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捕食旅館へようこそ 〜 ご主人様は肉の味 〜 − 旧・小説投稿所A
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捕食旅館へようこそ 〜 ご主人様は肉の味 〜
− 発見 −
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レムリアが何者かに連れ去られた。それだけは疑いようがな
かった。彼女の行動パターンをある程度掴んでいるバビロン
からすれば、彼女が待ち合わせの場所に居ないなど考えられ
ない。例え相手が3時間遅れようと、律儀にずっと同じ場所
で待っているような奴だ。

では、問題は誰がレムリアを拐ったかだ。犯人が彼女を狙う
主な原因を挙げるなら、金や名声、研究、自己満足etc……。
とにかく言い始めればキリが無い。従って彼女を誘拐する者
たちの種類も、ヤクザから研究者まで多岐に渡るということ
だ。まだ「誘拐」という大袈裟なものでは無いかもしれない
が、これはバビロンにとってそれと同等の事件だった。

よくよく考えれば、何と愚かしい行為だろう。超貴重種とい
う世間体を持つレムリアを、ギャンブル場のソファに一人残
すなど、狼の群れの中に羊を放り込むようなものだ。近づい
た相手が一匹狼のヤクザや不良なら心配は無いが、集団や雄
の竜となればそうもいかない。戦闘を不得意とする彼女は、
ものの数分で両手を縛られる羽目になるだろう。


「…………ふぅ……完全な失態だな」

レムリアの失踪について、ロンギヌスから追及される自分の
姿が目に浮かんだ。いや、ロンギヌスだけではない。チーム
内で彼女を慕っていない者など居ないのだから、恐らく全員
から矢のような言葉が飛んでくるに違いない。バビロンはそ
れが現実になった暁には、素直に頭を下げることを心に決め
た。

バビロンは悩んだ挙句、頭よりも自分の足で捜す方が効率的
と判断した。誘拐犯の行方までは、スーパーコンピュータの
頭脳でどうにか出来る訳ではないからだ。

しかし背中を壁から離した瞬間、バビロンの目に夢想だにし
ないものが留まった。遊戯室のほぼ中央にあるルーレット台
に、自分とほぼ同じ身長の竜が佇んでいる。明らかに見覚え
のある顔が、不気味なギャンブラー達の海にポツンと浮いて
いる。時たま下を向いて口を開いていることから、背の低い
誰かが一緒にいると推測できた。


「…………あいつ……」

信じたくはないが、レムリアだと言わざるを得なかった。
彼女の肌を彩っていた艶美なクリーム色は、余すところなく
剥がれ落ちている。向こう側が透けて見えるほどの半透明な
巨体は、動物を模して作られた子供用のゼリーを思わせた。

30秒ほどして、バビロンは漸く口を閉じて立ち上がった。
ルーレット台の位置を再度確認した後に、前のめりになりな
がら人混みを掻き分ける。途中、誰かが自分の足の下敷きに
なったような気がしたが、意識は奇怪な姿のレムリアのこと
でいっぱいだった。


=================


「おい、何やってる」

「………!!」

ゼラチンレムリアが見せた仰天の表情に、バビロンは一瞬笑
いが零れそうになった。あえてそれを顔には出さずに、彼女
の肩に置いた手を揺らして再び同じ質問を繰り返す。レムリ
アは安堵に包まれたような顔でバビロンの名を呟いた。


「ご、ごめんなさい、私……」

「……事情は外で訊く。とにかくここから出るぞ」

「え、ええ」

彼女が何者かに洗脳された可能性を考えていたバビロンにと
って、どうにか一安心できる返事だった。ところが彼女の腕
を引き、一秒でも早く騒々しい空間から抜け出そうとした瞬
間、不意に彼女のもう一方の手を握っている者が見えた。

「……誰だ」

ロンギヌスと同年代、あるいは更に年下の青年だった。薄い
無地のロングTシャツを身に着けているが、特に軟弱そうな
雰囲気は感じられない。アニメ等で頻繁に用いられている、
不思議な力を持った謎のキャラというのが最も近い印象だっ
た。


「ははぁん……君あれだろ? このお姉さんが片想いしてる相手」

レムリアは即座に顔をまったく意味のない方向へ逸らす。青
年の言葉を耳に入れまいしているのが丸見えだった。バビロ
ンは彼女を辱めた発言に憤りを感じながらも、同時にそれが
嬉しいと思った自分を恥じた。


「ふぅん……お兄さんも見たことないなぁ。一応、後学のた
めに種族名を訊いてもいいかい?」

「……答えろ。こいつを何故あちらこちらに連れ回した」

「僕がどうしようと勝手だろう? このお姉さんは僕の拾得物
なんだからね」

"拾得物"という言葉に、バビロンは彼を吊り上げたい衝動に
駆られた。しかしそれを実行に移そうとした刹那、背後から
先端の尖った何かが突き付けられる。さり気なく背中に目を
やると、見事な色違いのシュバルゴが両腕から生えた槍を構
えていた。前方は巨大なルーレット台で遮られているため、
実を言うと逃げ場がない。

「そのまま動くな。腹に風穴を開けられたくなければな」

「……それは困る」

ここで無駄に暴れるのは得策ではないと思い、バビロンは両
手を肩のラインまで上げる。視線を前に戻すと、青年の満足
そうな顔が見えた。バビロンはこの色違いのシュバルゴは、
彼の手持ちなのではないかと察した。




