみたら自分の体が、 スッポリと入り込んでしまいそうな器の数々を、 頭を傾げて見ながら考え込むキツネの店主さん…… 結局その理由は分からなかったが、 お店を建てた時に一緒に作ってもらった大きな倉庫にある 大きな食器棚に汗だくになりながら、何度も往復して器を並べていくのだった。 そして、一番大きな器を台車に乗せて、運ぼうとしていたとき、 ドッシーン!! 「コ、コンッ! 地震が起こったコン!? 大変何かの下に隠れるコン!!」 凄まじい轟音と共にグラグラと揺れる地面に キツネの店主さんは、思わず器を乗せていた台車の下に潜り込んだ。 しかし、それっきりで地面が揺れることはなく、 シーンと辺りは静寂に包まれて…… 何処からか、ザッザッザッと地面を蹴って走る音が聞こえてきて、 それがキツネの店主に近づいてきた。 そして、 「きゅぴぃ! キツネさんまた来たよ!」 そう元気に話しかけながら駆け寄ってきたのは、 朝にキツネの店主が助けてあげたチョコボだった。 今度は、胸の辺りに真っ赤な鞄を付けている。 チョコボの姿に赤い鞄がとても似合っていて、 いつも以上に可愛く見えていた。 「良く来てくれたコン、チョコボさん、こんばんはコン。 ところで、知り合いの人はどうしたコン?」 器を運ぶのは後回しにして、キツネの店主は台車の下から這い出すと、 テクテクとチョコボの方へ歩いていく。 それを不思議そうに頭を下げて見ているチョコボに、 誤魔化すようにちょっと照れたような笑い顔で話しかけた。 その時、キツネの店主の上から声が振ってきた。 「此処なの……チョコボさん?」 「クエー そうだよセイリュウさん。 ここのうどんって、とってもおいしいんだよ。」 そう言って、チョコボが首を上に向けて話しかけた相手…… その生き物は……とても大きな白竜だった。 首をスーッと地面に向けて下ろしてくると、 地面に立っているチョコボの頭辺りで、 セイリュウと呼ばれた竜の大きな頭が宙に制止して浮いる。 そのセイリュウの顔を、 キツネの店主が惚けた目で見つめていて……ポツッと呟いた。 「ほ、本当に大きな知り合いコン…… あんなに大きな竜さんと友達なんて、チョコボさん凄いコン……」 セイリュウの頭に目が釘付けになっていた、 キツネの店主の目が、少しずつ動き出してその巨体の全身を見通していく。 大きな頭の着いた太い首…… その先には、純白の鱗が沢山並んでいる大きな体。 そして、3m程の……いや、それ以上の長い尻尾がユラユラと不規則に揺れていた。 普通ならその姿だけで威圧されてしまいそうな竜の姿。 そのセイリュウの頭に、チョコボは平気で…… とても嬉しそうに体をすり寄せていく。 その好意にセイリュウは……グゥルルル……と 気持ちよさそうに喉を鳴らして、チョコボを見ていた。 「きゅぴ、それとセイリュウさん。 このキツネさんが、たおれていた…ぼくを助けてくれたんだよ。」 「そうだったんだ……そこのキツネさん。 私のお友達が迷惑をかけました。助けてくれてありがとです。」 セイリュウにとっては、微笑みを浮かべて、 親しみのある口調で話しかけたのだが…… 初めて竜を見たキツネの店主は、さすがに腰が引けていた。 せわしなく尻尾がフリフリと揺れる動きが止まらず、 おどおど戸惑いながらセイリュウの深紅の瞳を見つめている。 その様子にセイリュウが深紅の目を曇らせた。 セイリュウさんの僅かな変化に気が付いたキツネの店主は…… 自分の尻尾をギュッと握りしめて震えを止めると覚悟が決めた。 「コ、コ、コン。 怖がって、ゴメンね……大きな竜さんコン。 