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カードに溺れろ 〜Dead or Money〜 − 旧・小説投稿所A

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カードに溺れろ 〜Dead or Money〜
− Out of rule −
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「や…やった….やったぁ!!!」

「フフ…おめでとうございます。こちらが賭け額の3倍、300
万円から参加費の100万円を引いた、200万円になります」


二番目の挑戦者であるピカチュウは、見事にラティオスに【21】
を超させる事に成功した。運に打ち負かされたラティオスだ
ったが、別に気分を害することもなく200万円分の札束を差し出す。


「もし宜しければ、二回目も挑戦できますが?」
「ふ、ふざけるな…!! 嫌だよこんなの…」


勝利と200万円を手に入れたピカチュウを、横目で羨ましそう
に眺める参加者一同。ピカチュウは生死の淵に立たされている
彼らには目もくれず、煌びやかな扉から外へと出ていった。
そのすぐ横には、どす黒い捕食者が待ち受けている扉
があるというのに・・・


「さて、ゲームに戻りましょうか。頑張ってくださいね?Mr.ザングース」

「お、おお・・」


次なる挑戦者のザングースに、ラティオスはにこりと笑って
鼓舞する。しかしザングースは勝利のため、とてつもない危険
が伴う作戦を考えていた。
その作戦とは・・・・





ーーーーカードのすり替え。
実は日頃から、トランプを使ったゲームには慣れている彼。
その結果、イカサマ用のカードを、常に持ち歩くようになっ
たのだ。運のいい事に、彼が懐に忍ばせているカードと、
このゲームで使用されるカードは、裏面も全く同じ柄だった。


「賭け金は120万円でよろしいですね?
それでは初めましょうか…どうぞ♪」


しかし命を賭けたゲームでイカサマなどしようものなら、
即座に別室行きなのは小学生でも分かる。
このラティオスの爽やかな笑顔がどのように豹変するのか、
ザングースは恐怖に溺れそうだった。

とりあえず、一枚目は普通に・・・



ペラッとめくると、そこにはスペードのクイーン(12)
が微笑んでいた。いきなり大きな数字を引き当ててしまい、
ますますイカサマが必要に思えてくる。


「12ですか…それでは私も」

ペラッ・・


クラブの3。12と足して15だ。
ここで嘘のカードを手の中に忍ばせて、山札から取ったように見せかける事ができれば・・・



ーーー生き残れる。
その上賭けた120万円の三倍である、360万も頂戴できる。まあ
参加費は引かれるので、実際は260万なのだが・・
それでも、バカ正直に勝負して食われるよりはよっぽどマシだ。

ザングースは決心すると、足して【21】になるための
カード…【6】を懐から取り出した。もちろん、
ラティオスが余所見をしている隙をついて。



ペラッ…

「や、やったぞ!! 6だ!!!」

演技に見えないよう努力しながら、ザングースは自前の【6】
のカードをテーブルに叩き付けた。ラティオスの視線が、五秒
ほどそのカードに注がれる。ザングースの今までの人生で、
最高に長い五秒間だった。
そして・・・・



パチパチパチパチ・・・・

「おめでとうございます。
二連敗するとは予想だにしませんでした」


賞賛の拍手をしながら、ラティオスは視線をザングースの目に
合わせた。ゴルダックのような疑いのない、スッキリした表情だ。
それを見た途端、ザングースはへなへなと床に崩れ落ちる。
どうやら溜まっていた緊張が、一気に解けたようだ。


「フフ…そんなに嬉しいですか?」
「当たり前だろ….ハハハ…」


テーブルの上から身を乗り出して、ラティオスは眉を吊り上げ
た。何しろ命が救われた上に、賭け金の三倍返しまでが待って
いるのだ。嫌でも口元がにやけてしまう。



「さあ、こちらが賞金の260万円になりま…」

「ちょっと待って。」


ラティオスの言葉を止めたのは、三番手のワカシャモだった。
ラティオスの札束を渡そうとする手が、ひょいと引っ込む。


「どうしました?」
「わたし…見たわ。こいつさっき、別のカードを懐から取り出してた」

「は、はあっ!!!?」


ご満悦だったザングースの顔に、戦慄と恐怖が走った。
正面のラティオスばかり意識しすぎて、隣にワカシャモが
いるのを忘れていたのだ。ラティオスの首が、蔑むよう
な目つきで振り向く。


「へぇ…?」

「し、信じるなよ!!? こんな奴の証言なんか、デタラメに決まってる!!!!」

「デタラメ言ってるのはあなたでしょ。
ディーラー、こいつまだ沢山のカード持ってるわ」

「なるほどなるほど….幸運なはずですねぇ…」


ルール違反者が出たというのに、ラティオスはむしろ嬉し
そうだった。最も、ザングースはその理由をじっくり
と『体験』する事になるのだが・・・


ガシッ…!!

「ひぇっ…あ、待っ…」
「ちょっと失礼しますよ?」


ザングースの両足を、電光石火の早技ですくうラティオス。宙ぶら
りんの状態にされ、懐からは何枚ものカードが床にこぼれ落ちた。


「言い訳を聞くまでもないですね」

「ひいっ…だ、だって死にたくなかっt…」

「もう喋らないで下さい。
あなたみたいなペテン師の運命なんて、僕は知らない」


死刑を言い渡されるより、ずっと深く心臓に突き刺さる言葉だった。
ゴミをみるような眼で見られ、恐怖よりも孤独感に襲われる。


「ま、待てよ….俺はいったい…」

「はぁ…じゃあ大サービスで構ってあげますよ。最後ぐらいは」


ラティオスの小さな口とはいえ、ザングース程度を獲物に
するには充分だった。彼の頭を掴み、脚先から面倒臭そう
に押し込んでいく。もはや、味わう気力すら抜けてしまったようだ。


「せ、狭ぶぅっ…んんっ、んんんんぅ…!!」

「・・・・・」


悲しげな声も完全に無視し続け、頭もすっぽり口内へ収め
るラティオス。そのままゴクリと喉を鳴らして、ザング
ースには窮屈すぎる腹の中へと送り込んだ。



グムッ…もごもご……もご…………

「さて、不謹慎なところをお見せしました。ゲームを再開しましょうか?」

「え、ええ….お願い…」

「他の皆さんも、ズルしたければしてもいいんですよ?
バレなきゃ何でもアリですからね」


ワカシャモも他の参加者も、ディーラー自らが処刑する様子
に圧巻されたようだった。彼の大きく膨らんだ腹からは、
もう何の抵抗も感じられない。恐らくせま過ぎる胃袋の
せいで、胃壁に呼吸を封じられて窒息したのだろう。



「ではMs.ワカシャモ、カードをどうぞ」

「・・・・・」


それからしばらく、ワカシャモ以外の参加者は、ラティオス
の腹が次第に小さくなっていく一部始終を見せつけられたという。





<2011/08/08 19:04 ロンギヌス>消しゴム
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