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草の根かきわけて − 旧・小説投稿所A

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草の根かきわけて
− 失った姿 −
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空が見える。真っ青な空。あれ? 俺、どうしたんだっけ?

 「うん・・・いてて」

体を起して立ちあがると、なぜか違和感を感じた。

寝ぼけまなこをさすると、いつもの岡だった。

 「いつの間にか寝ちまってたのか。俺寝る前何してたっけ?」

ぼーとした頭で思い起こす。



確か裏裏森にビンバと二頭で探検にいって、それから・・・・・



!?



一気に眠気が吹き飛んだ。俺はあわてて近くの湖へ向かった。

俺の体を湖面に写してみる。

血は・・・出てないな。

四足もちゃんとしている。

長い尻尾、爪も大丈夫だ。

どこも怪我はしていない。



 「ふう、良かった」



・・・・・・・・・・!?



 「え、ええ!? なぬうううううううう!」



そこに映っていたのは俺じゃなかった。



今、一番見たくなかった姿。



オオカミだった。





 「夢だな。これはうん、悪い夢だ。寝よ寝よ」

ったく悪い冗談だぜ。まだ目覚めてないんだなきっと。

けど

感覚がいやにはっきりしてやがる。夢と現実を間違える事なんてあるのか?

いや、まさかな。有り得ねぇ。



試しに自分の腕をガブリとやってみた。

 「いだだだだだだだだ」

痛かった。半端無く痛かった。ってあれ?



 「夢じゃねえ」



いやいやいや、んな馬鹿な!? 一体どうなってやがんだ?

俺は確かに昨日ビンバと森へ行って、狼に襲われたはずだ。それは間違いない。じゃあ、今ここにいる俺は誰なんだ? ちくしょう、頭がこんがらがってきやがった。



もう一度じっくりと自分の体を見渡す。

ふさふさの毛に長い尻尾。そして恐ろしい爪。どう見ても狼だ。間違っても鹿じゃねえ。



まさか、俺は俺じゃない・・・とか? どんどんと不安が膨れ上がってくる。思考が悪い方向へ行きやがる。

 「そ、そうだよ。うちの群れを見にいこう。そうすりゃ何か分かるかも知れない」

正直、気休めだ。それでも、今の俺にとっちゃわらにもすがる思いなんだ。

俺は真っすぐ自分の巣がある方角へ向かった。





 「おーい、誰かー」

今の姿の事なんてみじんも考えずに仲間を呼んだ・・・

 「だーれもいやしねーの」

辺りはすっかり静まり返っている。一体みんなどこに行っちまったんだ?





しばらくてくてくと歩いて行くと、仲間たちの姿が見えた。けど、なんか様子がおかしいぞ?

 「まさか・・・あいつがな」

 「狼に襲われるだなんて」

 「本当にいたんだね」

 「痛かっただろうに・・・・・」

 「うぅっ可哀想なルンバ」

物々しく話し込んでいた。って今、俺の名前が!!?

 「詳しく聞かせろ!」

いてもたっても居られず、俺は飛び出した。




 「「「「「で、出たああああああああああ!!!!!」」」」」




一瞬の間の後、蜂の巣をつついたような大騒ぎになっちまった。みんな蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げていく。

 「お、おい!?」

一瞬にして1匹取り残された俺。悲しい。

 「みんな、ま、待って・・・・・」





後には、絶望しか残されてはいなかった。





あけましておめでとうございます。
<2013/01/03 06:29 ぶちマーブル模様>
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