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雷鳴の閃光 − 旧・小説投稿所A

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雷鳴の閃光

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太陽が沈み、代わりに月が夜空に舞い上がる。
満月の月光が大地を照らす。
「ティナ・・寒い・・?」
「ううん・・暖かいよ。心配しないで。」
服代わりの防具はジンオウガに剥がれたままでインナーだけの私にとって夜は寒いものだった。
ブルブルと震える私に気づいたジンオウガは私を暖めてくれた。
ジンオウガが私を抱き取る。
流石はモンスターと言うべきか基礎体温が高く、こうしているだけで、十分な熱を私に与えてくれた。
「ティナ・・ずっと・・一緒・・」
私の意識は次第に微睡みに溶けていった。

 * * * 

ジンオウガの背に乗り、自分の足では行けないような秘境に連れていってもらった。
ケルビを狩ってもらい、皮を剥いで簡易の服を作った。
ご飯だってジンオウガに作ってもらった。
電撃で灼くものだから真っ黒焦げになるがそこさえ我慢すれば決して悪いものではない。
・・・今日もそんな一日だと思っていた。
「・・ティナ・・人間・・匂い・・する・・」
「・・ハンター・・?」
と、私たちの前方に二つの人影。
赤い服に似た防具を纏い、細身の武器。
  ーーギルドナイトーー
ギルド直結のハンター達の精鋭だった。
私は息を呑み、身を固めた。
「ティナ・・あいつ・・喰べたい・・」
「・・今は我慢して・・」
ジンオウガの背から降り、私を同様に歩を進める。

「ティナ・アーゲンハルツ・・」
私の本名・・内部情報は完璧か。
「そのジンオウガをこっちに渡せ。」
「・・どうする気ですか・・?」
「お前もハンター端くれ、言わなくとも分かるだろう?」
ーーモンスターは殺すーー
それ以下でもそれ以上でもない。我々人類に対して有害だから殺す。
・・ジンオウガは殺される。
「ガリド、ガルアはそいつに殺された。ならばそいつもそれ相応の報いを受けるべきでは?」
確かに先輩の命を奪ったのはこのジンオウガだ。
本来なら私はこのジンオウガが怨むはずなのに現在に至ってはこのジンオウガと共生している。
何故・・私はジンオウガと?
先輩の仇を取るべきでは?
「そのナイフでそいつを刺せ。そいつを殺せ。」
そうだ・・私はハンターだ。
モンスターを狩る事が生業だ。
仇を討てる上に元の生活に戻ることができるのだ。
「・・・・・」
私は腰にある剥ぎ取り用のナイフを手に身を翻す。
「・・ティナ・・?」
私の名を単語として紡ぐジンオウガ。
ジンオウガを殺せば・・元の生活に戻れる・・?
いや、戻ることはできない。
先輩はもいないのだから。元に戻ること叶わないのだ。
そして自分の命はジンオウガにあげた。
生きるも死ぬのも彼に委ねられている。
この人間達はジンオウガを殺そうとしている。
だったら、やることは一つ。
 ー彼を護ることー
「ジンオウガっ!にげっ・・・」
口を開き、言葉を紡いだ矢先、鈍い衝撃と共に喉を何かがこみ上げた。
粘っこい液体。鉄っぽい味。
紅い鮮血が中に舞う。
「つぅ・・?」
その細身の刀身が私の腹を貫いていた。
「な、何故っ・・?」
「初めからお前には期待してない。奴の始末は私らがする・・お前もここで死ぬがいい。」
っ・・ここで倒れる訳には・・
膝に力が抜け、体が急激に重くなった。
視界も揺らぎ、体は言うことを聞かない。
「ジン・・オウガ・・逃げ・・て・・・」
精一杯に声を発し、言葉を紡ぐ。
気付けば私の体は地に伏していた。
ーグォォォォォォォオオオオッ!ー
怒りを含んだジンオウガの咆哮。
激しく雷が弾け、乾いた音が響くー



<2011/05/13 23:14 セイル>消しゴム
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