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バベルの塔 − 旧・小説投稿所A

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バベルの塔
− 裏切りと制裁 −
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「だからこれやるから….み、見逃してくれって言ってんだろ!! 聴こえないのか!!?」

「ええ….何も」


ラティオスは男の差しだした札束をはたき落とし、細い腕を彼の首にからめた。
大蛇のようにきつく締め上げ、男が意識を失うまで筋一本動かさない。



・・・・ドサッ・・!!

「…ふぅ…..いったい何人いるんでしょうか、幹部って」

「ハハ、知らねぇっつの」


隣ではゼクロムが電流をバチバチ唸らせながら笑っていた。
全身から青い光を放ち、やけに多勢な幹部を感電させて倒していく。
ここに入って十分もしない間に、部屋は気絶した人間がゴロゴロしていた。



「マスター達…..大丈夫でしょうかね….」

「おいおい…あのバビロンっていう竜、本当に信用できるのか?」

「根っこから良い人とは思えませんよ。ただ……」
















「….自分が誓った望みは必ず実現する。そのためになら身も心も悪魔に差し出すさ。
….そう言ってましたよ

「へぇ…..じゃあそれを信じるしかないな」







================







恨み憎しみの終着駅。理性と感情との激突は、呆気ないほど早く決着がついた。
ブースは命綱のメタルメモリを粉々に破壊され、バビロンの腹を前に跪いていた。
自慢のスーツは見るも無残に引き裂かれ、繊維がプラプラと肩から垂れている。


「ば…馬鹿な…..試作機ごときがどうしてこんな強力なウィルスをぉ…!!!!」

「………グァ?」


ウィルスは爆発的な戦闘力や、捕食欲の引き換えとして、バビロンから会話能力を奪っていた。
従って何も喋ることはない。
ブースを単に弱った獲物とみなし、頭から咥え込もうとした。
涎がベッチョリと磨かれた床に滴る。


「ぅ….や、やめろ!!」


このままでは命乞いすら叶わないので、ブースは苦渋の策に出た。
自分の胸に輝くワクチンの星をもぎ取り、迫ってくるバビロンの額に貼ったのだ。
いくら数億円の価値とはいえ、誰だって自分の命の方が可愛いに決まっている。








・・・・・・・






「………………うっ….私は……」


バビロンは自我を取り戻すと、キョロキョロと首を振り回した。
そして自分の足下に、宿敵が横たわっているのを発見する。
「食べてください」と言うような無防備なブースの姿に、思わず舌を舐め啜った。


「フフ….何故そうなったかはどうでもいい…...頂きます」

「ま、待てっ…話を聞いてくれ! 頼む!」


ブースの顔に僅かながら失望の色が見えるのも、ロンギヌスは無理はないと思った。
高価なワクチンを与えたのに、結局食われることに変わりはないなんて。

何度も何度も舌を見せつけながら、バビロンは不気味に微笑みながら顎を近づける。
その時だった・・・・




「まあ待ちなされ….…」


身の毛がよだつような嗄れ声だった。
コツコツ、ノシノシといった足音が廊下に響き渡る。
まるでそこの空間を割って出てきたように、老人はいた。
今にも折れそうな細い杖をつき、傍らには純白の竜を従えている。


「…いやはや何とも珍しい。
何しろチャンピオンが私服で乗り込んでくるなど、初めての事態ですからの…」

「……だ、誰だよお前…」

「おお…挨拶が遅れてしもうた、申し訳ない。
儂はバイオリック社の株主、エムズ=ウォリアという者」

「か、株主……!!?」


ロンギヌスはそう聴いた瞬間から、ウォリアから風格やオーラが漂っているように思えた。
ウォリアは床に這いつくばっているブースに近づくと、顔面から笑顔をサッと消した。



