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バベルの塔 − 旧・小説投稿所A

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バベルの塔
− 挑戦 −
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「….案内されるだけなら構わないが….注意しろ。奴の目的は恐らく、買収だ」

「ば、買収….?」

「いいか、奴等が私のような危険因子を、何の報復もなしに帰すはずがない。
だからマスターに金一封を….いや、あの会長なら惜し気もなしに数億円をポンと出す。
そしてその代償として……」

「……バビロンの身柄を引き渡せ…ってことになる訳か」


ここに来て再び、バビロンの計算に圧巻された。
自分がのほほんとラファエルの背中について歩いている後ろで、彼はここまで事態を予測していたのだ。


「(そうだよな…..お茶会するって訳じゃない。まだ戦闘中なんだ…!!)」


頬に平手打ちすると、何だか妙に気が引き締まった。

しばらく廊下を進むと、ロンギヌスはやがて自分がどの部屋に導かれるのかを知った。
金字で「VIP」と書かれている、あの巨大な扉に違いない。




「こちらです、どうぞ」

「….いや、お前から先に入ってくれ」

「かしこまりました」


ラファエルはコクンと頷き、中に居るであろうウォリアに一礼してから入室した。
何かしらの罠が仕掛けてあるのではないかと生唾を呑んだが、今のところは大丈夫そうだ。
しんがりのバビロンを背後に、鮮やかな柄のカーペットを踏む。



「ほっほ….いらっしゃい」

「・・・・?」


入った瞬間から、廊下とは空気が一変したようだ。
冷たい蛍光灯の光に照らされた廊下と打って変わり、ここは暖かく快適だ。

そんな部屋の中央には低く小さなテーブルがあり、その両側には紅色のソファが置いてある。
ウォリアはその片方で、杖を突きながら先に腰を下ろしていた。



「まあ君達も座りたまえ、紅茶でいいかな?」


チラリとバビロンの表情を窺う。まるっきり「よせ」と顔に描いてある。

しかし扉の前で立ち惚けていても話は進みそうにないので、結局ロンギヌスだけがウォリアと面と向かって対話することになった。
いざ座ると、胃壁を連想させるような柔らかいソファに、自分の腰が沈むのを感じた。





「さて、君達もあまり時間を潰したくはないだろうから、早速本題に入らせていただこう。
単刀直入に言わせてもらうが……」



バビロンの予測は見事に的中した。
ラファエルがテーブルの上に銀のアタッシュを置き、その中身をロンギヌスに見せる。

福沢諭吉が、所狭しと詰め込まれていた。
どう少なく見積もっても3億円はある。


「この金で我が社から撤退…..そしてバビロンを我々に返還していただきたい」






・・・・


「質問いいか?」

「どうぞ」

「仮に俺がこの取引を受けたとして…..お前らはバビロンをどうする気だ?」

「フハハ….答えるまでも無いではないか。もちろん丁重に歓迎し…..」













「再び、我が社で汗を流していただく」


バビロンが小声で、「嘘つけ」と吐き捨てるのが聴こえた。
もちろんロンギヌスもそれは重々承知だ。
もしこの会長が、社を転覆させようとした人工竜を再び任務に就かせるほど温厚ならば、敵にワクチンを渡しただけのブースぐらい、許していたはずだ。
ラファエルの餌にすることも無かったに違いない。

ただしあからさまに拒絶するのは場に違和感を産むので、ロンギヌスは手を顎に当て、あたかも思考を巡らせているように振る舞った。
そして・・・・・









「……ダメだ。たとえ10億円積まれても、バビロンは渡さない」

「そうか…つまり交渉決裂ということで良いのかね?」

「ああ」

「フフ….ならば会談は終わりだ、もう君達に用はない。
どうぞ勝負の続きをしてくれたまえ」


ロンギヌスは後先を考えずに取引を終わらせてしまったことを後悔した。
ラファエルが指をパキパキと鳴らしながら、バビロンの方へと歩き出す。
既に疲労困憊しているバビロンに、さらに闘えというの無理な話だった。
ラファエルは顔色ひとつ変えずに、純白の拳を振り上げる。

しかしウォリアが次に発した言葉で、その拳は空中でピタリと止まった。



「…と、言いたいところだが仕方ない。
もうかなり痛手を負った君達が、ラファエルを撃破することなど不可能だ。
いくら敵とはいえ、ワシもそこまで鬼畜なことはせぬ」


しかしウォリアの年老いた瞳の向こうに、代わりの「何か」を期待する色が浮かんだ。



「….それでも勝負をしないとは言わせない。
君達は勝たないかぎり、この部屋から逃げることは出来ぬ。
そ・こ・でだ………」


ウォリアは胸ポケットに手を入れ、何かしら分厚いものを取り出した。
いや、よく見ればそれはカードの束だと分かった。
もっとはっきり言うならばーーーーーーーートランプ。




