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【保】誰という姿 − 旧・小説投稿所A

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【保】誰という姿

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「痛っ・・・」
幸い致命傷を避ける事は出来たが暫くはあまり動く事は出来なそうだ。
「・・・ぼうや・・大丈夫かな・・」
あの時は思わずああ言ったが正直あのガイアの獲物になった者で逃げ切れた者の名は聞いたことがない。
・・あの仔を失っても・・もう慣れた事だ。
体を起こそうとして、前脚に激痛。
惨めに倒れ込んだ。
「・・何度戦っても殺そうとしなかったくせに・・」
奥歯を噛みしめ、前脚に力を・・・
「クク・・惨めだな・・シルク。」
「・・・ガイアっ!」
あいつが帰って来た!体を急いで起こしつつ睨みつけた。
「貴様に良いことを教えてやろう・・」
「あなたの事だからあの仔を食べたんでしょ!もっと口元を綺麗にしてからレディに会いに来たら!?」
「そうだ・・ガブモンは私の腹の中で安らかに眠っている。」
ショックは受けた。できるならそうであって欲しく無かった。
唾液に濡れたその口元を見れば一発で分かる。
その生臭い唾液の洗礼は私も受けた事がある。
血が無いからにして恐らく丸呑み。
「・・・減らない口を・・」
「それで何用?あの仔だけじゃ喰い足りなかった!?」
「・・ほぅ・・」
「私の仔たち・・二十三匹も食べておいて今度は私を食べるつもりっ!!」
ニヤリと嫌らしく笑みを浮かべるガイア。
私の背筋が張りつめ、一瞬、恐怖を覚えた。
「その通り。喰い足りなかった。それにそろそろお前を喰らいたいと思ってな・・クフフ・・」
まずい・・本気だ。逃げないと・・・
「今度は逃がしはしない・・」
「ぁっ!」
特に酷い前脚の怪我を容赦なくガイアが掴む。
鈍痛が体を襲い、抵抗出来ずに倒される。
「さぁて・・クク・・味見と行こうか?」
四肢を広げるように私の上に乗りいきなり唇を奪う。
クチュッ・・・ヌチュヌチャッ・・・
グチャリ・・ネチャネチャ・・
粘っこい水音を奏で、ガイアの粘液が私の口内で体液と混ざり合いたちまち口内が粘つく。
それどころか舌を押さえつけられ唾液を無理矢理、飲まされた。
「どうだ?私の唾液は美味いだろう?」
「げほぁっ!ごほぁっ!ぇっ・・おっ・・かぇっ・・」
ネジャリと舌が口内から引き抜かれ私の口とガイアのそれと唾液の糸のアーチがかかった。
美味い訳がない!こんなもの飲み続けたら即死だ!
「あ、あんたの唾液なんか生ゴミよ!冗談じゃない!」
「この状況でまだそんな口が聞けるか・・・なら体に教えてやろう!」
グリッ・・グググググッ・・・
「っ!ああっ!やぁん!や、やめてぇ!」
痛みを伴うほどに四肢が押し広げられ、付け根が痛む。
その上、首筋に牙が立てられる。
「随分と艶のある声をあげるな?気持ちいいのか?どうなんだ・・シルクよ?」
「ぁうんっ・・う、うるはぁいっ!」
「見え透いた虚勢を・・」
バクッ・・クチュクチュっ・・
四肢を押し広げられたままいきなり頭部を咥えられた。
視界が真っ暗になり、舌の愛撫が直撃する。
微かなあの仔の匂いの混じった生臭い吐息を受けながら生暖かい唾液が顔に舌によって塗り込まれていく。
「ぁぶぅ・・ぁん・・ん、んんっ・・ぁ・・ん・・」
舌が私を。
舐める。舐める。舐める。舐める。
突如、視界が光溢れた。
私の頭部が吐き出されたようだ。
毛皮を伝い粘性の高い唾液がボタボタと地面に滴っている
汚らしい姿。
「お前が喘ぐとはなぁ・・どうだ?もういちど咥え舐めして欲しいか?」
私は静かに泣き始めた。
「・・・諦めたか・・ならば喰らうとしよう!」
ガイアが口を大きく開く。
私の視界はそれにすっぽりと覆われる。
・・私は・・死ぬのか・・



<2011/11/25 21:38 セイル>消しゴム
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