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【保】アイが欲しい − 旧・小説投稿所A

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【保】アイが欲しい

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寒くて冷たい。
彼女が気付いたのは、そんな空間の中だった。
自分は死んだのだろうか。身体の感覚も、ないみたいだった。
それでも彼女はうっすらと笑いを浮かべていた。

「気付いた?」

そんな彼女を一気に現実に引き戻す音。
顔をひきつらせて、自分の腰のあたりを触る。
ぬめりの強い液体が、分厚く絡みついている。
それでも、手足は幾ら暴れてみても空を切って、
なにより、寒かった。

「……どういうつもり」

吐き出された、という事が分かったのはすぐだった。
だんだんと戻ってくる感覚。重力。
地面の冷たいのをみると、まだ夜なんだろうか。
ぼやけた視界がはっきりとしてきた。
目の前には、あの、リザードンが座っていた。

「……やっぱり、俺のものにはならないんだな」

軽くため息をつくと、何かを知ったような眼差しで少し遠くを見つめる。
アイはその様子を横になったまま見ると、地面に視線を戻す。

「あんたなんかのものになるわけ、ないでしょうが」

さっきまで、一緒になっていた粘膜の感触が思い出されて、
アイはぶるっと身を震わせた。寒かったからかもしれない。
でも、まだ身体に染みついている粘液がぐちょりと音をたてる度に、
何かもぞもぞした感覚が首をもたげた。

「わかってる。だから、吐き出したんだ。もう、帰りな」

リザードンはそう促すと、自分は暗い夜の森に消えようとする。
アイはそれを見ながら、なんだか申し訳ないような気分だった。

「待って」

リザードンがビクリと歩みを止める。
それでも、声を出した本人が一番驚いていた。
自分を食べた相手に情けをかける義理なんて、どこにもなかった。

「あんた……さみしいんでしょう。
 たまに来て……話し相手ぐらいにはなってやるから…さ」

言葉が湧水みたいに出てきた。
アイは自分でもよくわからない風をしながら、
上半身を持ち上げて、ぺたりと地べたに座りなおした。

振り向いたリザードンは、
目を白黒させながら、彼女と自分のどこか中間を見つめている。
どぎまぎしながら、必死で言葉を紡いでいく。

「だ、そんな、俺は、お前を、食っちまったんだぞ?」

「当たり前でしょ、あんなくさくて、暑くて、狭くて、暗くて、
 ねっばねばで……気持ちの悪い所に、二度と入れられたくないわよ!」

アイは自分で言っていて恥ずかしいぐらいに、
体内の感覚を思い出しながら罵倒した。

「……でも、まあ、ああいうのも……わるくない……っていうか」

そっぽを向きながら続ける。
頬だけでなく、顔が真っ赤になっていた。
何を言っているんだ自分。

「へえ、そりゃ、はあ。まあ……じゃあ、またな」

彼は拍子抜けしたような顔をしながらそっけない返事をすると、
翼を広げ、東が白み始めた夜空へと飛んでいった。
砂埃が舞う中、アイは何かいいものを見つけた時のような顔で、
それをずっと見つめていた。

おしまい。



短い分量なのにいつもの調子以外にちょっといろいろヒネりすぎたのでいろいろ心配です(・ω・)イロイロ
何でもご意見いただければ幸いです。
<2011/07/12 22:08 くじら>
消しゴム
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