初めて……竜の人がお客に来たから……とってもビックリしたんだコン。」 「そっか……いきなり私が出てきたせいで、 驚かせてちゃったか……ごめんなさい、キツネさん。」 正直に自分の心内を打ち明けたキツネの店主に すまなさそうに話しかけたセイリュウは、お詫びの印に…… ……ペロペロ 口から舌を出して、キツネの店主を何度か優しく嘗めてあげた。 「コ…ふわぁ…ぅ…ンッ…ぅぅん…… あっ…ぁっ……コォ〜ン!」 竜に優しく舐められる…… まず普通では体験できない事を、 キツネの店主はその身をもって全身で体験するはめになった。 何度も嘗め回される度に、喘ぐ声をあげ続け…… 最後に高々と感極まった声で鳴くと、その場でバッタリと倒れてしまい、 何故か気持ちよさそうに身震いしながらヒクヒクと振るわせている。 「あっ……チョコボさん……ちょっとやりすぎちゃった♪」 それを冷や汗を浮かべて、不味いと思ったセイリュウさんは、 思わずチョコボさんに振り向くと、誤魔化すように弾んだ口調で話しかけた。 しかし、チョコボは…… ジッとしたまま、たおれてしまったキツネの店主を凝視して、 「ぴぃー! キツネさん大丈夫!」 急に時が動き出して、慌てて駆け寄る。 クチバシをうまく使って、キツネの店主をユサユサと揺り動かした。 そのおかげか、キツネの店主は何とか正気を取り戻して、 ゆっくりと身を起こすと落ち着くように一息ついた。 「ふぅ〜もう大丈夫コン。……チョコボさんありがとうコン。 ……竜さんも余り気にしないで欲しいコン。」 とてもすまなさそうに上目遣いに見つめてくるキツネの店主に セイリュウは、少し慌てながら、 「そんな……私が悪かったんだから謝らなくてもいいのよ……ゴメン。 でも、ありがとう。その言葉を素直に受け取っておくわ♪ ……それと……これが改めて、お詫びの印ね♪」 最後の言葉と共にセイリュウは、 改めてお詫びの印に、キュッとキツネの店主を抱きしめた。 セイリュウのとても柔らかな、お腹に体を押し付けられているキツネの店主さんは、 最初は慌ててジタバタしていたが、次第にその感触に顔が真っ赤になっていって…… 「コッ……ゥン。 竜さんのお腹気持ちいい……コン。」 「んっ……ありがと。それとキツネさん、出来たらあたしのこと…… セイリュウって呼んでくれると嬉しいな。」 ダラ〜っと体の力を抜き身を任せているキツネの店主に 微笑みかけているセイリュウ。 その様子をチョコボさんは横から見ていて、 「きゅぴ〜……キツネさんが、ちょっと……うらやましい〜」 少し自分もやって欲しそうに2匹をジッと見つめていたのだった。 それから……1時間…… やっと、あの騒動が収まって何時ものような雰囲気が戻るまで、 それだけの時間がたってしまって、辺りはすっかり暗くなっていた。 「それじゃ、待っててコン。 今からセイリュウさんとチョコボさんに 当店の自慢の『キツネうどん』を作ってくるコン!」 ドンッ!と自分の胸を叩いて、 厨房に駆けだしていったキツネの店主。 勿論、お店の中に入れる訳のないセイリュウはお店の外で、 ちょこんと近くにあった大きな木を背もたれにして座っている。 そのすぐ側で、チョコボが丸くなると眠たそうにふわ〜っと欠伸をして、 うどんが出来上がるのを待っていることになっていた。 「……チョコボさん。 一度キツネさんのうどん食べたんだよね? どんな味だったの……美味しいっていうのは聞いたけど具体的にはどうなの?」 「きゅ…ぴ〜…? 何〜……なんて言ったの、セイリュウさん……?」 「眠いのチョコボさん……何でもないから気にしないで。 うどん…出来たら教えてあげるから、眠ってもいいよ。」 