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〜サンダースの回想〜


森に入って 少し奥に進んだところで、
いきなり 全員の身体が まるで凍らされたようにピクリとも動かなくなった
冷たくも熱くもなんともないけど、とにかく体全体が硬直している…

しばらくすると、奥の方から声が聞こえてきたんだ…
気が鬱蒼と生い茂ったあの森は 昼でも3メートル先は真っ暗
姿は全く見えなかった

『…クク……
　なんだ？ うまそうなチビらが… 二十…三匹も…
　…何をしにここへ来たのだ？』

言葉だけでも 威圧感のある相手に
リーダーのブースターは 声を張り上げ 威嚇するように答えた

「賞金稼ぎだ！
　この森に 賞金首の組織があるという話が耳に入ってここに来たんだ！
　お前こそ誰なんだ！ 姿を見せろ！」

『…なるほど…、そういうことなら仕方がないな…
　……気の毒なことに オレはその組織の一員だ…
　悪いが、お前らが敵だというのなら 生かして帰すわけにはいかんな…
　…まぁ、入団希望というのなら お前らを助けてやれるが…？
　どうだ？ オレたちの組織に入って 命を助けてもらおうというヤツはいるのか？』

その言葉に激怒したブースターは
今にも 火炎放射を発射しそうなほどにまた叫ぶ

「ふざけるなぁ!!
　俺たちが お前らなんかに仲間入りするわけないだろ!!
　だろ!? みんな!!」

メンバーたちは 動かない頭のかわりに 瞳でうなずく
僕を含め、全員がうなずいた

『…そうか、それは残念だな…
　さて、腹も減ったことだ…、一人ずつこっちへ来てもらおうか…
　どうなるかは 想像に任せるがな…』

「…!?
　み、みんな！ 絶対に動くな！
　まず 全員攻撃態勢で構えｒ……」

ブースターが指示を出していた途中、
一匹のメンバー、リーフィアが おもむろに前へと歩き出す…
それを見て驚いたのは リーダーといわず、本人も含めてこの場にいる全員だ
慌ててブースターが 止めようと声を上げる

「…オ、オイ！ どこに行く！
　待て！ 止まるんだ！」

「…リ、リーダー、体が勝手に 前に進むんです…！
　た、助けてください！」

リーフィアは 言葉とは裏腹に、ためらいなく歩く
まるで 吸い込まれているように、声の方へと引き寄せられていく…

「…助けろと言われても……
　か、体が動かん……くそぉ…！」

「リーダー、早く止めてくださいよぉ！
　…ひぐっ……い、嫌だ……うぐっ…」

絶頂の恐怖に押しつぶされるリーフィアを
僕らは ただ見ていることしかできなかった
ついに彼の姿は 暗闇へと消え、助けを呼ぶ声だけが 生々しく聞こえる…

と、その時…

「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」

耳をつんざく悲鳴が途中で途切れたかと思うと、

“グチュッ……グチュッ………”

という ねばついた水音のような音が 何度も響き、
全員の脳裏に 同じ恐ろしいことが連想させられた

“……ゴクリ………”

絶対に耳には入ってほしくなかった 決定的な音…
一番勢いがあったと言ってもいいブースターでさえ 黙り込んでしまった
リーフィアがどうなったかがわからない者は この場にはいないだろう…

犠牲者が出てからのみんなに、「冷静」の文字は もうどこにもなかった

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