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バベルの塔 − 旧・小説投稿所A

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バベルの塔
− 敗者の焼印 −
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「なぜだ…..何故、見抜けたのですか…..」

「フフ….常人が想像もしないほど卑劣な技だからな。そういう発見は私の得意分野….」

「違う、そこじゃない!!!」


ラファエルは両手をテーブルの上に叩きつけ、弾けるように立ち上がった。


「私がきっかり五巡目にこのカードを使うと、何故あなたは分かったのですか!!?
確証なんてひとつも…..なかったのに….」

「…..…いや、確証はあった。お前の恐怖と安心が、私にそのタイミングを教えてくれた」

「恐怖と…....安心…..?」


思考が迷走するラファエルには意味が分からなかった。
バビロンは勝利の理由を彼に見せるために、彼が使ったイカサマカードを並べた。
さっきの勝負時と寸分変わらない、7のダブルだった。



「恐れってのは身体に現れるものでね…..お前はイカサマダブルの時と普通の時では、出し方が微妙に違っていた」

「出し方…?」

「お前は普通のダブルの時は、カードをパサッとを投げ捨てる癖がある。
だがあのターンだけは、お前はカードを丁寧にテーブルに寝かせるように置いた」

「あっ…..!!」

「…その理由はひとつだ。
丁寧に出さないとカードが飛んだり乱れたりして、イカサマのネタが露わになるかもしれないからな。
お前はそれを恐れ、本能的にそっと置いたんだろうが…....それが何よりの敗因だ」


となると、バビロンは6の偽ダブルにも勘付いていたことになる。
それをあえて一度見送ったのは、恐らくイカサマである確率がまだ充分ではなかったからだろう。

バビロンの解説が続くにつれ、ラファエルの顎はぽかんと開いていく一方だった。



「だが圧巻されたよ….正味、これがこのトリックの本筋だ…」

「何ですって…..?」


ラファエルが使用した偽カードは、全部9や7や6といった微妙な強さだった。
それもまた彼が仕組んだトラップであり、バビロンの疑いを消すための暗殺者。

このイカサマにおいて、2やAのダブルのような強カードを持ってくると当然、疑いが生まれる。
こんな強いカードばっかり…..こいつイカサマしてるんじゃないか? という思考を相手に与えてしまう。

だからこそ、それなりな強さのカードこそが最適。
偶然によってありえる範囲…..相手が「これは仕方ない」と納得してしまうような強さのカード。

これが絶妙な煙幕となって、このイカサマの存在を覆い隠したのだ。



「…強過ぎないが弱くもない。この絶妙な戦力の調整が、どれだけ私を苦しめたと思う?」

「・・・・・・」

「…勝ちへの執着心を抱いている会長が、こんな強さのカードを好むはずがない。
つまりこれは、お前が自分で編み出した戦略だ。
イカサマのネタ自体は会長の入れ知恵だろうが、それを応用、強化したのはお前の実力」

「だ…黙れっ……」


ラファエルは牙の隙間から声を漏らして言った。
眼下をヒクヒクと震わせながら、彼のプライドはダムのように決壊していくのだった。

自分より格下の竜に、崇高な考えを暴露されてしまった。
精鋭であることを誇りにしていた彼にとっては、それは耐え難いショックだったのだ。



「じゃあ何故…..できたのですか」

「…..何がだ」

「だって…だって勇敢どころか無謀じゃないですか、こんな博打の中の博打みたいな愚行…...もし、私がカードの出し方にも留意していたら、貴方は必然的に負けて…」


そう、万が一、ラファエルに「癖」が無ければ、バビロンにイカサマのタイミングを見抜く術は無かった筈だ。

そんなリスクを背負ったまま勝負に出るなど、ラファエルにしてみれば情緒不安定としか考えられない。









「….私の命は賭けるためにある。
中途半端に恐れるぐらいなら、全部吐いて死んでやるさ」

「なっ…..」

恐れず突き進むことこそ博打の基本なのに、ラファエルはその勇気を持ち合わせていなかった。
結果この敗北は、勇気と無謀を履き違えたラファエルに与えられたのだ。



「そんな…..」

「フフ….ここに来てまさかの下剋上だな。
劣者が優者を打ち負かす…..まるでドラマみたいな展開じゃないか」

「黙れ….だいたい2vs2の引き分けに持ち込んだぐらいで….同じ土俵に立てたとでも…!!?」

「…ああ。次の五回戦、最終回でやっと、お前と対等な戦いが出来る。
お互いの心理を読み合うだけの…..そんな泥試合がな」

「………な、何をしゃあしゃあと…」


だがそれが事実だった。
次が最後の勝負。今までの4回もの対決が、瞬時に流れ去っていったようだ。

次回こそ、相手を奈落の底へと葬るラストチャンス。
しかし逆に言うなら、負ければ自分の足元が崩れ落ちることになる。

ラファエルはカードを集めて揃えつつ、自分の腹に眠る青年のことを考えた。
突拍子もなく、今すぐ彼を消化したい衝動に襲われる。



「(負けたら殺される…..それも会長….ウォリア様の手によって…)」


それならいっそ勝負の約束など放棄して、ロンギヌスを消化すれば全てが終わる。
体力も限界なはずのバビロンが文句を付けてきても、力で組み伏せれば問題ない。

ラファエルは一瞬、その耳元で囁きかけるような誘惑に連れていかれそうになった。
しかしそれを許さなかったのは、紛れもない、己のプライドだった。




ーーーーー違う。
ここまで卑劣な技を積み重ねておきながら、最後の最後に逃げるなど、羞恥もいいところだ。

私はそんなことはしない。
悪者なら悪者、勇者なら勇者、正直者なら正直者。
自分を染める色は、いついかなる時でも一色のみだ。
態度をコロコロと変えるようでは、臨機応変ではない、ただの臆病者だ。



「来いバビロン…..。次で貴方を殺します」

「ほう…いきなり強気になったじゃないか。その意気だ」

「当然でしょう。敗北が足枷になってるようでは、敵は倒せません」

「…良いこと言うじゃないか。お前も」


「(…....もうイカサマなんて要らない…..あなたの首は、この手で獲ってみせる!!!!)」


ラファエルの燃やした決意。バビロンの勝利への炎。
もう身を護る盾はない。あるのは相手を殺すための剣だけだ。

もう逃げない。逃げられない。
死を賭した破滅へのレールを、二匹は止まらぬ列車のように突き進むのだった。








<2012/01/05 22:52 ロンギヌス>消しゴム
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