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狼と狐のち日常 − 旧・小説投稿所A
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狼と狐のち日常

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やはりボクには”刀”が必要だった。
正直武器を所持する事はあまり好きではなかった。
しかし、先日の襲撃ー
あの時はボクは敵から剣を奪い、対処した。
その分だけマスターを危険に晒し最悪のシナリオを辿ってしまう可能性を高めてしまった。
もし、使い慣れた”刀”を所持していればその僅かな危険さえ切り伏せれる。

「まずは、シャオン様を捜さなければ……」

病院に入院中のマスターを看病しないのは気が引けたが
幸い砂羽もいるし、病院なら安全だ。
何かあれば看護士等が処置を施し、砂羽には連絡を入れる様にしている。
”刀”ならこの城下町の鍛冶屋でも武具やにでもごまんとある。
ピンからキリまで。安価な物も、名称が鍛えた物も。
けれどもボクにはその全てが合わない。
どんな名称が鍛え抜いた刀もシャオン様にご口授された刀技に
”刀”自体が耐えられない事が多い。
シャオン様も”終咲”を手にするまでに葬った刀の本数は覚えていないようだった。
ボクの愛刀……”蒼華水蓮”
驚異的な硬度、耐久力を誇る金剛石の刀身をベースに竜の鮮血……
ルーテル女王に頂いた血を刃に染み込ませ、ボク自身の魔力を施し
シャオン様自身が鍛えてくださったボク専用の刀。
今も、シャオン様が大事にしてらっしゃるかどうかは不明だが
ボクにはそれが必要だー

「……ふぅ」

しかし、この城下町はとにかく広かった。
場合の悪い事に今日は雲一つない晴天。
強い日差しは水竜のボクを容赦なく照り付ける。
疲労した体を休ませようと日陰のベンチに腰を降ろす。
日差しが屋根によって妨げられすぅっ、と体が少々冷やされる。
時折、吹く風が心地よい。
……麦わら帽子でも被ってくれば良かったかな。

「隣座ってもいいか?」
「あ、はい、構いませんよ」

と、小柄な狼を引き連れた一人の男性がボクにそう尋ねてきた。
特に断る理由は無いので直ぐさま了承し、席をずれる。
その男性は所々黒ずんだ白衣に身を包み、少々窶れた表情をしていた。
見た印象はどこかの医者のようだった。白衣を着用するのなら医者しか無いだろうが。
連れている狼は成長途中の様で小柄。
艶めいた美しい銀の体毛を纏い、その獣眼は深紅と闇夜の紺のオッドアイ。
普通の狼ではなく、どこか特質な雰囲気を受けた。

「気分が悪いのですか?」

表情を見る限り、気分が優れないようなのは確かだ。
心配になったボクは思わず声を掛けてしまう。

「大丈夫だ。ありがとう」

男性はボクを向くと、優しい微笑みを返しそう返事をくれた。
そして、愛おしそうに狼の頭部を愛撫した。
撫でられる狼は非常に嬉しそうに撫でられ
可愛らしい声を零しながら尻尾を忙しく振っていた。

「その狼は?」
「この仔か? 私の愛おしい狼さ」

その言葉を切っ掛けに男性は狼を抱き上げた。
これにも嬉しそうな声を上げ、大人しく抱き上げられる。
そのまま、膝上で抱き締めれたまま狼はボクを見つめてくる。

「私はこの仔を助けられなかった……次第に衰弱して、彼女は亡くなってしまった……」
「この狼の親ですか……」
「いや、この仔自身だ。この仔は彼女が転生した姿なんだ」

ボクにはその当時の事は全くもって知る余地もない。
そこを経験している男性は目で涙を潤ませ、狼を一層抱き締めた。
ボクは思案した。
彼女……彼が愛した狼は病気で亡くなり、彼は孤独になった。
けれども、転成して再度逢いにきてくれたのだ。
だからこそ”もう、離さない”如くに愛そうとしているのだろうと。
彼の表情を見るだけで、誰もがそう悟れるだろう。

「そう……ですか」

不意に、マスターの顔が脳裏に過った。
ボクにも彼みたいにマスターを守れるのだろうか?
支えてあげる事が出来るのかな?
何が必要で、何を望んでいるのかな?
ねぇ……マスター

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the Choices 9
 
 ・マスターの顔が見たくなった……
   >> 52

 ・その為にも……刀をっ!
  >> 53

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<2012/05/17 20:51 セイル>消しゴム
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