「さて…ブース、分かっているであろう?」

「ひ…!!」

「我が社の規定….社に一億を超える損害を与えた社員に対しては、制裁を加えると….」


ひとつ数億円という星を、保身のためにバビロンに渡したブース。
それが暗に意味しているのは、彼の忠誠心の低さだった。


「し、しかし会長…!!」

「ふ…己の油断が招いた結果ではないか。
貴様がウィルスを侮っていなければ、メモリ一本で勝負に行けるはずがないのじゃ」

「か、会長ぉ…..どうか….あの….!!」

「万死に値する。…ラファエル?」

「はい」


ラファエルと呼ばれた竜が前に進み出る。
バビロンと体型は似ているが、肩にはロゴではなく『0』という刺青が青く光っていた。
見たところ、ウォリアの側近や秘書といった立ち位置だろう。

雄らしい肉付きのいい腕を伸ばし、あからさまに怯えるブースを抱き上げた。


「……執行します」

「あ…はッ…..やめろ….助けてくれぇぇ…!!!!」


ラファエルはブースの脇に手を差し込み、天井近くまで持ち上げる。
人生最後の「たかいたかい」を受けるブースの顔には、もう一滴の余裕すら無かった。
渾身の抵抗もラファエルからすれば、赤子の手を捻るようなもの。


ぐぱぁ…….

「や….や、めろ…….おい…」

マシュマロのように白く幼い表情の上に、口内のピンクが顔を覗かせた。
笑顔でも怒りの表情でもない口元からは、ドラゴン特有の立派な唾液が誇らしげに落ちてくる。
ラファエルはスッと目を細め、悶絶する足をパックリと咥えた。


グプッ….ぬちゅっ….

「ひ…ぅああああッ!!!!」


足先がぶよぶよした喉肉に捻じ込まれ、粘液質な音を立てたながら呑み込まれていく。

ラファエルのささやかな配慮なのか、牙はいっさい使う気配は無い。
しかしどちらにせよ落ちる場所は同じ。単にルートが異なるだけだ。


グプゥ…..ゴックン。

まるで喰われるのが当然のように、ブースはあっさりと呑み下された。
喉元に一瞬だけ巨大な膨らみが生まれ、ゆっくり胃袋を目ざして降下していった。

そのあまりに順調な捕食劇に、ロンギヌスはぽかんと口を開けた。
いい意味でも悪い意味でも、あのラファエルという竜、人を喰らい慣れているに違いない。




「…..ラファエル、あとは任せる」

「了解です」


見かけどおりの美しい透き通った声だが、ロンギヌスとバビロンは身構えた。
様々な修羅場を抜けてくるうちに、「任せる」=「殺れ」という方程式が成り立っていたのだ。
しかしラファエルはこちらを向くと、右手を胸に添えて一礼した。



「お恥ずかしいところをお見せして、大変申し訳ごさいませんでした。
会長が御二方にお話があるそうなので….よろしければ紅茶でもご一緒願えますか?
VIPルームにご案内させていただきますので」

「・・・・はい?」
「…これも策略か………」


耳を疑った。バリバリの敵である自分達を、VIPルームに招待するなどどういう訳だ?

と、一度は疑心暗鬼になったものの、ずっと頭を下げられているせいか、次第に警戒の波が引いていくような気がした。








「バビロン…..行こう」

「なっ、何を言っ…」

「大丈夫…..こいつ、嘘はついてない」


たいした第六感ではない。
しかしそれでも、ラファエルの清純な瞳には感服させられたのだ。
話ぐらいは聞いてやろうと、ロンギヌスは前に進み出た。
バビロンも取り残される訳にはいかないので、悪態をつきながら彼の背に従う。





「どうぞ、此方になります」


ラファエルは再び微笑むと、純白の肩を翻して歩いていった。
断末魔が微かに漏れてくる・・ぷっくりとしたお腹を揺らしながら。











最新型人工竜:ラファエル
別名『天使』

DETA:バビロンシリーズの改良型。ウォリアの側近。

BODY:純白の西洋竜で、肩には青文字で「0」と描かれている。

SKILLS:演算能力は試験型バビロンの三倍。
知能増殖システムを搭載しているため、時代遅れになることがない。

最強の消化液、『竜液』も分泌できる。


<2011/11/26 15:57 ロンギヌス>
消しゴム
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