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神々の戯れ〜水神の苦手なもの〜 − 旧・小説投稿所A

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神々の戯れ〜水神の苦手なもの〜

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「う、うさ耳?」

日戸はポカンとした面もちで月夜兎の耳を見つめる。
それは恐れから来ているものではなく、ただただ驚いているだけだった。

「月夜兎、悪いけどその状態じゃ『うさ耳付けた変な青年』にしか見えないよ」

水神の指摘に月夜兎は肩を落とす。

「お前が神だと?笑わせやがって。だが秘密を知られたからには生きて帰すわけにはいかねぇな。おい!この二人を殺せ!殺した奴には『山の贈り物』をたっぷりプレゼントしてやる」

日戸は大声で叫んだ。

「山の贈り物って何だろ?」

「今の時期だと栗とか松茸とか竹の子とかのことじゃないか?」

「そんな報酬で殺すわけない−−」

水神はドヤドヤとやってきた人々を見て言葉を失った。
何故ならやってきた人々からは異様な殺気が放たれていたからだ。

「何なの?現代人って栗とか松茸とか竹の子とかで人を殺しちゃうの?」

「んなわけないだろ。なーんか目がイっちゃってるのばかりだな。……こいつはくさいな。水神、私は今から所長を問い詰めてくるからこいつらを引き受けてくれないか?」

「この人たちのこと好きにしていい?」

「別にいいが、手加減誤って殺すなよ。あっ、そうだ。その日戸とかいうやつは絶対に逃がすな。そいつにも聞きたいことがあるからな」

「リョーカイ」

「じゃあ作戦開始だ」

月夜兎は脱兎のごとく駆け出した。
それを見て追おうとする人たちの前に水神が立ちはだかる。

「どうやら自信がおありのようだが、果たしてこの人数相手でどこまで保つかな?」

「二分未満じゃない?」

日戸の問いに水神はそう答える。

「ほう、随分と謙虚だな。つまりあれか。時間稼ぎというやつか」

「何言ってるの?あんたたちが二分も保たないって意味で言ったんだけど」

水神はやれやれと首を横に振る。
次の瞬間、一人の男が水神に殴りかかった。
が、水神はそれを華麗に避けて鳩尾に強烈な一撃をお見舞いした。
男は声を上げる間もなく失神してしまう。

「お、お前は一体……?」

日戸は目を見開く。
いくら体を鍛えていたとしても、女性があんな強烈なパンチを出きるわけがない。

「私の名は水神。この山に住まう竜神だ。私の姿、しかと刮目せよ」

水神の姿が変化し始めた。
体躯は巨大になってゆき、足と手には鋭い爪が生え、全身が青い鱗に纏われる。
それはまさにドラゴンであった。

「さてと、神を殺そうとした不届き者がどうなるか見るがよい」

水神は足元に転がっていた先ほど失神させた男をつまみ上げ、口の中へヒョイッと投げ込んだ。
そして『ゴクリ』という生々しい音を立てて呑み込んでしまった。
喉のあたりがぷっくりと膨らむ様子を見せつける水神。
よし、これでビビるはずだ。
あとは月夜兎が帰ってくるのを待つだけ−−

「ウォオオォーッ!!」

ところが水神の算段とは裏腹に他の人たちが襲いかかってきた。
な、何で?!
この人たち私のことが怖くないのー!?
水神は致し方なく応戦し始めた。


<2011/10/14 20:32 とんこつ>消しゴム
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