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夢。 − 旧・小説投稿所A

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夢。
− 記憶 −
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ーー砂ぼこりに黒い竜の影が映し出されその口元に当たる細長い穴はぐにっと三日月に曲がった
瞬間竜は巨体についたコウモリを思わせる一対の翼を奮わせ砂ぼこりを一瞬にして吹き飛ばし
さっと低空飛行でビュッと風を切って僕に迫りその白く鋭い鍵爪で僕を捕まえてしまった
キラリと光に反射しそれは僕の薄い服を突き通しザクッと右肩を突き刺さった 「っ痛い!!」
服や体に血飛沫が飛びたら〜っと垂れている
爪と皮膚の境目から血が滲み出ている
例えようもない激痛と右側の視界に現れた白い突起物が見え叫んでしまった 竜はその様子を見ると鍵爪に僕を食い込ませたまま赤い空を風の中勢いよく飛び回り始めた
爪の先端に滴り落ちる自らの赤い血が風に吹き付けられビチャッと顔に掛かってより獲物の恐怖を掻き立てる
「いいねぇ…♪」
竜は呟いて翼をゆっくりとはためかせながら地上へと静かに降り立った
僕の体から爪をずぽっ…と引き抜いた
「あ……あ……あ……」
途端に傷口から血がドクドクと溢れ出している、すかさず竜はそれをべろんと舐め上げて哀れな獲物の恐怖に怯える顔を見ると、恍惚な表情を浮かべ
唾液滴る大口へ乱暴に放り投げ、ばくんと口を閉じた「嫌だあああ!!」
そう叫びながら肉厚な赤い舌に右肩から着地してしまいうまく起き上がれない まず容赦無く舌は小さい僕の体を巻き込むようにして包み込み血の味をじっくりと搾り取る
ねちょっとした唾液が傷口に染みて物凄く痛く血が止まらない
「〜!〜〜!」
全身が舌に密着し口も使えず叫ぶことすら許されない目も自分の流した涙なのか竜の出した唾液なのか分からない透明な液体に視界を妨げられる。ちょうどみかんの汁飛沫が入った時のあの痛み
『〜♪』
舌はするりとほどけて今度は軟らかい舌の先端を僕の胴体に押し当てそのまま上顎に押し付ける
「……う、がっはっ!」
少し固い上顎と大きな肉舌にサンドイッチされ極度の圧迫に耐えきれず思い切り血を吐いた
そしてじゅるんねらぁ〜と舌を器用に動かし飴玉のように舐め転がし始める
この時もう僕の中に恐怖はなかった代わりに絶望が存在し抵抗力、気力を奪っていった
『旨い……♪』
竜は舐め回し続け際限無くその舌で唾液を塗りたくる……
…………竜は舐め回しを止め無数の粘着な糸が絡み付いた僕を舌で掴むようにするっと少しだけ巻き上げゆっくりと上を向く
空間が傾き舌に吊るされる形になりバシャアア…唾液が下に流れ込んでいく音が聞こえる
ごくりと竜は先にそれを飲み込んで舌をパッと放す 「あぁぁぁ…………
まるで幽霊のような断末魔を上げて無抵抗のまま足からゆっくり喉肉に引きずり込まれていく
グニュグニュ…
真っ暗闇の中食道の肉の妙な生暖かさを感じながらも自ら身を任せていった

竜は腹を満足気に擦りながら自然と眠気を感じてグアァ〜……とあくびをして眠り始めた

ズリュ……ズリュウゥ…
……ドチャ…
噴門に押し出され胃袋に落とされる
じゅわああああ
胃液が分泌され胃壁からどんどん滲み出てくる
彼は一番胃液溜まりが出来やすいど真ん中に倒れ込んでいた
ーーもう彼は動じなかったずっと虚ろな目で何処かを見つめているだけである 彼は意識さえあるが精神、心は無くなってしまったのだ、喰われてしまったのだ竜にとって彼のいや人間の恐怖、不安、絶望という負の感情は、最高に美味いものだった
彼は胃液が流れ込んできても胃液が彼の肉や骨を溶かし始めても何も叫ばないし動かない
あちこち溶けかかって今にも崩れそうだ
じゅわああああ……!!
胃液の酸性はさらに増してボロボロのソレを一気に溶かしきった
……ポフンッ♪
一つ大きな泡が立ち静かに割れた

彼は
彼の肉体は精神は心は竜の糧となったのだ







では…



魂は何処に…?












ーーーーここだよ。
すやすやと寝息を立てて眠っている竜の横で
僕は無意識にそう呟いた

空は青く染まっていた




<2012/10/07 04:29 イオン>消しゴム
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