それから1月の時間が経過して…… その間、相変わらず……いや、あの時以上のにぎわいを見せている キツネの店主のお店がそこにはあった。 そして、今日は一月に、たった一度だけのお休みの日。 がらんとしたお店の中でキツネの店主は、 いつものように慌ただしく、お店の周りを掃除して回っていた。 「コンっ! コンっ! 忙しいコン! そう言えば……あの時もこんな風に忙しい休日の日だったコン。」 1月前のことを…… チョコボが森の入り口で倒れていたのを見つけたあの日のことを キツネの店主は、懐かしそうに思い出した。 あの2匹は、あれから一度もお店に訪れてはいなかった。 すこし、残念に思うキツネの店主だった。 その時…… トントン……トントン 何度もしまっているお店の戸口を叩く音が聞こえてきた。 「はいコン。どちら様コン? 今日はお店はお休み……」 「きゅぴぃ! キツネさん会いたかったよ!」 ガラガラとお店の戸口を開けたキツネの店主に。 体当たりのような勢いで抱きついてきたのは、あのチョコボだった。 「コ、コン! チョコボさん、ビックリしたコン!」 「うふふ……大丈夫、キツネさん? チョコボさんも少し落ち着いてね。」 チョコボに押し倒されて、スリスリとすり寄られながら、 キツネの店主は何が何だか分からなくて、 目を白黒させていると続いて入ってきたお客さんが心配そうに見つめていた。 「だ、大丈夫コン……ふわぁ〜竜人さんのお客さんは初めてコン。 ……いらっしゃいませコン。あなたもチョコボさんのお友達なのコン?」 いつもの癖でキツネの店主さんはお客さんに対してお辞儀をして挨拶した。 そのキツネの店主を…… 「えへへ……キツネさん。 あたしセイリュウだよ。 おどろいた? 竜の姿だけじゃなくて、こんな風に竜人の姿にも変身出来るんだよ♪」 くすくす笑いながら、可笑しそうに微笑んだ竜人の姿をしたセイリュウ。 真っ白な鱗と同じ…純白の白衣を纏っていて、 白衣の隙間から長い尻尾が地面に擦らない程度で宙に浮いていた。 そして、顔つきは変わっていたが…… しゃべり方はキツネの店主さんの知っているセイリュウのままであった。 「本当にセイリュウさんだコン……そのしゃべり方間違いないコン。」 「さぁ、キツネさん。今度は…… お店の中でキツネさんのとっておきのキツネうどん食べさせてね♪ 「クエー! ぼくも今日はセイリュウさんといっしょにうどんを食べるんだ。」 がらんといていたキツネの店主のお店が一気に賑やかに明るくなっていく。 ホントは今日はお店は、お休みなのだけど…… いや、楽しそうに笑っているその様子から、 これがキツネの店主にとって最高の休日になるのだろう。 「コン♪ チョコボさん、セイリュウさんちょっと待っててね。 今、僕の自慢のキツネうどん作るから。」 キツネの店主さんは2匹のために腕を振るい、 あの変わらない味の…… いや、実践を重ねさらに美味しく進化していた『キツネうどん』を振る舞う。 「きゅう〜♪ キツネさんってすごーい。まえ食べたときよりずっとおいしいよ。」 「うみゅぅ〜♪ 美味しい。 キツネさん……うどん、ご馳走様です。」 先に食べ終わったセイリュウは、丁寧に手を合わせて食後の挨拶を済ませた。 その後、まだ一生懸命ハフハフと、 うどんを冷ましながら食べているチョコボを微笑みを浮かべながら見ていて、 そっとキツネの店主の耳に口を近づけると小さくささやいた。 「へええ、キツネさん。 今は我慢するけど……今度来たときはまたキツネさん食べさせてね。 あの時のキツネさんの味って凄く口に残ってて、また食べたくなっちゃったんだ♪」 「コ、コン!? また僕を食べるのセイリュウさん!?」 セイリュウに耳元でささやかれて、赤くなりながら後ずさるキツネの店主。 その様子をセイリュウは…… 「キツネさん約束だよ。 こんどまた食べさせてね♪」 ジュルリと舌なめずりをしながら微笑みを浮かべて、 その日が待ち遠しいのか尻尾が持ち上がりユラユラと揺らしながら見ているのだった。 ……そして、ある日の夜。 キツネの店主のお店では…… 「えへへ♪ 『キツネさんうどん』頂きま〜す♪」 「コーン♪ でも、セイリュウさん食べても良いけど…… 溶かして良いのはうどんだけですよコン♪」 チュルチュル……もぐもぐ……ゴクリッ! 「う、う〜ん。 美味しい……キツネさんご馳走様でした。」 ある日、あるお客がキツネの店主に問いかけた。 『どうして、休みが一日しかないのにこんなに一杯働けるの?』 それにキツネの店主の答えは、 『大切な僕のお友達のおかげで、何時も元気にいられるコン!』 そして、また…… ある夜にキツネの店主の嬉しげな悲鳴が…… 夜の森に響き渡るのだった。 The End |