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バベルの塔 − 旧・小説投稿所A

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バベルの塔
− 敗者復活戦 −
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グプァ….ねとッ……ポタッ…ポタッ…

「ひ、ひぃぃ……」


ぬらりと光る牙から垂れるのは、粘性の強いバビロンの唾液。警備員
はそれを見てガクガクと震え、腰を抜かしていた。自分の膝の上に、
ねちょっとした涎が滴り落ちてくる。


「恨みも面識もないが….フフ、まあ許せ」

「や、やめろぉっ……」


目の前には大きく膨らんだお腹、頭上には唾液に濡れた牙と舌。
絶体絶命の状況の中で、警備員はただひたすら怯える事しか出来
なかった。腕で顔を覆い隠しながら、ほんの少しの慈悲を乞う。


「た、頼む….金をやるから…見逃して……」

「ほう…? その前にお前の体でも貰っておこうか」

「う、うわぁぁぁぁぁッ!!!」










・・・・・・・・・




















・・・・間違いなく、十秒以上は経過したはず。
にも関わらず、牙を突き立てられる事も、爪で引き裂かれる事もなかった。
おそるおそる、顔を上げると・・・・




「フフ….今、期待したよなぁ?」

「え…」

「助けてもらえるんじゃないか、って….一瞬思っただろう」

「そ、そんな…!!」


嘲笑うような口調で喋った直後、その口はあっという間に警備員の
頭を包みこんだ。声にならない呻き声を漏らし、舌肉に顔を埋めら
れながら、バビロンの唾液を嫌というほど呑まされる。


「うぅッ…あ…ゲホッ…!!」

ぬちゅ…れろッ….ハグッ…


その後はまるで流れ作業だった。ギネス級の速さで腰を呑み込まれ
ると、もう外の空気に触れているのは下半身のみ。上半身は先に食
道で、押し寄せる肉壁に揉まれている。


「ウブッ…ぶぅ…ぅ……」

「フフ….ごちそうさん♪」


「ゴクッ」という痛快な音を立てて、バビロンの喉はわずかに上下した。
空を蹴っていた脚の先も、その喉の引力には敵わず、ズルズルと奥へと
引きずり込まれる。警備員を示している膨らみが胸から腹へと移動した
頃にはもう、バビロンは食後のゲップを盛大に吐いていた。


「グェェェップ…!! うぷっ…ちと食い過ぎたか…」


容量オーバーのお腹は膨らんでいるというより、床に向かって多少
垂れ気味だった。その胃袋の中で悶絶しているのであろうが、抵抗
も時間に反比例して弱まっていく。

しかしいっときの満足感に浸るバビロンの耳に、聞き慣れない男の
侮蔑的な声が飛びこんできた。



「野蛮な喰らい方だな…..外でやられたら我が社の恥だよ」

「フフ…そりゃあいい。
この会社に赤っ恥をかかせる為なら、今すぐにでもそうするさ」

「ほう? だが残念、君はもうこの部屋から出られない」


バビロンは背後でドアの閉まる音を聞いた。
もう出られない・・この男と決闘するしかない。


「…随分と余裕だな。私を見た大抵の奴らはビビってくれたんだが」

「フン…私をそこらのボンクラと一緒にしないでほしい。あくまで幹部だ」

「それはお偉いことだな….!!」


キラリと光る爪を構え、眼を細めて「幹部」男を睨めつける。
この状勢のままだったら、難なく勝ち得たかもしれない。
………幹部が懐からメモリを引き抜かなければ。




キチッ…『CAMERA(カメラ)!!』


「君は私を初対面だと思うかもしれないが…実はそうじゃない。
私は5年以上前から、ずっと君を…そして君の仲間とやらを観察
してきた。将来、我が社に危険を及ぼすかもしれないからね」

「観察…?」

「そう。私は丁度その頃、ここの諜報部に所属していてね……
君たちが恐れ、闘ってきた相手を全てこのカメラに収めてきた」


男は首から下げたアナログカメラを、そっと丁重に持ち上げる。


「そして今日、君が我が社に侵入したと聞いて驚いたよ。
その当時の苦労が、今にも私の部下となって蘇るだなんて!」

「何を寝ぼけたことを…?」

「フン….今に分かるさ。カメラメモリの素晴らしさが…」


コホンと咳払いを一つ、そしてメモリをカメラの記憶部に突き立てた。
メモリは見る見るうちにカメラに吸い込まれ、ついに一片も見えなくなる。



「カメラとは記憶….その当時の記憶を保存できる手段……だかそれだけではない!!」

「!?」

「現像するのだ……君の仲間が闘った、その兵を!」


カメラから巨大な火の玉が現れ、ぐるぐると男の周囲を回りだした。
それは四つの光球に分裂すると、男の両側に二つずつぷか浮かぶ。
そしてカッと眩い閃光が目を閉じさせた。





「……誰だ、こいつら」

「フハハ…まあ君には理解できまい……」


男の右側に二人、左側には二匹のポケモンが立っていた。
人間の方は豪華絢爛なマントを身につけた者と、幹部男と同じ黒スーツ男。

ポケモンの方は白馬を思わせる風体のアルセウスと、艶のある黒い体に赤のラインが走った……カイオーガだった。

バビロンはその中の誰とも面識がなかった。



「フフ….ゲーチス、エクサ=バイト、アルセウス、そして裏カイオーガ。
君の仲間がかつて、命を賭して闘った相手だ。最も、この中の誰一人とし
て勝利は掴めなかったがね」

「なんだ、あいつらに負けた連中か」

「そう…一度は『負けた』連中だ。だが二回目も敗れる訳ではない。
それに….こうすれば問題なかろう?」


幹部男はポケットから戦闘用のメモリを四本まとめて取り出すと、
従者のように動かない彼らに突き刺した。


キチッ…『CAIVER(聖剣)!!』
キチッ…『BOMB(爆弾)!!』
キチッ…『UNICORN(一角獣)!!』
キチッ…『OCEAN(大洋)!!』


「おうおう….流石は(無駄に)お金持ちな企業だ。メモリも売るほど
あるという事か」

「その通り….だが今我が社が欲しているのは金ではない、君の亡骸だ」



カメラメモリで復活した者達の瞳には、確かな生気が宿っている。
バビロンは内心の微かな恐れを押し殺すと、爪と牙を武器に立ち向
かっていった。






<2011/10/20 00:32 ロンギヌス>消しゴム
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