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草の根かきわけて − 旧・小説投稿所A

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草の根かきわけて
− 幕開け −
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---月明かりの下、2匹の草食動物が語りあっていた。---



 「え? それは本当かい?」

肉を食べる動物・・・そんな者がこの世にいるのだろうか?

 「ああ、こーんなに口がでっかくて、耳が三角にとがてって、恐ろしく鋭い爪を持ってるらしいぜ!?」

 「まじかよ。こええ」

こいつの話にはいつもビクビクさせられる。まあ、半分は嘘だから気持ちも半分に聞いているが。

 「そいつは、なんていう動物なんだ?」

 「狼だよ。オ・オ・カ・ミ」

オオカミか。いかにも噛みついてきそうな名前だ。

 「俺達鹿も襲われちまうのか?」

 「ああ、犠牲になった仲間が何頭もいるらしい」

こええ。こええよ。

 「できる事なら会いたくないもんだな」

 「全くだぜ」






友獣の”ビンバ”と別れた”ルンバ”こと俺は、自宅の巣穴から月を見上げていた。

 「月ってきれいだなー大好きだよ。生まれ変わってもずっと月を好きでいたいもんだぜ」

少し欠けた月。満月まではあと数日だろう。

 「今度の満月のよるには、裏裏森まであいつを誘って冒険に行くぞ」

裏裏森。誰も寄りつかない不気味な森だ。それだけに心をくすぐってくる。漢ってのはいつも誰も通った事のない道を進むもんだ。

俺はわくわくとしていた。この計画が運命の歯車を狂わせるだなんて、これっぽっちも思っちゃいなかった。





 「ええー!! う、裏裏森だって!?」

 「そうだ。わくわくするだろ?」

ふふふ、この驚きよう。

 「あそこには奴がいるんだぜ?」

 「ん? 奴って誰の事だ?」

あんなとこに知り合いなんていたっけか?

 「オオカミだよ。狼」

 「オオカミってあの」

この間話してた、動物の肉を食べる凶暴な

 「そのオオカミがあの森にはいるんだよ!」

はん、馬鹿馬鹿しい。

 「それならよう。そのオオカミってのを俺達で退治してやらねえか?」

うん、それに決まりだ!

 「おいおい、おめえ正気か?」

 「どうしたよビンバ。さては怖くなったな?」

 「こここここ、こ、こ、怖くなんか」

図星だ。これは完全に図星ですなぁ。

 「よーし、行くこと決定!」

 「なぜそうなる!!?」





鬱蒼と森が茂っている。陽の光は地面までは照らしてはくれない。時々不気味な唸り声も聞こえてくる。

 「ほ、本当に来ちまった」

 「うっわあ・・・さすがにこれは腰が引けてくるな」

そんな中でもなんやかんやでついてきてくれたビンバはやっぱり親友だ。



ごくり・・・



 「ど、どうするよ?」

 「そうだな、まずはこの先にあるっていう神秘の泉とやらを拝みにいこうぜ」

 「お、おう」

こうして俺達は、二度と戻れない道に脚を踏み入れたんだ。




ビンバはバンビを逆にしただけです。
ルンバは突然ひらめいたのです。
<2012/12/29 13:18 ぶちマーブル模様>
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