今にも眠ってしまいそうなチョコボの頭に、 そっと手を置いてゆっくりと撫でながらセイリュウは優しく話しかけた。 その撫でられる行為が気持ちよかったチョコボは、 段々と目をショボショボさせ始めて、最後に『きゅ〜』と幸せそうに鳴いた後に眠ってしまった。 「ん〜……チョコボさん、可愛いわね♪ それにしても、さっきのキツネさんって美味しそうだった……」 さっきキツネの店主を舐めた時…… なかなか美味しい味がしたので、 ちょっと食べてみたく思っていたセイリュウは、 「溶かさないから、食べさせてって言ったら食べさせてくれたりして…… えへへ……そんなわけ無いか。」 そう言いながらもジュルリと舌なめずりをしていて、ちょっぴり…… そうだったらいいなと期待して、試しに本当に聞いてみる気になってきていた。 そんなことを思われているとは、知るよしもないキツネの店主は、 一生懸命に例の巨大な器を満たすだけの『キツネうどん』を作っていた。 大きなセイリュウのために、麺の太さもそれ相応…… キツネの店主にとっても、 これだけのうどんを作るのは初めてのことで大分手こずっていた。 しかし、それでもキツネの店主は今持っている技術を出し切り、 とうとう巨大な『キツネうどん』を作り上げることに成功したのだった。 「はぁ、はぁ…コン。 やっと完成…… 早く冷めないうちにセイリュウさん達の所へ持って行かないとコン。」 さすがに疲れ切っているキツネの店主だったが、 せっかくのうどんを冷ましてはいけないと、器を乗せた台車を必死に押して運び出す。 自分の体より大きくて重いその器…… それをさらに汗水を流してやっとの思いで、 2匹の元へと運び出した後、キツネの店主は、 器に寄りかかるようにそのまま倒れ込んでしまった。 「コ、コン……お待たせしましたコン。」 「だ、大丈夫なの……キツネさん?」 美味しそうなうどんの匂いが漂う中セイリュウは、 心配そうにキツネの店主を見下ろしながら、 尻尾で優しく体を揺さぶって声をかけてあげた。 「……大丈夫コン。 ちょっと疲れただけコン。 さぁ、冷めないうちにうどんを食べて欲しいコン。」 「えっ…あっ〜うん……ちょっと待ってくれてもいいかな まず先にチョコボさんを起こさ…… あっ……凄くいい匂いのうどん……これがチョコボさんの言っていたうどんかぁ〜」 何時あのことを切り出そうか迷っていたセイリュウ。 とりあえず時間を稼ごうとチョコボを起こそうとしたとき、 うどんから漂ってくるいい匂いに…… 自然とその深紅の目がうっとりと変化していき、うどんを見つめた。 そして、ごく当たり前のようにその深紅の目は、 スーッと横にスライドしていき…… 器にもたれかかって、休んでいるキツネの店主の姿を映し出した。 「うっふふふ……美味しそうな、キツネ…うどんだね。」 「コン……褒めてくれて嬉しいコン。 ……セイリュウさん……どうしたの、食べないのコン?」 ジッと自分とうどんの入った器を見つめているセイリュウを、 キツネの店主さんは少し不安そうに見上げていて…… それをセイリュウは、少し雰囲気が怪しくなった深紅の瞳で、 さらに見つめ返していて、おもむろにキツネの店主と、 うどんの器に顔を近づけていき…… 「ねぇキツネさん……あたし、キツネさんにお願いがあるんだけど聞いてくれる?」 「コン? お願いって何コン? 僕に出来ることなら聞いてあげるコン。セイリュウさん、言ってみるコン。」 その言葉にセイリュウは嬉しそうに…… パーっと明るい笑みを浮かべると、ゆっくりと舌なめずりをした。 