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雷鳴の閃光 − 旧・小説投稿所A
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雷鳴の閃光

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「嬢ちゃん・・そんな格好でいいのかい?」
竜車の手綱を手にした老人が私に問う。
武器も持たず、防具は白衣のようなもので紙に等しい。
そんな人間が狩場に行くのだから尋ねられない訳がない。
「お気遣いありがとうございます。」
私は頭を下げ、ー大丈夫ですー と続けた。
竜車に揺られて四時間。狩場に着く。
「危険な所、竜車ありがとうございます。これはお礼です・・」
腰のポーチから紐で縛った袋・・・10000ゼニーを老人に手渡す。
「・・!?じ、嬢ちゃん!こんなお金っ・・」
老人が引き留めるより先に私は竜車を飛び出していた。

 * * * 

ークォォォォォオオオッー
ジンオウガの咆哮が狩場に響いている。
孤独で悲痛な咆哮だ。
「ごめん・・ジンオウガ・・」
胸が苦しい。こんなになるまでに苦しめたのは自分だ。
ー必ず逢いに来るー って言って一週間も放っておいたのだ、もしかしたら怒っているかもしれない。
「・・いま行くからね・・」
ちょっと歩いただけで息が上がった。
苦しい。休みたい。
だけど、ジンオウガはもっと苦しんだ。
一秒でも早く楽にしてあげたい。
私は重い足を、体を懸命に迅(はし)らせる。
水を跳ね、草を揺らし、木々を抜ける。
ジンオウガ・・そう名を呼びながら。
ーグォォォォォオオオッー
咆哮。かなり近い。
あちらも私の存在に気付いたようだ。

・・・どこにいるの?

そう、聞き取ることもできた。
「ジンオウガ!」
だから、私も叫んだ。

・・貴方はどこにいるの?

私の呼吸は乱れ、浅い。
倒れてもおかしくはない。
だが、倒れないのはジンオウガがいるからだった。
ージンオウガに逢うー それだけが私を突き動かしていた
「はぁ・・はぁ・・はぁ・・」
息は完全に上がり、呼吸はかなり苦しい。
ジンオウガ・・どこにいるの・・?
この狩場はあらかた調べたのだが、見つからない。
ひょっとして・・いや、さっきまで吼えていた。
そんなはずはない。
ーグルルルゥー
「・・・ばか・・」
獣の唸り。威嚇ではない。
忘れなかったあの声だ。
「ジンオウガ・・」
あの時と全く変わらない姿。
少し大きくなったかな?
「本当に・・馬鹿っ・・・」
安堵した私の体は崩れた。
「ティナ!」
地に倒れる寸前にジンオウガが私の体を支える。
「ティナ・・大丈夫?」
「馬鹿・・馬鹿っ・・・」

  やっと逢えた。

「・・・ごめん・・・」
「・・寂しかった・・」
「赦(ゆる)してくれる・・?」
ジンオウガが頬を舐め上げる。
「・・・ありがと・・」
「ティナ・・もう離れない?」
「えぇ・・ずっと一緒・・」
私はその前脚に優しく抱きついた。
ジンオウガはもう片方の前脚を重ね、顔を寄せる。
ジンオウガなりの抱擁だった。
私はもうハンターを辞める。
己とモンスターが傷つく仕事はもう辞める。
私はこのジンオウガと生きていく。
モンスターを狩るのではなく、互いに認めあって、共生する事は可能ではないのだろうか?


    私はその礎になりたい。



 * * * 

ーおい・・知ってるか?ー
ーああ・・人間を連れたジンオウガだろ?ー
ー・・ティナ・アーゲンハルツだってよ。ー
ー何っ!? 竜語の聖女が?ー
ーそうだってよ・・ー

時々、狩場に人間を連れたジンオウガを見ることがあるとハンターの間で噂になっていた。
たまに他のモンスターと会話している事があるという。
何を言っているのかはわからないが会話していた。
モンスターと喋れる・・竜語の聖女。


「お願い・・少しここから離れてくれないかな?」
彼女の前にはリオレウス。
不機嫌そうに喉を鳴らしている。
・・交渉は決裂。
「・・・ごめんね・・行こうかジンオウガ。」
「次はどうするの?」
「・・・どうしようか・・?」
彼女を悪く言うハンターもいる。
だが、それが正しいとは限らない。
彼女は傷つく事なく手を取り合える世界を求めていた。
彼らは、雷鳴の閃光と共にその歩を進める。

「ジンオウガ・・」
「ティナ?」
「ずっと・・一緒だよ・・」
 




<2011/05/13 23:15 セイル>消しゴム
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