テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル


バベルの塔 − 旧・小説投稿所A
RSS | 感想 | TOP
バベルの塔
− 決意 −
|<< < 19 / 33 >>|

お勧めBGM:『Kaiji OST Transparent』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「それではまずシャッフルからですが….貴方がしますか?」


バビロンはラファエルには死角となるテーブルの下で、傷まみれの両手を擦り合わせた。
激戦を乗り越えてきたためか、ズキズキと生々しい痛みに襲われる。


「いや….任せる」

「それでは…....」


公正な勝負が行われるとは期待していなかった。
何しろバイオリック側に取っては、会社の存続が懸かっている。

もちろんラファエルの命も賭けられてはいるが、ウォリアは彼を失うことに関してはそれほど恐怖はないようだ。
それは会長席にドッカリと座っている、あの余裕の表情を見てもわかる。

ラファエルはトランプを切り始める。
しかしその不慣れな手つきは、どう見ても初心者そのものだった。
挙げ句の果てにバラバラと数枚取りこぼしながら、何とか全部切り終えた。



「すいませんね、初めて触るもので」

「・・・・・」


彼の素人ぶりを笑っている暇はない。
バビロンは鷹のように目を光らせながら、山札が正確に1/2に分けられ、その片方がさらに半分にされる様子を注視していた。

ラファエルは下半分を自分の手元に、残る上半分をバビロンに押しやった。
警戒心を抱きながらそれを受け取り、カードの内訳を素早く読みとる。


スペード: K Q 9 8
ダイヤ: A 8 7 6
クローバ: Q 4
ハート: K 9

カードを1/4にしたことを考えれば、そこまで悪いこともない。

数については、ジョーカーは1枚のはずだ。
それならば(52−1)÷4によって、それぞれ12枚ずつ。

そして手元にあるカードの総数は12。カード数については公平だった。




「それではこのダイスを振ってください。数の多い方から先出しです」

「……..ほらよ」


十秒とかからない間に、お互いの目が出る。
バビロンが4、ラファエルが5だった。ラファエルが先攻だ。


「追加ルールはシンプルに、8あがり無し、11バックのみです」

「…分かった。初めてくれ」

「それでは…..」


ーーークローバの6
最初のカードが場に投げられた。
まだ強さが弱いところを見ると、やはり向こうも様子見ということだろう。
バビロンは二度も溜め息をつきながら、無難な[ダイヤの7]に指を掛けた。







ーーーいや、違う・・
確かにそれが定石だが、本当にそれでいいのか?
もしかしたら相手はそうやってこちらの弱いカードを削り落とし、逆に11バックを仕掛けてくるかもしれない。

おまけにカード自体が12枚という少なさだ。
少なければ少ない程、この戦略は成功しやすいと言えるだろう。

そう考えてしまうと、序盤とはいえ迂闊なカードは出せない。
結局こちら側の最強である[スペードのK]を出し、裏の裏をかきにいく。



「……パス」


早くも場が流れた。バビロンは再び手を顎につける。


……パサッ

[ダイヤ7]

ーーーハートQ。

[ハートK]

ーーーパス。場流れ。

ダブル[ハート9][スペード9]

ーーーパス。場流れ。


ここまで順調にカードを消費でき、対してラファエルはパスがほぼ連続している。
ここまで連なっていると、本当に弱いカードしか無いのか? とまで思えてくる。

しかし、相手がAや2のような強力カードを持っていないとも限らない。
油断は禁物だ。



[クローバの4]

弱カードを最後まで残すと困るので、頃合いを見計らってそれを出す。


ーーーダイヤA。

「チッ…....パス」


久しぶりに場が流れ、主にバビロンが積もらせたカードは墓場に捨てられた。
しかし丁度その時、ラファエルの目の色が変わった。





ーーーー2・2・2・2


「ば…馬鹿な…!!!?」


ここに来ての最強革命。
それを機にバビロンの脳内で組み立てた方程式はすべて吹き飛んだ。
思考が迷走への一途をたどる。




「こ…こんな…..確率的にはありえないはずだ…」

「ハハ…ビギナーズラックですかね?」

「……貴様…」

「パスでよろしいですか? それじゃ…..」


ラファエルは優雅な笑みを顔に咲かせたまま、ゴミを投げるようにカードを提出する。


ーーーーハート5。


奇跡レベルでしか考えられないはずの革命。
それを受けて、バビロンの高度な思考回路は迷走しかけていた。
組み立てた計算が「焦り」によって壊され、空気に乗せられるまま・・・


