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吹雪の島 − 旧・小説投稿所A

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吹雪の島
− chapter2 −
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「ふぅ…ごちそうさまでした……」

「は〜い じゃぁささっと準備して出かけましょ〜」

少しイライラした様子のマニューラをさらに急かすようにベイリーフは気分が良さそうに部屋の周りを歩きながら言った

「無駄にテンション高いねぇ クリスマスぐらいゆっくりしたいとか言ってなかったっけ〜? このサボり魔が〜…」

少しは言い負かしてやる そんな気持ちで彼は立ち上がってから普段の―――仕事上の悪口を言い、彼女のお腹をちょんちょんつついてみる

「なにお〜この……この…え〜…と…」

ベイリーフが歩ませていた足を止めうっかり口を詰まらせ、たじろいだ様子を見て嬉しがるマニューラ

「あ〜はっは♪駄目だなぁベイリーフったら〜、いやいや自分が振ったからには…ねぇ♪」

「うぅ……」

彼は笑いながら食器を片づけるためにキッチンへ歩いていく



まさかの仕返しに悔しがる彼女だったがすぐに何かを企んだかのようにニヤリと笑うと

「ねぇマニューラ…」

わざと雰囲気を暗くし 片付けを終え上機嫌で自分の部屋に戻ろうと階段を登りかけている彼の背中に声をかけた


「なに〜? ッ…!」

彼が声に振り返ったその瞬間にベイリーフはその黒猫の上体に前足で蹴りを入れ後ろに押し倒すとすぐさま動けないように両腕を前足で押さえつけた


「ぐぅ…何すんのさ……」

抵抗しようと試みる彼だったが二の腕の辺りを押さえられ手が動かせない 唯一動く足をバタバタさせるが彼自身の体が小さいせいで彼女の体には全く届かない


「あ〜はっは♪駄目だな〜マニューラったら〜、いやいや、そっちこそ自分が振っといたからには…ねぇ♪」

態度をコロッと変え彼の口真似をして彼女が静かに笑う


「せこいよねぇ…そうゆう根拠のない理由で暴力す…ウグッ…!……わかったわかった……ごめん…」

彼は何か文句でも言おうとしたが腕を押さえる力がいきなり強くなり観念したように謝る

「分かればいいの♪ あら…もうこんな時間だ早く準備しなくちゃ!」

そう言うと 彼女は足早に階段を上っていった

「…はぁ…まったく……」

ゆっくり立ち上がり友人のわがまま性格に呆れながら彼も部屋に向かった



二匹の日常は大体こんな感じである

真面目で少し物事の決まりにうるさく怒りっぽいマニューラ
マイペースでなんとなく気が抜けているベイリーフ

考え方の違いからケンカすることも多かったが彼は彼女の事が好きだった















たたったたたたた…たったん!

起きて来た時より早いリズムでマニューラが階段を降りてきた

すでにギルドにいく準備を終え玄関で待っていたベイリーフ 首から小さめのポシェットをかけている

逆に彼は背中にリュックサックを背負っていた

これらは[トレジャーバッグ]と言うもので探検隊には必須の装備品である



「準備できたかい?」

「うん 行こっか」

上から少し慌てて降りてきたマニューラに出発の確認をとり二匹は家を後にした
外は相変わらず晴れたままだった


ー今日はずっと晴れるのだろうか…それだったら噂のあそこにでも…まぁギルドについたらベイリーフと相談して決めよ…ー









二匹は朝とは思えないほどに賑わっている商店街にたどり着いた

辺りそこら中にクリスマスツリーやリースなどが飾ってある

お店ではクリスマスセールの文字
行き交う人々も子供を連れた大人のポケモンや寄り添いながらゆっくりと街を歩く若いカップルなど……

誰が見ても分かるまでに商店街はクリスマス一色に染まっていた





ゆっくり飾りを見ながら歩いていたマニューラが慌てて走り出す

その先には逆に飾りなどを見たくないかのようにスタスタと早歩きしているベイリーフがいた



追いついてから彼女の顔を覗き込む彼 そこにはもう今年のクリスマスは楽しめないだろうなぁ…とがっかりした表情の顔が見えた



しばらく歩き続けると商店街を抜け開けた空間に出た みんなの憩いの広場である

その真ん中には巨大なクリスマスツリーがあった

高くそびえる塔のような大きさに広場にいるポケモン全てが歓声を上げている


「立派だねぇ〜昨日までは何にも無かったのに…」

「………」

「ベイリーフ?…」

「マニューラはクリスマスぐらいゆっくりしたいとか思わないわけ?」

いきなり困ったような表情で彼を見つめるベイリーフ

彼は突然のことに驚いた

いつもの彼女なら「いやぁ〜ホントやんなっちゃうよね〜 ギルドに辞表でも出しにいこうかなぁ♪」なんて言ってくれる筈なのだが今回ばかりは本当に滅入ってしまっているらしい


「うん……」

彼はかすかに答えたがすぐさま言った

「まぁ自分もさ…確かにクリスマスをベイリーフとゆっくり過ごしたいなぁ と思うけども………思うけどもね…」

「思うけども?」
彼女が期待しているような目でマニューラを見つめる

「その……」
少し恥ずかしそうに顔を背けるマニューラ

「じれったいなぁ……なんなの?」

「そのぉ……自分にとっては…それ以前にベイリーフと一緒にいるだけでいいの……ベイリーフといると毎日が楽しくてさ…」



「………」

ベイリーフもマニューラから目を背け顔を赤らめる

「なんで絶句するのさ、そっちからふっかけてきたクセに…」

「いきなりそんな…なんか照れるじゃない……」

「ベイリーフが言えっていったんでしょ……」

「言えなんて言ってない……言ってないけど………気になるじゃない…ああ言われたら…」

「……」

二匹は下にうつむきながら広場を歩きギルドの有る方へ向かった 互いに顔を赤らめて…


<2013/01/26 23:27 ジイア>消しゴム
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