その様子に、ちょっと不安を感じたキツネの店主が、 思わず後ずさりすると…… トンッ! シュルルルッ! いつの間にか背後に回っていたセイリュウの尻尾にぶつかり、 よろめいた瞬間、尻尾の先端がヘビのように動いて体に巻き付かれ、 そのまま宙に持ち上げられてしまった。 「コ、コン!? 何するのセイリュウさんコン!?」 「えへへっ……キツネさんさっき言ってくれたでしょ。 自分に出来ることは聞いてくれるって…… だから、一回……あたしに食べられてくれない?」 目の前で無邪気な笑みを浮かべているセイリュウを、 アワアワと不安そうに周囲を無駄に見渡したり、 身をよじったりして、どう答えたらいいのか…… 頭が真っ白になって浮かんでこないキツネの店主。 それを怖がっているのだと判断したセイリュウは…… 「大丈夫、そんなに怖がらない♪ 飲み込むだけだし、絶対に溶かしたりしないから♪ それにさっき味見したときキツネさんって美味しかったから、 うどんと一緒に食べたらとっても美味しくなると思うよ♪」 ジュルリと舌なめずりをして、ゆっくりと器の上に尻尾を動かして、 キツネの店主さんをその器の中に入れようとするセイリュウさん。 それに対して、段々と迫ってくる出来たての熱々のうどんのスープに、 焦ってジタバタと足をばたつかせて、慌てるキツネの店主は、 「コ、コ、コン! 待って、まだ何も言ってない…あぅっ!…熱いっコン!」 ささやかな抵抗も空しく湯気の立っている器の上に運ばれていき、 セイリュウの尻尾がゆっくりと緩んでいく。 そして…… バッチャーン! それなりの高さからうどんの中に落とされて、 キツネの店主が落ちた瞬間にスープを盛大に巻き上がると 雨のようにキツネの店主とセイリュウの尻尾に降りかかった。 「コーン! 熱い熱いコン! セイリュウさん、チョコボさん助けて、出してコン!」 熱々のスープの水面をバシャバシャと とても熱そうに暴れてたたき続けるキツネの店主。 段々とその体が黄色から火照った赤い色に変化していく。 そして、その原因を作ったセイリュウは…… 「熱つっ! あぅ〜火傷するかと思っちゃった……」 スープの水滴がかかって少し赤くなってしまった尻尾を、 ペロペロと舌で舐めて痛みを和らげた後…… わざとらしく悲しそうな目をして、 「ゴメンね……キツネさん。それは出来ないの…… 変わりに、すぐに食べてあげるからちょっと待ててね♪」 最後の言葉を明るく弾んで言い切るなり、 セイリュウはとても嬉しそうな顔をして ガバッ!と口を開くと、キツネの店主の入っている…… 本当の『キツネうどん』に向けて柔らかな舌を伸ばしていく。 シュルリ……ペロ……ピチャピチャ…… まず最初に、先ほど自分に火傷をさせるほどのスープに、 恐る恐る舌を伸ばし……その先端でスープを舐めてみた。 舌先を刺激する味、口に含んだ瞬間に広がる風味… そして、あれだけ熱かったはずなのに、 口の中ではちょうど良く感じられるように工夫された絶妙の温度。 それにセイリュウは目を見開くと 「美味しい……ダメ……もう我慢できない! えへへっ……もう、キツネさんを……食べよっと♪」 「コン! コン! 止めてセイリュウさん! 僕は…僕はうどんの具じゃないから食べちゃダメだよコーン!」 大きな口を開き、ゆっくりと迫ってくるセイリュウに うどんのスープの水面でバシャバシャと暴れながら、 キツネの店主は、手を突き出し待ったのサインをだした。 しかし、そんなもので止まるはずはなく…… シュルルッ! ジャボンッ! 柔らかな舌を容赦なくスープの中に差し入れると そのまま、うどんの麺と一緒にキツネの店主を、 自分の舌に絡みつけるように巻きとる。 