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ICE AGE − 旧・小説投稿所A
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ICE AGE

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氷竜〜胃袋内〜


「カードが……取れ…な……うわあっ!!」

ググッ……ドチャリ


リゲルと全く同じ行動を取りながら、同じ空間へ落とし込まれたドイル。食道で揉みほぐされてきたせいか、恐怖でパッと立ち上がり、辺りを見回す。

竜の胃………絶対に破れない厚い肉壁に包まれ、脱出不可能な密室…

胃壁からは常に唾液が分泌されており、この空間から湿気と潤いを絶やさない。遠くからは「ドクン…ドクン…」と力強い鼓動が響いてくる。

ドイルは興味本位で、ヌメヌメとした胃壁を軽く押し込む。


ぷよっ……ぽよん…
「うわっ…すご…」

本当に軽く押しただけだと言うのに、入れた腕は肘ぐらいまで沈む。おまけに凄まじい弾力性を持っていた。

ふと上を見上げると、噴門はきつく閉じられ、もう開く事は無さそうである。


古の伝説では大竜は大抵の獲物を虐げ、手当たり次第に呑み込んでいったとか。そして呑まれた者の末路はここ。胃袋で身が溶けるまで揉まれ苦しみ、主人の一部となってしまう。

今も昔も、それは変わらない…




ぐにゅ

「ん…ん?」

歩いていたドイルは、胃肉とも違う、何やら変わった感触の物を踏んづける。恐る恐る目を下に向けると…








「…………先……輩…」

見覚えのあるライバーが着けられた腕だけが、グヨグヨと蠢く胃底に浮かび、そこにリゲルが沈んでいる事を示していた。

余程暴れていたのだろう…手は力なくグッタリとしている。きっと、来ない助けを求め、伸びきっていたんだろう…


「先輩、今助けますから………」

自分のライバーを構え、カードケースをまさぐる。そうしている間にもリゲルの腕は「ズプニュ…ズプニュ…」と肉に沈んでいき、既に手首が飲み込まれようとしていた。急がなければ手遅れに…


ドイルは「RIDE POWER」のカードを何とか探し当て、大慌てでセットした。
















カチッ…「ERROR。」

「え……嘘…」


ガチャッ…カチッ「ERROR。」

何度やっても繰り返されるエラーの音声。ドイルは半ばパニックに陥りながら、ガチャガチャと同じ操作を繰り返し続ける。リゲルの手はもう、親指が埋もれてしまっていた。




ガチ…「ERROR。」

「そんな…頼むよ……」

ここでドイルははっとする。震える手でライバーの蓋を開け、読み込んでくれないカードを取りだして見た。





カードがふやけている……
肉管でぎゅうぎゅうと押し揉まれた上に、この湿っぽい胃袋に入れられた紙製のカードが、機械に通るはずもなかった。







ズポゥ……ジュプ…

「嫌だ!!先輩、独りにしないでください!!!」

ただの紙くずとなったカードを放り投げ、ほんの僅かに見え隠れしている中指の先を掴む。しかしカードの力無しで、しかもヌルヌルと滑る手で重い体を引き抜く事など…



ゴポリ……ムニュ…ムニュ……………

「せ………うわああああっ!!!!!!」

呆気なく儚く、リゲルは柔肉に溺れていき、見えなくなった。ドイルは腕を突っ込もうとするが、リゲルが沈んだ部分のみ屈強に堅くなり、胃はマッサージの邪魔をさせない。


開かない胃底の上に跪き、ドイルは悔しさに涙を浮かべる。だが今、自分が生きている場所は、「胃」。溶かすのが仕事。

後ろから胃壁が迫ってくるのも、仕方のない事だった。



「………!!」

失意に打ちひしがれているドイルに、背後から優しく取りついてくる胃壁。ドイルは「しまった」ともがきはしたが、無理は無理。

1分も経たない間に、リゲルは顔以外の全て
が胃壁に飲み込まれ、死んだ抵抗を続ける顔だけが覗いている。




「畜………生ぉ………」


ゴポリ……ムギュウニュムムムゥニュムニュム…………ムグムグ…

胃袋は愛撫の限りを尽くし、敗者を温柔に慰め始める。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「ゲフッ……ぅぅー人間って……最高だな…」

氷竜はのしのしと体を動かし、冷凍庫の入口へとたどり着く。お腹は見事に2人分の大きさだった。

「上いけば…………もっと食えるよなぁ…?」

氷竜自身、今の顔は最も貪欲な表情だったと認める。


これから来るであろう地獄も知らず、平凡な生活を送っている人間達。
その彼らを守ってくれていた重い扉が、ギシギシと鈍い音を立て、開きだす。


<2011/05/15 15:12 ロンギヌス>消しゴム
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