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魔女達の晩餐 − 旧・小説投稿所A
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魔女達の晩餐

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喰われたくないー

その一言だけが、今のラッシュを駆り立てていた。

目の前で子供一人、それもすぐ隣。

いつの間にか目隠しをはぎ取り、中央のベルが丸呑みにされる光景を目の当たりにし
ていた。

肉厚の舌がベルを蹂躙し、唾液を塗り込む。

そのまま口内に引き込まれ、ぐちゃぐちゃと生理的嫌悪を植え付けられるような水音
をこぼしながら

味わい尽くし、丸呑みにした。

ぷっくりと中央の逞しい喉皮を膨らませ、胃袋へと食道を嚥下されていった。

外からはその音を計る事は叶わないが、内部では恐らく

喰われた現実、体に絡められる粘液、命を感じさせる脈動。

様々な音でありふれた空間を味わっているのだろうか。

「ほぅら……お前の番だぞ? 猫」

その言葉でラッシュは時遅く、現実に叩き落とされた。

フローラの意識はこちら、右にシフトした様で

前肢に拘束されているラッシュを舐める様に卑下していた。

今にも食い付こうと唾液に塗れた口腔を目一杯に広げ、捕食寸前を展開していた。

「は、離すニャ!」

バタバタと矮小な抵抗を始めるラッシュ。

しかし、その程度の膂力では地獄獣フローラの前肢を撥ね除ける事などできない。

展開された口腔。舌、下顎を伝って灼熱の唾液がラッシュに滴る。

火傷、とまではいかないが、やんわりとラッシュの体を灼き体力を奪っていく。

いつまでたってもラッシュは補食されなかった。

口は展開されたままで、フローラも襲いかかる素振りを見せなかった。

しかし、目前には捕食者の消化器の入り口があるのだ。

相当な恐怖、プレッシャーに自然と体が晒されてしまう。

ラッシュの体は痙攣を始め、さらには呼吸まで浅くなっている。

舌や牙で抵抗させ、体力を奪う者もいれば、

フローラの様に自然現象を利用して、衰弱させる者も居る。

「お前は血祭りにしてやる」

ここで、フローラが捕食の素振りを見せた。

前肢の拘束を解き、ぐあっとラッシュを補食しようと襲いかかった。



ーラッシュさん、今です!ー



ラッシュに響く白怜の声。

それは細密に話し合って決めた、突破口。

通気口より脱出を計る。確率はそう高くない。

この地下空間に、竜のトレゾア。ケルベロスのフローラ。

機を窺い、逃れたとしても再度、確保される確率のほうが高い。

しかし、こちらには最大の武器。小柄な事。

「っ!?」

ラッシュがフローラの出鼻を挫いた。

捕食動作に移ったフローラの頬を引っ掻いたのだ。

疲労困憊なラッシュに油断していたフローラは見事に怯んだ。

すかさず、体を反転し通気口に向かう。

「姐さん! 餌が逃げるぞ!!」

白怜とラッシュが合流。

慌てて、追撃に向かう魔女組。



2匹の囁かな脱出かー



2体の捕食が先かー




刹那の反撃が煌めく。





<2012/04/15 19:43 どんぐり×セイル>消しゴム
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