そして、ゆっくりと舌を口の中に引き込んでいって…… 「コンっ!抜けられないコン…セイリュウさん僕を食べちゃダメコン!」 ゆっくりと迫ってくるセイリュウの大きく開かれた口…… その中から伸びている柔らかで生暖かい舌にキツネの店主は巻き付かれ、 その舌先でピチャピチャと舐められて行く。 「ふぅわ〜…あぅっ……コン…… はぁ、はぁ……何だか、気持ちよくなってきて、どうでも良くなってきたコン……」 無力なキツネの店主の呼吸が段々と荒くなっていき、 「はぁ…はぁ 食べて良いのは…うどん、だけです……よ…コ……ン。」 疲れ果てたその体をセイリュウの舌に力なく横たえて、 ポタポタと糸を引きながら唾液が滴り溢れかえり始めたセイリュウの口の中へ ささやかな抗議と頭や尻尾を動かす程度の抵抗と共に引き寄せられていった。 「ふふっ……そのまま大人しくしててね。、それじゃ頂きます♪」 そして…… パクッ! キツネの店主とうどんを綺麗に口の中に収めると セイリュウは口を素早く閉じる。 そして訪れた暗闇の中でジュルジュルとにじみ出してくる大量の唾液に、 浸かりながらキツネの店主は…… 漂う自分の作ったうどんのスープの香りと セイリュウの喉の奥から吐き出される生暖かな吐息の充満する…… 「コォーン!」 セイリュウの口の中でキツネの店主の悲鳴が響き渡った。 その悲鳴を聞いたとき…… 『ちょっと悪かったかな』と一瞬、セイリュウの脳裏をよぎったが、 『まぁもう口に入れちゃったから良いか♪』と思い直し、 「はふ、はふ……やっぱりちょと熱いな……んぅ…」 少々熱そうにしながら口の中で冷まして、 熱々のうどんの麺と共にキツネの店主を舌で舐めて味わう。 舌の上で『コン、コン』と叫びながら転がるキツネの店主の体からにじみ出る、 スープとその身の味がハーモニーを奏でていて…… 思わず頬が赤く染まるとセイリュウはそこに手を当てて呟いた。 「美味しい……ホントに美味しいよ♪ キツネさんもうどんも本当に凄いよ♪」 味を精一杯に満喫し噛みしめながら、セイリュウはキツネの店主を褒め称える。 残念なことはその褒め言葉がキツネの店主には聞こえていないことだった。 「コ…ン… はぁ、はぁ……何だか不思議な気持ちになってきたコン。 今も怖いのに……はふぅ〜コン。 うぁ……セイリュウさんの舌…… 触れているのが気持ちよくなってきたコン。」 目が虚ろになり、自分の心がどうなっているのか、 キツネの店主自身もわからず……ただ自分をうどんの麺と共に 味わおうとするセイリュウさんの舌に揉まれ、唾液と絡んでいきながら…… 舌に自らの体をスリスリとすり寄せて、そんなことを考え始めていた。 「ひゃうっ! キツネさん舌にすり寄られるとくすぐったいよ! ……ふにゅ……落ち着いた。 うふふ……キツネさん早く食べてもらいたい見たい♪」 すり寄る行為を『早く飲み込んで』と言う催促だと思ったセイリュウは、 いっそう舌を波打たせてうどんの麺と共にキツネの店主を、 ゆっくりと口の奥へと運んでいった。 「ぅん…コン 力が入らないコン……僕の心が、なんか変コン。 ……もう怖くなくなって……自分からセイリュウさんに食べられたいと思ってるコン。」 自分の心からわき上がってくる不思議な感覚にキツネの店主さんは困惑していた。 でも、セイリュウに舐められ…… 口の中に入れられて食べられ…… その中で舌に包まれ揉まれていく…… その感覚にキツネの店主は心を鷲頭噛みにされたのだった。 