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僕らはシンジツを知る − 旧・小説投稿所A
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僕らはシンジツを知る
− ユータカラヤの混沌 −
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右手首をぶらつかせ。
左腕は背中にしょった小さな温もりを優しく抱えていた。
あれから怪物の広がった口に俺は、何かをしたらしい。
とにかく右拳の関節がひりひりと痛い。
火事場の馬鹿力の如、引き裂き、一発食らわしたような、感覚があった?
崩れ落ちる白い紐の中を落ちる少女をスライディングするように抱え、跳ねるように体制を整えながら逃げた。
何度もアルファストのデコボコに転けながら、走る。
そして今俺の制服をぎゅう、と握り締める女の子を乗せながら、阿佐ヶ谷の歩道路の闇を照らすネオンを駆けていた。
隠れなければ、逃げなければアイツがこない場所に。
今度こそ出逢えば確実に殺される。
あの爛れた肉の一部にされる。
少女を背負う高校生をみて動揺する群衆をかき分けながら行く。
あんたらもそのうちわかるさ、オッサン抱えて走ることにもなるかもな。
そういえばここは阿佐ヶ谷南―――。
そうだ、人ごみだ。
あそこに―――。


数分後俺が歩みを止めた目線の先にあったのは、阿佐ヶ谷のスーパー、ユータカラヤ。
たまーにカラオケ帰りに寄る、伝統もクソもないただのスーパー。
でもここなら隠れるのには最適だ。
どうせ俺しか見えていない。
このガキまで連れてきちまったが、降りないし、責任はもたねえと。
今は9時か。
よし、まだやっている。
その中が見えないコンクリートに包まれたスーパーはしかしどこか静けさを保っていた。
なんだこの胸を通る寒気は。
とりあえずいくか。
注意深く歩きながら自動ドアの奥に体を通した。



ユータカラヤの中はひどく静まり返っていた。
宣伝BGMも無く、夜間割引を買おうと急ぐおばさんもいない。
まるで死んでいるような世界。
中は妙に冷たく、まるで豆腐コーナーの豆腐のように体が凍りつきそうで。
小刻みに震えながら首を乗り出して隠れられる場所を探していると、冷蔵コーナーが大きく横転していた。
あのスーパーの道を作る冷蔵機が横転しまるで別の道が切り拓けたかのようにある。
豆腐や油揚げ、納豆や千キャベツの袋が散乱している。
そして白い冷気がもわもわと吐き出されていた。
きっと強引に押し倒され、冷蔵機の冷気が漏れ出してしまったのだろう。
原因はわかったが、この冷蔵機はきっと何百キロもはずだ、これを押し倒すほどの力を持つやつがいるだろうか?
しかもなぜなのか?
こめかみに冷たいものを感じるのも納得だがそれ以前に不可解でぐっしょりとだらしない。
と、職員用入口のドアを見つける。
押してもどる、あのバネ状になっているあのドアだ、ドアっていうのかあれ?
少し押すとギギ・・・と鈍い音を中に響かせる。
その時だった。
殺意を感じた。

「ニイイィイイイクウウウウウ!!!!牛肉ちゃんと仲良く俺のスペシャルコロッケになるのジャギャアアアア!!!!」

無機質な声が殺意とともに背中に降りかかる。
重い背中を気にせず素早く踵を返すと。
頭が混沌した。

俺が晩飯に食うようなカラカラに揚げられたうまそうなコロッケが大口を開けて草食の舌を見せびらかしながら、頭上を舞っていたのだから。

コロッケを箸で裂いたら裂いた口で襲ってくるなんて、映画でもやんねえよ。

とにかく目の前には巨大なコロッケが細っちょろい足を生やして俺を食らおうとしていた。


俺は昔から

俺たちが食ってるものが

復讐するために

箸で裂いた瞬間

バクって行くんじゃないかとずっとおもってます

<ねじゅみの右下>
羊の胃袋に羊の内臓入れるのはマイナスマイナス
<2012/11/11 15:41 ねじゅみ>
消しゴム
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