……色違い………ムゲン竜………貴重種………

三つの言葉がバビロンの脳内を魔女のように飛び回り、そ
して一つの答えを導いた。



「いったい何処のトレジャーハンターだ。あるいは重度の
コレクターか?」

「へぇ……見かけによらず聡明だね。答えは後者だよ。
イッシュには未開のお宝が無数にあると聞いて、わざわざ
カントーから駆け付けてきたのさ」

「ならお前が彼女に遭遇したのは、単なる偶然という訳だ。
そして彼女を捕まえようとしたのも、全くの偶然。ここに
来た真の目的は、0.4海里先にある海底遺跡だな?」

「おお……どうして分かったんだい?」

「この街でコレクターが涎を垂らすものなんてそれぐらい
だ。観光地であることを除けば貧相な町だからな」

バビロンの推理は的を射ていたらしく、青年は驚いた様子
で眉を吊り上げた。しかし彼が同時に浮かべた不敵な笑み
に、バビロンは背筋が寒くなった。


「ふぅん……それじゃあひとまず話を整理しようか。まず、
現時点において、このお姉さんは僕のもの。いいね?」

もちろんバビロンは二の句を継がれる前に反論したが、青
年は何食わぬ顔でレムリアに言葉を振った。

「ねぇお姉さん……君はもう僕のものだよね?」

「…………え、ええ……」

青年がレムリアに脅しを掛けているのは明らかだった。き
っと彼女の背後にも、色違いのポケモンが待ち構えている
に違いない。バビロンはそれを指摘しようとしたが、寸前
のところで思い留まった。どうせ、「え? 僕のポケモンが
どうかしたのかい?」などと抜かすに決まっている。


「ああ……それは認めよう」

何と答えようと、背中に無造作に槍を突き付けられている
状況に変わりはないのだ。バビロンは安全を最優先と考え、
苦肉ながらも彼の発言を肯定した。青年の口元がますます
吊り上がった。


「それで、お兄さんはこのお姉さんを取り返したい。でし
ょ?」

「…………ああ」

「でも僕はそれを断る。墓泥棒が盗んだ宝物を、みすみす
元の場所に返す筈はないだろ? それと同じさ。ただし……」


「何のリスクも冒険もなしに宝をゲットするのは、僕の趣
味じゃない。いや……モットーに反する、と言った方がい
いかな。お宝は危険を乗り越えた上で手にしてこそ初めて
価値があるのに、こんなに朝飯前じゃ……ねぇ……」

バビロンはその言葉の中に、まんまとレムリアを奪われた
自分に対する嘲笑が隠されている気がした。青年に対して
もだが、同時にいつも他人を見下していた過去の自分が、
裂き殺したくなるほど憎らしく思えた。


「だからこそ元保護者の君に提案しよう。僕と一発、勝負
をしてみないかい?」

「……ふざけてるのか」

「生憎だけど、冗談は言わないタチなんだよ」

青年が何を言いたいのかは分かっている。要は会話の舞台
がギャンブル場であることを利用して、一勝負しようとい
うことだ。


「……論外だ。そいつを博打の景品にする気は毛頭無いん
でね。第一、そういった賭け事は禁止されている」

生まれた時から刷り込まれている法律の条文が、さっと風
のように脳裏を掠めた。イッシュの法律において、10万円
を超える賭博行為は罪とされている。

しかしその事を青年に告げた瞬間、バビロンはしまったと
思った。ニヤリと歯を見せた彼は、まさに狙い通りの回答
を得たようだった。


「そうさ、10万円以上は賭博罪にあたる。でもどうだい?
世の中にはバッグやアクセサリーを扱ったカジノが堂々と
営業している。つまり、景品を用いてのギャンブルはギリ
ギリセーフなんだ」

「……だが、それは景品がれっきとした"物"だからだ。そ
いつは物じゃない」

「ハハ、分かってないねぇ。奴隷のポケモンだって公式に
売買されたり、賭けの対象にされたりしてるんだよ? ポケ
モンはOKだが、竜は駄目なんてルールは何処にもないだ
ろう?」

「…………」

流石にこれは返答しようがなかった。それどころか、バビ
ロンは青年への殺意が胸に湧くのを感じていた。彼の口調
が気に入らないだけではない、奴隷とレムリアを同じ土俵
に並べたことが許せなかった。

思わず拳を握り固める。それを危険と判断したのか、背中
から押し付いている槍の力が強くなった。




「……やらせて貰おうか、その博打」

「フフ、気が変わったのかい? まあいいや。種目はこちら
で決めさせてもらうよ」

「どうぞ御自由に」

この風変わりな青年がどんな種目を持ち掛けてくるのか、
僅かながらバビロンにも興味があった。ポーカー、ダウト、
ルーレット、麻雀、ブラックジャック……

何が来たとしても、人間などに負ける道理などない。革命
的なアクシデントや余程の運否天賦でない限り、九分九厘
勝てる。少なくともこの時はそう思っていた。






最近、本当に多忙なので更新頻度が少ないですw
毎度楽しみにされている方、誠に申し訳ないorz
<2012/04/29 00:29 ロンギヌス>
消しゴム
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