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狼と狐のち日常 − 旧・小説投稿所A

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狼と狐のち日常
− 『裏通りに用が……』 −
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「……物好きだな、お前も」

記憶を頼りに、歩を進めていると
異名・人喰い狼魔女こと、フローラさんに出会った。

「約束……だったな。ほら、こっちに来い」

薄暗い、裏の住人が跋扈する裏通りを庭のように
歩を進めていく。
ついていくのがやっとだった。
軽く息を切らせながら、歩く事、2分。

「さ、酒場……?」
「そうだ。この2階が隠れ家になっている」

有無を言わさず、僕の手を引き酒場に入っていく。
からん、と空しい鐘の音が店内に響いた。

「いらっしゃい……今日の晩餐かい? 狼さんよ」
「このまま喰ってしまうのもいいかもしれないな……と言うのは嘘だ」

フローラさんは即答で断りを入れると
僕をカウンター席の隣に座らせ、腰を降ろす。
そして、目の前にこれまた凶悪な強面の黒竜人。
酒場のマスターと言った所だろう。

「マスター、アクアマリン。こいつには水をやってくれ」
「あいよ」

強面ではあるが、根は優しいようで
柔らかい対応を見せると、早速背面を向け、作業に取りかかった。

「私は同期魔術師の罪を被っている……」
「この前の話ですね?」
「あぁ。そいつも人喰いだ」

フローラさんは僕に視線をくれる事無く
ただ、酒瓶の並べられた棚を見つめているだけ。

「そいつはな……人間に嫌われ、蔑まれ……ずっと孤独を味わっている」
「またその話かい?」

マスターが注文の品を運んでくれた。
僕には水を、フローラさんには鮮やかな蒼の液体を。
恐らく、お酒であろう。

「そして、あの人は苦しみのあまり人を喰らった……その罪だ」
「え、でも……フローラさんも……」
「あぁ、私も’ヒト’は喰っているがな」

突如、僕に視線を移し生々しく舌舐めずりするフローラさん。
思わず、背筋を震わせてしまった。

ダァン!

「フローラ! そこにいるんだろっ!」

酒場の扉が荒々しく開け放たれた。
そこから現れたのは、衛兵。
剣兵……ではなく銃兵。
その銃は砲弾を高速発射するタイプで
非常に、殺傷能力の高いものだ。
急所でなくとも、死亡する可能性が高い。
響く銃声ー 乾いた音。

「っ!?」

脇腹に激痛ー
弾丸は確実に横腹を抉り取っていた。

「!? 馬鹿が!」

再び、銃声。
煌めく閃光。張り上がる断末魔。
フローラさんの放った魔弾で、遠隔魔術を発動。
銃兵を殺害した。

「マスター! いつもの頼む!」
「っう……」
「何故庇った!?」

そう、僕は自然とフローラさんを庇っていた。
放たれた弾丸は僕の横腹を抉り、風穴を開けた。
手で確認する限り、流血はかなり酷い。

「だ、だ……」
「私が悪かった! 喋るな!」

かなり狼狽した様子で、僕を抱えて
二階へ上がる。
その際に見たマスターの表情は
酷く、蒼白だったー

「痛むぞ、我慢しろ」

二階に上がり、テーブルの上に降ろされると
そのまま火属性魔術で傷口を炙られる。
凄まじい痛みが襲い、とても声を上げられずにはいられなかった。
傷口の止血はすぐに収まった。

「ったく……何故庇ったのだ?」
「……分からない」

自分でもよく分からなかった。
気付けば、体が勝手に反応し
現状に至った訳だ。

「分からないか……まぁ、お前には貸しだな」

フローラさんは重い安堵の息を漏らすと
呆れながら言の葉を紡いだ。



「今日はここに泊まっていけ。死なれても困る。あと、喰うつもりも無い」




<2012/03/30 23:47 セイル>消しゴム
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