そして、そのままキツネの店主は、 口の奥に運ばれていき……そして、 ゆっくりと自分を飲み込むために…… 唾液を編み目のように糸を引かせながら開いていくセイリュウの喉を… その先に続いている暗く……そして、長い食道への胃袋への滑り台を見て、 キツネの店主は、再び恐怖を感じたがすぐに大人しく舌の動きに身を任せる。 「……ぅん……んぐっ……キツネさん、飲み込むよ。」 舌の根本でキツネの店主さんの重さを感じながら、 小さく声を出して合図をすると…… ゆっくりと舌を持ち上げてキツネの店主を喉の中へと落とし込んだ。 そして、セイリュウさんの喉が小さく動き、 ゴクリッ! キツネの店主を飲み込む生々しい音を立てて飲み下したのだった。 「コーン!」 その瞬間ひときわ大きな声を出し、 キツネの店主は喉の奥へと滑り落ちていった。 「うふっ……のど越しの感触も最高…… あたし、キツネさんのうどんが、とても気に入ったよ♪」 うどんの麺と共にキツネの店主が、 セイリュウの喉を…… ジュルルル……グジュル……ズリュリュ…… 長い長い食道を押し広げて…… 胃袋へと食道に揉まれながら押し込まれていき、 肉壁からにじみ出る体液に身体を擦りつける音を立てながら、 小さな喉の膨らみとなってゆっくりと滑り落ちていった。 「ぅ〜ん……コン。 気持ちよすぎて……もうダメコン…」 徐々に意識が遠くなっていき…… 眠るようにキツネの店主の目が閉じていった。 ズブズブ……ジュリジュル……ズリュッ!……ビチャアッ! セイリュウの喉を下りきりると大きな胃袋の中に、 キツネの店主は頭から落ちこんだ。 その身体を柔らかな胃壁が包み込むように優しく受け止めて、 たわんだ後、ゆっくりと押し出すように戻っていく。 「えへへ……キツネさんありがとう。 まだ、うどんが残ってるから…… 全部食べるまで私の胃袋の中で、ゆっくりと休んでてね♪ あっ…その前にちゃんとキツネさんを溶かさないようにしなくちゃっと。」 セイリュウが小さく膨れているお腹を優しく撫でると、 胃袋の中で意識を失って、眠るように横たわっていたキツネの店主の身体が、 ゆっくりと柔らかな胃壁に沈むように取り込まれていった。 そして、完全にキツネの店主を取り込むと、 「うん……これで大丈夫。 さぁ、うどん♪、うどん♪」 さっそく残りのうどんを食べようと、 言葉を弾ませてうどんと連呼しているセイリュウの嬉しそうな声に反応して、 「きゅ……ぴ? ……セイリュウさん、うどんが出来たの?」 ようやく目を覚ましたチョコボには、数分前…… セイリュウとキツネの店主の間で、 すごいやり取りが繰り広げられた事など知るよしもなく。 美味しそうにうどんを食べているセイリュウを まだ眠そうに薄目を開けて小さく話しかけた。 「あっ……チョコボさん起こしちゃった? ちょっと待っててね……ハム…チュルチュル……ゴクリ。 う〜ん……本当に美味しかった♪ ご馳走様でした♪」 あっという間にセイリュウは、うどんを平らげていく途中で、 チョコボさんが起きたことに気が付いて振り向くと…… 口からはみ出ていた最後の麺が、 チュルチュルと口の中に消えていきゴクリと音を立ててうどんを完食する。 「クエ〜……セイリュウさんもう食べちゃったの? ぼくも一緒に食べてみたかったんだけど……」 「ごめんね……気持ちよさそうに寝てたから…… 今度来たときに一緒に食べようね、チョコボさん♪」 うつむいてガッカリいているチョコボの頭を セイリュウは、再び優しく撫でてあげる…… 「きゅぴ〜……セイリュウさんの手って、本当に気持ちいいの……」 撫でられる感触にチョコボは気持ちよさそうに、 自分から頭をすり寄せて甘えていくと、その内また眠くなってきたようで…… そのまま目を閉じていき再び眠ってしまった。 