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暗翳の空 解き放たれし竜 − 旧・小説投稿所A
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暗翳の空 解き放たれし竜

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「ご…ごめんなさい!」

僕は咄嗟に謝った
相手は憎たらしい上司ではない、竜だ
人間なんか一瞬で殺せる力を持っている
そんなものに僕が太刀打ち出来るはずがない

「私はこうして我慢しておるのに…
 好物を喰ったなら私もお前を喰おう」

「…!!」

目の前にある竜の顔
光源は見当たらないが、紫色の鱗が輝いている
その不気味さが僕の恐怖心を余計に煽ってきた

更に竜から放たれた言葉
ねっとりとした唾液を引きながらの舌なめずり
遠回しに死という運命を突きつけられた…

これはマズイ、逃げなければ…


ドシン!!


地面が揺れたような気がした
その直後、僕の視界に飛び込んできたのは紫色の巨大な手
木よりも太く、頑丈そうな手が逃げ道を塞いでしまう

完全に僕は袋の鼠だ
どう足掻いても非力な人間の力では、どうにもならない


ぐぱぁ……


何かが開く音
それが聞こえた直後に背後から生暖かい息がかかった
ブルルッと勝手に体が震える
恐る恐る振り返れば、竜の口内が迫ってきていた

びっしりと肉を敷き詰められたような口内
それは唾液で妖しく光り、ぐにゅぐにゅと蠢いていた
人間なんて一瞬で食いちぎる事が出来そうな牙までもが鮮明に写し出される

嫌だ嫌だ…喰われたくない!

そう思っても無駄だった


バクン!!!


視界が森から暗闇に変わる
蒸し暑く、生臭い臭いが鼻につく

間違いない、喰われた

足元で柔らかいものが動いている
恐らく舌だろう
グチュグチュと音をさせながら僕の体を這っていく

卵の白身のような粘り気がある唾液
それを塗りたくられた僕の体は自由が効かず、翻弄されるだけ…

動けなくなればなる程、舌が活発に動き出す
乱暴に舐めあげられ口内壁に押し付けられた
むにゅっと伸びる肉壁は形を変えながら僕の体を受け止める
そこにまた舌が襲い掛かってきた

ベロベロと何度も舐められ、味と体力を奪われていく…

「くっ…うぁぁっ!!」

舐め回しだけではない
ぬるりとした牙の間に挟まれると甘噛みもされた

ゆっくりと食い込んでくる牙
死を目の前に僕は痛みに耐えるしかなかった
何度も何度も噛まれては、肉の感触を伝える

幸い出血はない、手加減されたようだ
けれど体中がヒリヒリと痛む
所々に凹みがある…歯形が付いたらしい

痛み思いをしたが、僕はまだ死んでない
胃袋で弄ぶつもりなのだろうか?
どんな理由にせよ、ピンチなのは確か
でも一つだけ脱出方法が……

「!?」

突然舌が大きくうねり出す
その上にいる僕の体も大きく揺れた

気づけば奥へ滑り出していた
舌も少しずつ傾斜をつけて僕を送っている
ついに呑み込まれてしまう!逃げなければ!

必死に舌にしがみついてみるが、ヌルッと僕の腕をすり抜けてしまう
足が別の肉壁に包まれる
ぐにゅぐにゅと蠢き、僕を引きずり込んでいく

何も出来ない
そうして僕は……


ごくっ


呑み込まれた

全身が窮屈な肉洞の中で圧迫される
呼吸もしづらく、頭がボーッとする…
けど、それもすぐ終わった

ドチャッと音と共に胃袋へ落ちた
広めの空間で僕は体勢を立て直そうとする

「わっ!!」

胃壁が思ったより柔らかかった
少し押せば、ぶにゅりと手を呑み込みながら形を変えていく
また転んでしまった僕に容赦なく胃壁が襲い掛かる

そしてムニュッ、モニュッと揉み込んできた
気持ち良い気もするが、今後の事を考えると落ち着いてはいられない

もし、あの事が本当ならば全てにおいて合点がいく

誰がこのチャンスを逃がすものか…!

僕はすぐに目の前の胃壁を押し退け、噴門がある方へと顔を向けた


……よし 。:.゚ヽ( ´ω`)ノ゚.:。 ゚
<2012/10/22 18:29 長引×どんぐり>
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