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− 異変 −
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「ヘンゼル、目標見つけたぞ」
「早かったな、アベル。グレーテル、行くぞ」
「・・・?え、あ、うん」

一応時間通りにアベルが私達のもとに来た。
しかし・・・吹雪が弱くなるはずなのに、逆に強くなっている気がする。
でも、気にしている場合じゃないわね。
早く、目標であるスノードラゴンを倒して・・・進まないとね。
私は彼等のやや後ろを歩いていく。

「こっちだ・・・グレーテル、急げよ」
「アベル、急かすなよ」
「いいのよ、グレーテル。行きましょう」

カインが居る場所を確認するが、彼のセンサーは人間とは違う速さで、くねくね動いている。
もしかしたら、もう丸呑みにされているのかも。
彼は話を聞いて無かったから、多分拘束攻撃を受けたまま待つつもりだったのだろう。
まぁ、彼も丸呑みにされるのも嬉しく感じる人間だから、堪能する気なのだろう。
気絶させるのは楽だろうが、体内に入って助けるのは一苦労だ。

モンスターは気絶させることは簡単だが、倒すのは難しい。
倒すには、体力を0にするのが条件だが、プレイヤーを丸呑みにしている場合体力が0になることはない。
つまり、丸呑みにされて仲間からの助けが必要になった場合、モンスターを気絶させて、体内に入り助ける必要があるが、気絶させているのだから起きる。
もしも、体内に入っている状態で起きられると、その助ける為に体内に入ったプレイヤーは、そのまま丸呑み状態となり、共倒れになる。

「ヘンゼル、アベル・・・そろそろ、戦う準備」
























「よし、倒した・・・!?吹雪が」
「えぇ、強くなっているわ」
「ヘンゼル、俺がカインを助け出すから、お前はグレーテルと居ろ」
「おい、俺が助け出すって」

目標であるスノードラゴンを気絶・・・倒した。
しかし、この辺りから弱まる筈の吹雪が、逆に強くなってきている。
もしかしたら、あの時グレーテルが気にしていたのは、このことだったのかもしれない。

当初は俺がカインを助けるのだったが、アベルが行くと言い張る。
特に、俺がやらなくてはいけない理由があるわけでもないので、仕方なくアベルに行かせることにした。






















「・・・よし、行くか」

俺は倒れているスノードラゴンの口を開く。
未だに口内は生暖かさを保っており、牙と牙には糸引いている。

俺は意を決死、口の中に体を入れていく。
生暖かい空間に入りこんだ俺の体には、未だに残る唾液が体に付着し、重くなる。

「!?」

今、舌が俺の腹をなぞった。
否、こいつは死んでいるはずだ。
ただ、触れただけだろう。

「アベル!早く、出ろ!」
「まだ生きているわ!」


ヘンゼルとグレーテルの声が聞こえるが、口内に居ることで音が防がれ、吹雪によって打ち消される。
気づいた時には、紅く唾液たっぷりの肉厚で柔らかな舌が、俺を拘束していた。
出ようにも出られない。
傾斜がつき、俺の体は滑り始める。
舌による拘束が緩み始め、俺は暗い穴に向かっていく。

ゴクリッ・・・

俺は呑み込まれた。
















「呑み込まれたな」
「えぇ・・・しかし、早すぎるわ」

『当たり前だろう・・・演技なのだから』

!?
スノードラゴンが喋った!?
否、そういうシステムは無い。
だとしたら、誰が!?

『何を驚いている?この世界はゲームではないぞ』

「嘘だ!?この世界は俺が作ったゲームの世界だ!」
「・・・まさか、実際にこの世界は存在していて、私達が作ったゲームと瓜二つだったのかしら?」

『簡単に言えば、小娘の言う通りだ』

この世界はゲームではない。
実際に存在する世界。
俺とグレーテルが作ったゲームと瓜二つで、融合した?
そうなら、消化されてしまうではないか!

「おい、二人を吐き出せ。消化する前に」

『出しはしない』

「ふざけるな!」

『胃液は出しはしない。否、出ない』

スノードラゴンの言葉がよく分からない。
これは現実の世界なのだろう。
それなのに、胃液が出ないなんて。
理由が分からない。

『この世界は現実とゲームが要り混じったものだ。だから、ある程度お前達のゲームのルール的なものが、入り込んでいる』

「つまり、消化はされないのね?」

グレーテルの質問にスノードラゴンは頷く。
消化されないのなら、やりたい放題だ。

気付けはアベルもスノードラゴンの胃袋に収まっているようだ。
気づかなかったが、仲間からの助けが必要になっいる。
しかし、俺が助けないとグレーテルだけになるから、今はお預けか。

『小娘、我が背中に乗るといい』

「はい?・・・分かったわ」

『お前は・・・』

バグンッ・・・

いきなりのことで、俺の体は動かなかった。
気付けは生暖かい空間に包まれていた。

舌は歓迎するように、俺の体の隅々を余すことなく舐め尽くす。
これだけで、俺は快楽に溺れていた。

『腹の中に入れておける定員は二人だから、お前には口の中だ』

「わ・・・わかった」

既に俺の思考回路は狂っていた。
この口内に俺は虜になってしまったようだ。

つい、俺は舌に抱きつく。
すると、お返しにその長い柔らかな舌で俺を包み込む。
窒息には至らないが、かなり窮屈だ。
しかし、体全身が舌という豪華な布団に密着し、幸せな気分だった。

『乗ったな・・・行くぞ』

どこに行くかは知らないが、時間はあるのだろう。
俺は眠りにつく。


前回よりも918文字少ないかww
<2013/03/17 17:01 ヘリオス>
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