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狼と狐のち日常 − 旧・小説投稿所A
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狼と狐のち日常
− マスターの顔が見たくなった…… −
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「久しぶりだね……シリス」

城下町の病院3Fの102号室。
そこには僕、砂羽は眠ってしまった。そして、知人のシリス。
ブラインドから漏れる光を受けながら壁に体重を預ける狼獣人。
暗めの水色の毛並みをしており、瞳は翠だ。
しかし、左眼を失っており眼帯を着用。
右足に至っては太腿下を失っており、義足を施されていた。
右肩に弾痕、両耳は半分程を消失している。
生傷の絶えない豪腕はその過酷さを物語っていた。

「意外と元気そうだな、テイア」
「その名はもう捨てたよ」

テイア……それは僕のコードネームだった。
シリスもコードネーム。彼の本名は知らない。
数年前の悲劇……そう戦争だった。
その時の戦友だった、シリスとは。

「それは失礼。今も”魔語”は喋れるのか?」
「もう……喋ってない。多分、喋れないと思う」

”魔語”それは僕が当時持っていた特異な力。
餓鬼のような下級から竜のような上級まで
互いの同意があれば、モンスターを行使できる言語の事……
僕は決してしようとはしなかったけど……強制的に従わせる事も可能だった。
菫達とは”魔語”では喋っていない。通常の言語で喋っている。

「言っておくけど……もう、魔獣使者(ビーストテイマー)としては戦わないよ」

と、釘を刺しておく。
戦友とは言え、あんな地獄絵図はもうご免だった。
自分の操る魔獣達は無数の命を踏み躙っていく。
手を下しているのは自分ではない、魔獣達だ。
そう逃げ口を探しては合理化していた自分が嫌いだった。
だから、こそもう魔語は話したくない。

「安心しろ。戦争の誘いではない。ただ、一人の仲間として見舞いに来ただけ
だ」

実際、シリスも能力を持っている。瞬間瞬士(テレポーター)だ。
一定の距離までおかまい無しに瞬間で移動できる能力だ。
現に、つい先程瞬間移動で僕の目前に現れたのだが。

「自ら戦いに身を投じるような真似をしなければな」

コンコン……

「マスター」

と、不意にドアがノックされた。

「おっと、じゃあな。また逢える日を楽しみにしておく……テイア」

ドアの扉が開き、僕がフラウと確認するのと
シリスが瞬間移動で消えるのはほぼ同時。
フラウには僕がただ、ぼうっとしていたように見えるだろう。

「早かったね、用事は終わったのかい?」
「いえ……マスターの顔が見たくなりまして……」
「どうしたの突然……」

フラウは何も答えなかった。
思えば今、呑気にベッドで休んでいられるのは幸せなのかもしれない。
戦争に駆り出されていた頃に比べれば、今はゆったりと時間は経過しているのかもしれない。


そして……



シリスも”戦い”の輪廻から介抱されたのだろうか?……と。


<2012/05/17 20:53 セイル>消しゴム
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