「チョコボさん……お休みなさい。 それじゃ……うどんも食べ終わったことだし、 約束通りキツネさんを出してあげないと……んぅ……」 約束通り無事に吐き出すためにお腹に手を当てて、 最初に、胃壁に取り込んでいたキツネの店主を胃の中に戻した。 いつの間にかうどんの麺は跡形もなく、あっという間に消化されいて、 何もない綺麗な胃袋の中に気絶したまま横たわるキツネの店主…… 「……ググッ……」 そのキツネの店主を胃壁を旨く動かして、 喉の中に押し上げていき……小さな膨らみが徐々に口の中に戻っていった。 そして、 「ぅん……うぐぅ……ぺっ」 セイリュウさんは口の中に吐き戻したキツネの店主さんを、 やんわりと自分の両手の手のひらに吐き出した。 「えへへ、楽しい夜の出来事ありがとうねキツネさん♪ おきて、もう吐き出したから大丈夫だよ。」 心の底からそう思い微笑みを浮かべて、 気絶したままのキツネの店主に礼を言うと…… セイリュウの身体から淡い光が立ちこめていき、 それがキツネの店主の身体を包み込んでいった。 「うっ……ぅ〜ん……コン。 僕……どうしてたのコン?」 「えへへ、覚えてないのキツネさん。 私がキツネさんを食べちゃったんだ……ゴメンね、キツネさん♪」 両手の上で目を覚ました後…… どうして自分がセイリュウの手の上にいるのか、 それよりも、少し前の記憶があやふやになっていて不思議そうに 頭を傾げているキツネの店主に…… セイリュウは無邪気にそれでいて、イタズラっぽく笑うと、 キツネの店主を食べてしまったことを教えてそのまま謝った。 「コン! そうだったコン! 僕、セイリュウさんに食べられたんだったコン!」 キツネの店主は尻尾をピンッっと上に伸ばして、 呼び起こされた記憶に身震いをする。 でも、すぐに落ち着つくと…… トコトコとセイリュウの手の上を歩いていき頭を下げて、 「セイリュウさん、ありがとうコン!」 「ええっ……キツネさんいきなり一体どうしたの?」 キツネの店主の行動が意外だったセイリュウは驚いて、 思わず顔を近づけると、その真意を問いかけた。 「たいしたことじゃないコン。ちゃんと約束通り吐き出してくれたコン。 それに、セイリュウさんの身体の中……とても気持ちよかったコン」 「えっ…そう……えへへ。 面と向かってそう言われると恥ずかしいな〜。 でも、ありがとうキツネさん……。キツネさんもうどんも凄く美味しかったよ。」 真っ赤になって話してくれたキツネの店主の答えに、 同じく真っ赤になって照れるセイリュウ。 しばらく、誤魔化すように明後日の方を向いていたが…… ゆっくりと顔を戻すとキツネの店主を…… 自分の柔らかなお腹に優しく押し当てて自分も礼を言った。 「コンっ! ……気持ちいいコン。 セイリュウさん……また僕のお店に来てくれるコン?」 「うん。……また、チョコボさんと一緒に来るから待っててね。」 話が終わると…… セイリュウはそっとキツネの店主を地面に下ろすと、 側で寝ていたチョコボを抱え上げて、 「それじゃ、これあたしとチョコボさんの分の代金ね♪」 「毎度ありがとうコン! また来てくださいコン!」 何処からかセイリュウがお金を取り出すと、 キツネの店主はそれを受け取り…… 去っていくセイリュウとチョコボに向けて、 何度もお辞儀をしながら見送ったのだった。 こうして、今日のキツネの店主の休日は終わった。 大変で、休みどころではなかったはずなのに…… キツネの店主はとても元気に笑みを浮かべながら後片付けを終えると お店の中に帰って行った。 |