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ー 戦局 ー
壱回戦：ラファエル勝利
弍回戦：バビロン勝利
参回戦：？

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運がどちらに傾いているのかどうかを決める、第三回戦。
イカサマに対する縛りルールが取り決められたため、バビロンは今回からは純粋な頭脳戦に持ち込もうとしていた。


黒服の手によってシャッフルが執り行われる。
それが12枚ずつ分配され、勝負開始。
先攻は、先ほどの勝負で大貧民だったラファエルからだ。
ニヤッと牙を見せ、４のダブルを投げ捨てる。


バビロンは手元にある数少ないダブルの中から、10のダブルを捨てた。
ところがJのダブルの返り討ちに遭い、先攻権を獲得することは出来なかった。

しかし次順、ラファエルは大きく動いた。

この12枚勝負では珍しい、６のトリプルを提出してきたのだ。


「バ…バカな…...!!?」

「おやおや今日は運がいいようですね…」


硬直するバビロンを余所に、ラファエルの猛攻は続いた。
ラッキーな６のトリプルを披露した後も、底のない壺から引き抜いてくるように、ドンドン強力なカードを出してくる。

いや、実際は５や６といった、それほど恐ろしいカードではない。
しかしそれをトリプルで出されては、バビロンも堪ったものでは無かった。

結局ラファエルは連続攻撃の末、バビロンに「パス」を三回も言わせて場を流した。
次に彼が出してきたのは10。



「（ここから反撃しなければ未来は無しか….）」


既にカードの量に相当な差がついていた。
ラファエルは残り２枚を切ればあがりという状況に対して、バビロンはまだ８枚もある。

その中から弱いカードを出せば、向こうは必ず反撃してくるだろう。
バビロンは熟慮した末に、持っている中では最強のAを提出した。


「（通れ…...パスと言え…！！）」


バビロンがお経の如く念じていると、ラファエルはスッと顔を上げた。
まるでこちらの思考を全て読みきったような、恐怖や不安の欠片もない表情。
バビロンはそれに期待したが、現実は彼に背中を向けた。



・・・・パサッ


ーーーダイヤの２だった。
物理的に越えることの出来ない峰が、バビロンの前に大きく立ちはだかる。
この終盤戦、最後の最後で、彼はなす術もなく「パス」と呟いた。




「…え、いいんですか？ フフ…それでは遠慮なく…..」


ラストにラファエルが提出した４で、三回戦の幕は下りた。
彼は嬉々としてペンを手にとった。戦績表の自分の欄に、誇らしげに丸を書きこむ。




「おい…..イカサマじゃ…ないのか…！？」

「いいえとんでもない。偶然ですよ」


ラファエルはシラを切ったが、バビロンは確信した。
今の三回戦は対等な勝負ではなく、裏でイカサマがはびこっていた。

しかし警察が被疑者を逮捕するのと同様に、証明できなければ罪にはならない。
イカサマの証拠を挙げなければ、どんな主張も絵に描いた餅。

ラファエルを敗北に追い込むには３つだ。
ーーーイカサマを打ち破るほどの強運を持って勝負にいくか。
ーーーイカサマをすれば負け、という第二のルールを使い、証拠を叩きつけるか。


あるいは・・・















「….....現行犯…….」

ーーーイカサマが姿を見せたその一瞬、その現場を押さえて白状させるか。

バビロンは運で勝ちを拾う作戦は無理だと思った。
一勝二敗というきわどい流れの中で、運がこちらにつくという予感はない。


「（…..ならばイカサマを理知的に暴いて追い込むか…？）」


これならイケる…と踏んだのだが、よくよく考えれば難易度の高い話だ。
口で証明するには、イカサマの道具やらトリックやら共犯者やらを、四回戦までに探し当てなければならない。
それが出来なければ、四回戦も何の問題もなくイカサマは成功し、バビロンは敗北。
一勝三敗となって、この大富豪バトルは決着してしまう。


「（となるとやはり現行犯…...押さえるか….）」


これも難しいが、他の二つよりは容易に思えた。何より運の要素が少ない。
だが・・・




「（どちらにせよ…..ネタは暴くしかない、か….）」


頭脳やとんちをフル回転させて、その諸悪をスポットライトの下にさらけ出す。

それは言ってみれば時間の問題だった。
ラファエルがイカサマで勝利するのが早いか、バビロンがそれを攻略するのが早いか。

運ではない、頭脳次第で勝利を引き寄せられるギャンブルに、バビロンは思わず身震いした。

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