「今は牙や血が躍るバトルより、上品な頭脳の闘いを見たくての。
ちなみに参加者は、バビロンとラファエルの二人のみだ」

「・・・・・?」

「ハハ…そんな不安顔をしなくていい。
遊び人の君なら必ず知っている、簡単なゲームだ」

ウォリアはトランプ束の上から四枚だけを取り、テーブルの上に表を向けて投げ捨てた。





2・2・2・2




「こ、これってまさか…..」

「…そうだ、革命だ。双方の『宝』を賭けた勝負は、この大富豪によって決めてもらう。
全5ラウンド、勝敗は最終的なポイントによって決めるとしよう」

「おいふざけるな…..誰が受けるといった…!!?」


部屋の隅からバビロンは檄を飛ばしたが、すぐに胸を押さえてうずくまった。
確かに彼がこの有様では、肉弾戦よりカードゲームの方が勝率は高いかもしれない。




「……..畜生が….」

「フフ…それでいい。さて肝心なのは何を賭けるかだが….」


ウォリアは二本の指をピンと立て、自分の賭ける物を示した。

まずはラファエルの命。
これによってウォリアは、身を護る最後の盾を失うことになる。

もうひとつは、バイオリック社がこれまで積み上げた研究データの完全な削除。
これはつまり、バイオリック社の崩壊を意味している。




「じ、じゃあこっちは…..」

「いや。君達が賭けるものは既に決まっておる。…………君だ」

「は? 俺?」

「君の肉体ごと、ラファエルの胃に消えて頂く。
勝負中は君はラファエルの胃の中で過ごし、バビロンが勝てば吐き出され、敗れれば消化される」


ウォリアは血管の浮き出た指をパチンと鳴らし、ラファエルを自分の隣に呼び寄せた。
その白いお腹に膨らみは跡形もなく、ブースがまだ悶えているような気配も無かった。


「ラファエルには竜液を分泌できるよう遺伝子に組み込んである。
だから、消化にはあまり時間を取らないのだよ。
そう….君が白骨になるのに10秒とかかるまい」


ラファエルの胃袋の中で悶絶している自分を想像する。
どういう訳か、無理に勝たなくてもいいや…..といった考えが脳裏をよぎる。
しかし今回だけは、そんな煩悩を捨てていかなければならない。
最も、勝負をするのはバビロンなのだが。



「文句は無かろう? こちらが竜と会社の命を賭けているのに対し、君はその命だけ。
明らかに君達の方が有利だ。本来ならば条件は対等でなければならんが、ここは君に敬意を表して引き下がろう」

「それはどうも…..」


ロンギヌスは腸が煮えくり返る思いで、心の中で卑怯という言葉を繰り返していた。

内心、この竜と会長との間には強い絆でもあるのかと思っていた。
だがもしそうなら、こうも簡単にラファエルの命を賭けたり出来ない。
つまりこの会長・ウォリアは、人工竜を保身のための盾としか思っていない。
その事を考えると、形容しがたい腹立たしさが込み上げてきた。



「さて….君の身柄は人質として拘束させて頂こう。ラファエル?」

「分かりました」


ラファエルがこっちを意識して近づくと、ドキンと胸が高鳴るのを感じた。
こんな事態になってもフェチの血が騒ぐとは、我ながら流石に恥ずかしい。

しかし十秒と経たないうちに、そんな羞恥を気にする余裕はなくなった。
ラファエルの指先が骨盤の上に食いこみ、身体はブースと同じように高く持ち上げられた。
ピカピカに磨き上げられたシャンデリアを横目に見ながら、ロンギヌスは足先が温かい肉に沈み、靴下が徐々に湿っていくのを感じた。


ゴクッ・・・アグッ・・アグッ・・・


雪景色をそのまま竜にしたような美しい身体。
その体内への入り口のひとつに身を委ね、唾液の洗礼を受けながらじわじわと降下していく。
足先がスブッと生々しい音を奏でた。多分、喉肉を押し開いて食道に入ったのだろう。



「うあッ…...ぃ…..」

ついに視界は閉塞感に満ちた口内だけになり、鼻には予想どおりの芳香が飛び込んできた。
濡れた舌先がペトリと額に押し付けられ、次第に顔さえもが唾液に侵されていく。
気のせいか否か、自分の膝小僧がブニュッと喉肉に沈んだ気がした。
もちろん、気のせいで終わる筈もない。










・・・・ゴキュッ・・!!



バビロンは瞬きもせずに凝視していた。ロンギヌスが別の人工竜に呑み込まれる様を。
遅いペースで下っていく膨らみを見ると、楽な姿勢を保とうと身を捩らせているのが分かる。
「とっぷん」という噴門が閉じる音を合図に、バビロンはラファエルから目を外してソファーについた。



「大富豪……か….」


追加ルールや様々な戦略も知っている。
が、プレイするのは初の経験だった。しかも主人の命を賭けた高レートな闘い・・・
テーブルの上に置かれたトランプの山を、バビロンは引き寄せて手早くシャッフルした。



「さぁ、ラファエルも席に座りたまえ。早速始めようではないか」






<2011/11/30 23:23 ロンギヌス>消しゴム
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