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【保】アイが欲しい − 旧・小説投稿所A

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【保】アイが欲しい

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リザードンの かみくだく こうげき!

ピカチュウの身体を覆い隠すほどの大きな顎が振り下ろされる。
強靭なそれは、彼女の体力を一遍に失わせるほど。
鈍い牙と牙の間に挟まれながら、薄れゆく意識。

それでも、愛するトレーナーの締めてくれたハチマキの事を思い出して
ピカチュウはなんとか意識をとどめていた。

リザードンは彼女を解放する気配もなく、
小さな生き物を顎に収めたままゆっくりと上を向く。

ここから先は、人の知らない、彼らの会話。
______

「だれが……あんたなんかに……!」

ピカチュウは気力を振り絞って暴れようとする。
大型のポケモンの顎の力は彼女にとってすさまじく、
ましてや気を失いかけた状態で抵抗できるものではない。

くさくて暑い、口の中。
胸から腹にかけて感じる、ぬるぬるした感触。

「おぉ、勇ましい事。こわいこわい。
 でもなぁ、女の子がひとりで来るなんて、いけないねえ」
「馬鹿にしてるの!?さっさと降ろしなさい!」

ピカチュウはまっさかさまになったまま、
顔を真っ赤にして毒づいた。
女の子扱いされる事が、何より嫌いだった。

バトルではいつもいつも、すぐに引っ込められて。
自分のちからは雄ポケモンにだって負けない事を、証明したかった。
主人を見返してやりたい。もっと彼の役に立ちたい。
それが彼女が独りで戦いを挑んだ理由。

リザードンの方は、そんな彼女の足掻く様を楽しんでいた。
その強大な力で、今まで数多くのポケモンを潰してきた。
人に使役される事もなく、山でトレーナーを狩る毎日。
彼はいつしか人に恐れられるようになった。

「あんたが、あんたが私の……!!」

涙を浮かべながらリザードンの下顎を叩く。
おおきな、おおきなあごだった。

「誰だったかねえ……?そんなに大事な、奴だったのかな?
 ま、おまえもニンゲンに使われてるようじゃ、まだまだって事」

顎の外側に感じる心地よい刺激に、彼はにやりと笑うと、
彼女を収めたままの顎を、一度大きく開いた。
至福だった。相手から大切なものを奪う快感。
最高の味付けに、唾液が止まらなかった。

そうして、くちをとじた。
ごくり。

「さよならさん」

こういうときはいつも、涙も止まらなかった。
顔を体液でぐしょぐしょにしながら、
満腹になった身体を見つめていた。



<2011/07/12 22:07 くじら>消しゴム
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