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草の根かきわけて − 旧・小説投稿所A
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草の根かきわけて
− 初めての”最期” −
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軽くですがグロ表現あり







 「ひいっ!」

 「な、なんだよ!?」

突然ビンバのやつが俺に飛びついて来た。

 「ごめん、俺が木の枝を踏んだ音だったわ」

 「やめろよ・・・」

正直俺もこの空気には押しつぶされそうだ。少しずつ後悔の念が頭のなかにもくもくとわいてきた。

 「さっ、早く行こう・・・ぜ」

俺は黙ってうなづいた。





その後ろからついてくる影に、二頭は全く気がついてはいなかった。

 「そう・・・そのまま、進みなさい」

喜びを押し殺したその声は、どこにも響く事はなかった。





突然、ビンバの脚が止まった。

 「おおっ、どうしたんだ?」

 「なあ」

 「ああん?」

なぜだか顔が蒼ざめているように思える。

 「もしさ、もしもだぞ。今ここで襲われたら、俺を置いて逃げたりしないよな?」

 「はぁ!?」

何を言い出すんだよ。縁起でもねぇ。

 「答えろ! 今すぐ!」

 「そっ、そりゃあ一緒に逃げるさ」

ビンバの必死の形相に押されて、思わず俺はそう答えた。

 「そうか、なら」

???





 「にげろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

言うや否やビンバは全力疾走を始めた。

 「お、おい待てよ。どうしたんだ?」

俺もあわてて追いかけ始める。



ビンバの足音、俺の足音、そして・・・おお? もう1つ足音が。

 「う、うわあああ!?」

恐る恐る振り返ると、鋭い爪と牙を持った生き物が真っ直ぐこっちへ向かってきていた。

 「あ、あれってまさか」

 「何も言うんじゃねえ! 走れ!」

退治する? 冗談じゃねぇよ!

今捕まれば間違いなく



殺される



元々俺は走るのはあまり得意じゃない。ちくしょう、こうなるならもっと鍛えておけば良かったぜ。

 「はっはっはっ」

すぐ後ろから息使いが聞こえてくる。捕まってたまるかよ。

ビンバは俺より少し前を走っているが、徐々に距離が開いていく。



ズドンッ



突然地面が俺にぶつかってきた。いや、俺が倒れたのか。

 「捕まえた」

 「ひい、は、離せよ!」

 「離せと言われて離す馬鹿はいない」

恐怖に飲まれた俺は必死に首を振る。

 「ビンバ! ビンバー! 助けてくれー!」

悲痛な叫びは、もう友には届かなかった。



なんだってんだ。俺は置いていかれたくないくせに自分は俺を置いて逃げるのかよぅ。

そうしている間にも、そいつは俺にのしかかり今にも牙で俺の体を引き裂こうとしていた。

 「いただきまーす」

 「や、やめ・・・ぐわああああああああああ!!?」

痛い。痛いとしか言いようがねえ。目の前で引き千切られた俺の肉を旨そうに飲み込む狼。そのたぎった目は悪魔のようだった。



 「弱い者の肉は強い者のもの」



うるさいじーさんが言っていたのを思い出す。ガキの頃は聞き流していたがこういう意味だったのか。

いつの間にかビンバの姿は見えなくなっていた。

 「ちく・・・しょう・・・生まれ変わったら・・・ぜってーに・・・狼を全員ぶっ潰してやる・・・・・」

捨て台詞を吐き終えたところで、目の前が真っ暗になった。





<2012/12/30 15:56 ぶちマーブル模様>消しゴム
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