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狼と狐のち日常 − 旧・小説投稿所A

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狼と狐のち日常
− 『菫……まだ怒ってるのかな……』 −
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目の前をのこのこと歩く人間が二匹。
睦まじく手を繋ぎ、幸せそうである。
東雲とフラウの様じゃ。腹が立つ。
いっその事、二匹とも喰ってしまおうか……
しかし、あの顔はどことなく彼奴に似ておるのぅ……

「あ、お母さんっ」
「!? べ、ベル!?」

似ておるどころか、本人じゃった。

「主、なぜここにおる? あの時別れたじゃろ?」
「う〜ん、僕もこっちに飛んできちゃったみたいで……」

……隣はシフか。椛の伴侶じゃ。
しかし、おかしいの……
あの時は儂だけが異次元に飛ばされた筈じゃ。
何故、ベルがこちらにおるんじゃ?

「主ら、身寄りはあるのかえ?」
「うん、大丈夫だよ。心配しないで♪」

と、なると儂らと同じ様に居候の身か。

「儂らの所に来ぬか?」
「ううん……それは出来ないの」

ベルは表情を崩すと、横に首を振った。

「あまり城下町周辺から離れちゃうと、死んじゃうから……」

死ぬ……? どういう事じゃ?
それならば、城下町周辺からかなり離れた東雲の家に住んでおる
儂らはどうなる?

「儂らは、この山奥にある家に住んでおるのじゃぞ? そんな話は聞いておらぬが……」
「え? でも、僕らの住んでるとこの首が一杯あるオーカミさんがそう言ってたけど……」

どういうことじゃ……?
儂ら以外にも、この世界に飛ばされた者がいる?
ベルの住処にも……狼?
……まぁ、深く考えなくとも良いか……

「主よ、寂しくないのかえ?」
「うん、大丈夫だよ♪ シフ兄ちゃんがいるから」

それに合わせ、隣のシフが無言でお辞儀をしおった。
礼儀正しい、大人しい子じゃ。
……喰ったら美味そうじゃの。

「あ、そろそろ帰らなきゃ。じゃあ、お母さん」

……ベルが見せたあの表情。
儂にはあまり見せん、心からの笑顔じゃった。
交わった関係とは言え、血の繋がった母親ではないからの……
心の何処かで、認知できていない部分があるのだろうか……
シフは孤児院での兄貴分、別の意味で’家族’とも言える。
だからこそ、あの表情ができるのじゃろう……

「なんでじゃろうな……罪悪感を感じるの……」

しかし、さっきはつい手を出してしまったの。
東雲に謝っておこうかの、大切な恩人じゃし……
お詫びに喰ってやろうかえ……
いや、あれでもよいかの♪


何故じゃろうか、ちいとばかし、胸が熱くなりおった。




<2012/03/30 23:48 セイル>消しゴム
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