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草の根かきわけて − 旧・小説投稿所A

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草の根かきわけて
− 悩みの月夜 −
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 鬱蒼とした森の中を歩いていた2匹の狼は、少しばかり開けた場所へ出た。といっても、森の端まできた訳ではなく、落雷か何かでぽっかりと穴が空いた印象だ。





 「ついたわよ」

そう言うと、俺の前を歩いていたオオカミは立ち止った。

 「ここは?」

 「縄張りの外れ。ここなら誰も文句は言わないわ。つきあってやっただけ感謝しなさい」

それ、さっきも聞いたっての。

 しかし、結局それだけか。元凶のこいつなら何か知ってると思ったんだけど、そういう訳じゃねえようだな。ダメ元で聞いてみるか。

 「それじゃあ・・・」

 「ちょ、ちょい待ち」

踵を返そうとしたので、俺はあわてて呼び止めた。

 「何よ?」

そんな不機嫌そうな顔向けられても困るっての。

 「この森・・・さ、何か変な噂とか聞いた事ないか?」

 「はあ!? 何よそれ?」

やっぱりこうにしかならねえよな。

 「例えば突然姿が変わっちまうとか・・・さ」





すると、オオカミが急に優しい顔つきに変わった。

 「かわいそうに・・・・・」

 「そ、そんな憐れむような目をすんじゃねえよ!」

ダメだ。完全に馬鹿にされた。

 「さようなら」

 「あ、ちょ」

今度こそ本当に行ってしまった。俺はただ一匹、森の切れ目に取り残されちまった。





 「はぁ・・・・・」

 ため息しかでねぇ。いや、実はなんとなくこうなる事は予想はしていた。けど、ほんの少し残ってる可能性を信じるきゃなかったんだ。

それも、閉ざされた。

 「俺、これからどうやって生きていこうか?」

今の俺はオオカミ。動物みんなから恐れられるオオカミ。そう、もう俺に帰る場所なんてねえ。

 「畜生! 何でこんな目に合わなきゃいけねえんだ!」

やり場のない怒りに吠えると、その辺りの木にいた鳥達が一斉に飛び立っていった。





ほんのりと寒い風にあてられて、俺は目を覚ました。

 「ん? もう夜か」

いつの間にか眠ってしまったみたいだな。満月が綺麗だ。少し目頭がまだ熱い。

 「・・・・・・腹減ったな」

きょろきょろと周りを見渡すと、丁度俺の大好きな草が生えていた。
ラッキー。こういう時に空腹じゃますます気が滅入っちまうからな。
早速、その草を口に含んだ。



 「ぐえっ!」



 間もなく、俺は草を吐き出して地面にぶちまける事となった。一体なんだってんだ? 毒でもついてたか? いいや、違う。そんなはずはない。という事は・・・・・

おいおい、勘弁してくれよ。

いいや、状況的に考えて多分そうなんだろうな。

今の俺はオオカミ、オオカミが草なんか喰うはずがねぇ。





 「一体どうすりゃいいんだよー!」





俺の叫びは、虚しく月夜へと消えていった。




<2013/01/24 17:24 ぶちマーブル模様>消しゴム
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