[クローバ4]

ーーークローバ3。


「くっ….パ、パスだ」


パスしても8が二枚もある・・・
バビロンは次に来るであろうカードを、8で切ってこの流れを止めようとしていた。
いつの間にか汗が噴き出している手で、8を出す体制を取る。
しかし・・・・




ーーースペードJ。

「く….くそ…」


革命中の11バックによって、一時的ながらも通常に戻ってしまう。
バビロンは8からQに指の路線を変更した。


[ダイヤQ]

ーーークローバK。

「パ….パス…!!」


パスで場が流れたため、革命状態にもどる。
バビロンはラファエルの手札を見て驚愕した。早くも残りカードは二枚になっている。

おまけに、有利な先手はまだラファエルが握ったままだった。



ーーーハートA。

[スペード8]

「くっ….8切りだっ…!!」


ーーこのままでは負ける。
辛うじて場は流せたものの、相手は残りたったの一枚。
危機的な状況なのに変わりはない。

バビロンは沸騰しそうな脳を冷やし、考えられる最善の策を打ち出すしかなかった。


[ダイヤ6]

「(頼む…..!!!!)」


革命状態では、この6こそが手札の中で最強のカード。
この6に屈してラファエルがパスをすれば、こちらはあと二枚。
それも8とQという理想的な組み合わせだ。8を切って必然的に勝利できる。

願うは、ラファエルの屈服。
だが・・・!!





ーーーダイヤ4。


「弱いカードでも革命に備えて出来るだけ残しておく。基本中の基本なのでは?」

「うっ…...あ…ッ…」



喪失感が津波のように押し寄せる。
バビロンは焦点の合わない目で、戦績表の自分のラインに×印が書き加えられるのを見た。
残り4試合・・・・あと2試合負ければ・・・




「この人が生還するのか、それとも私の獲物になるのか…...決定権はあなた次第ですよ?」

「・・・・・」

ラファエルの白い声も、バビロンの耳には届かない。
敗北したショックに苛まれている訳ではない。
勝負中に起こった、あの大革命について考察していたのだ。

確率論で考えれば、まさに奇跡的に稀な出来事。
この12枚ずつで行なう大富豪では、まず起こらないと考える。

しかしそれを現実に起こすために必要なもの。
それは生まれつきの相当な幸運か、もしくは・・・・










「(イカサマ………?)」


しかし何処で、どうやって。
自分の眼が光っている中で、堂々とそれをやってのけたのか?

ーーーバビロンは記憶を巻き戻す。





「あっ……」

そして気付いた。
2が4つ並んでいる光景は、ゲーム開始の前にも見たことがある。
すなわち・・


「(あそこか….!!)」


ウォリア会長がロンギヌスの前で大富豪の話を持ち出してきた際に、参考として見せてきた四枚のカード。
あれは間違いなく2のゾロ目…..つまり革命だったはずだ。

そして山札に戻すとき、それら四枚が一番下に来るように仕向けたのだ。
後はラファエルがカードを切るとき、その四枚の位置を動かさないようにシャッフルすれば良い。

そう考えると、好都合なラファエルの下手なシャッフルとも辻褄が合う。
つまりカードを切る前から、既にイカサマの土台は作られていたのだ。



「ち…..畜生が…」


今さら問い詰めたところで、手の平を返すようにヒラヒラと逃げられるだけだ。
となるとやはり、どんな手を使ってでも勝利をもぎ取るしか道は無い。

やられた方が悪い・・・敗北の対価として、バビロンはこの暗黙のルールを知った。
ならばこれを利用しない手はない。


「(恩は返すもんだよな…...マスター…?)」


ラファエルの胃の中で悦んでいようと悶えていようと、死の淵に立っている事には違いない。
テーブル越しに見えるあの大きな膨らみ。
それを目に焼き付けることで、バビロンは勝利への渇望が沸き起こるのを感じた。



ーー次は勝つ。

例え、イカサマという沼に足を踏み込んでも・・・・





<2011/12/04 10:33 ロンギヌス>消しゴム
|<< < 19 / 33 >>|

TOP | 感想 | RSS
まろやか投稿小説すまーと Ver1.00b